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また、つまらぬものを斬ってしまった……で、よかったっけ? ~ 女の子達による『Freelife Frontier』 攻略記  作者: 一色 遥
第五章『サヨウナラが言えない』

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能あるゴリラはテレパシー

前回のあらすじ

・二つ目のエリアは崖

・このゴリラあたまよさそう

「何を越えて……」


「確かゴリラを一匹追い抜いたよねー」


「それはたぶん関係ないにゃ。ただの巻き込まれゴリラにゃ」


「oh……」


 崖に背を向けて、虚空に手を合わせる。

 ごめんね、名も知らぬゴリラ。

 驚かすつもりはなかったんだよー。


「せめて安らかに」


「……とりあえず落ちていったゴリラのことは置いといて、にゃ。僧ゴリに集中しようぜい」


「僧ゴリて」


「修行僧ゴリラとか呼びにくいし、ぶっちゃけ正式名称も分からんから、僧ゴリで十分にゃ」


 ゴリラの扱いがひどい。


「それと僧ゴリの問いに関しては、ちょーっと気になることがあるんだぜー」


「そうなの?」


「うむ。ただ、全然関係ないって言われる可能性もあるし、その場合はもう一回“ふりだしに戻る”だにゃー」


「もはや、すごろくみたいね」


 この数字を越える目がでないと、ふりだしに戻るぜ! みたいな。

 あがり一歩手前でそのマスがくると、だいたいケートがキレてるけど。


「んじゃ、そんなわけで……セツナよろしく!」


「はいはい」


 さも当然のようにおんぶ状態に移行したケートに呆れつつ、私は『アースウォール』カタパルトで空を舞った。

 絶対この越え方って、製作側の予定外だよねー。


□□


「ぐへっ」


「っと……」


 ポーン、ベチャと吐き出されたケートを横目に、私は二本の足で華麗に着地。

 うん、10.0はかたいねー。


「てか、ケートなんなの、あの答え。僧ゴリが無言のまま強制退去してきたじゃん」


「いやー、ボケ殺しスキルが高いぜー。ボケたつもりはないんだけどもにゃー」


「まあ、どうみても冗談は通じなさそうな見た目だと思う」


「存在は冗談みたいな感じなのににゃー」


 それはそう。


「ま、でも一応、“物理的に名前のあるもの”じゃないってことは確定だにゃー。あの場所までに越えてきたものを全部羅列してみたけど、まったく反応がなかったわけだし」


「だねー。前の島のボスをあげても無反応だったわけだし」


「となるとやっぱり、私らの気持ちだとか技術的な力だとか……そういった部分の話になりそうだにゃー。要はすぴりちゅあるな話」


「まあ、僧ゴリだし、スピリチュアルな修行僧なら全然違和感はないかなー」


 スピリチュアルなゴリラは違和感あるけど。

 修行僧なゴリラも違和感があるけど。

 ゴリラであることを除けば、まあうん。


「で、ケートはもう答えが分かってるの?」


「んー、まあ八割くらいかにゃー? たーだこれ、問いに対する答えとしては、適してないんだよにゃー」


「そうなの?」


「“何を越えてきたか”ってことだけど、スピリチュアルな感じだと、まだ越えてないんだよにゃー。道半ばっていうか、五里霧中っていうか」


 五里霧中って、迷いまくりじゃん。


「ただ、“私がここにいる理由”ってのは、そういうことなんだぜー。迷ったり、抗ったり……そうしてずっと何かと戦ってここに辿り着いてて。まだ明確になにかを越えたって訳じゃないし、もしかするとまだなにも掴めてないのかもしれない。それでも、巡り巡った今がここにいる私なんだぜー」


「……ここにいる私、かー。難しいけど、たしかにそうかもねー」


 始まりは軽い気持ちで、でも楽しくて。

 ちょっとした苛立ちと悔しさを与えられて、後ろだと思っていたモノが、実は前にあって。

 だからこそ、私は今こうしてここにいる。

 ここに居続けてる。


「悔しいけど、まだやめられそうにないかなー。ほんと、ゲームに関してはすごいんだから」


「にひひ、そう簡単には追い付かせないぜー?」


「はいはい。すぐに追い抜いてあげるから」


 にひにひ笑うケートに苦笑しつつ、その頭にぺんっと手刀を落とす。

 軽く届く距離にいるライバルに、私は心の中だけで“ありがとう”と呟いてから、「さて」と話を先に進めた。


「それじゃそろそろ行こっか」


「ういー。三度目の正直ってやつだぜー」


「二度あることは三度あるともいうよねー」


「三つ子の魂、百までにゃ!」


 それは全然違う。


 とかなんとか、そんなワケわからないケートを背負って、私は三度目の『アースウォール』カタパルトで、宙へと発射されたのだった。

 うん、何回もやってればさすがに慣れるねー。


□□


 side.カリン


 望遠鏡『彼方』はちゃんと使えたらしく、その結果、海の遥か先に巨大なタコがいるという情報を手にいれることができた。

 きちんと船室奥にある、私の作業室まで伝えに来てくれたのはとても助かった。

 タコ……海の賢者とも言われる軟体動物にして、喰われるか忌み嫌われるかのどちらかという扱いを受ける不思議生物。

 ただ、ボスと言えど、素材としてはあまり期待できないだろう。


「そうなんですか?」


「ん」


 イカと違い、堅い部分があまりなく、武器防具として転用するのは難しそう。

 ただ、皮膚がゴムのように柔らかく、衝撃を吸収する素材として使うなら、部分的には使えそう?

 あとは、水中用装備とか。


「私としても、タコ料理はたくさんありますけど、お薬として使うのは難しそうです。墨が取れるなら、染色液としての流用は可能かもですけど……」


「難しい?」


「ですね。ボスとなると素材の入手も限られますので、一点モノ以外にはなかなか」


「ん」


 まさにその通り。

 ケート達がトップ攻略組な関係もあって、ボス素材がよく手に入るとはいえ……本来、ボス素材というのはとてもレアなものだ。

 それを消耗品の作成に使うとなると、かなり気が引けてしまうはず。

 ミトも段々と、生産プレイヤーらしくなってきたみたいだ。


「でも、触手だけでもかなりの大きさらしいですし、あのタコが第三層のゲートを守ってるんでしょうか?」


「分からない。可能性」


「可能性はある、ですか。その場合は私達も戦うんですよね……」


「ん」


 船でしか戦えない敵なら、私達も一緒に行くことになるはず。

 そうなると、確実に戦いに巻き込まれるだろう。

 だからこその――


「銃」


「ですね」


 細かく言わなくても、ミトは理解してくれて……叩き台として作った図面を机へと広げてくれる。

 猟銃タイプ、散弾銃タイプ、小型銃タイプの三タイプ。

 もしタコと戦うことになるとすれば、猟銃タイプが必要になるはず。


「カリンさん」


「ん?」


「良いものを作りましょうね! 私も手伝いますから」


「……ん」


 不思議と浮き出た笑みを隠すように、私は少し俯きがちに頷く。

 ……なんとなく、良いものができそうな気がする。

 そんな風に思った。

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