24話「宇宙から見れば売り物だらけ」
ブラウニーの落とし穴部隊が増えたことで、地面に埋まったトレントを掘り出す仕事も進み始めた。外にも仕事があると気分転換になるらしい。
ミノタウロスたちは迷宮を作り続けているし、アルラウネはエアプランツを空中に浮かばせて、水撒きをしている。ドルイド爺さんはようやく同胞がやってきて設備の説明をしているところだ。
ようやくまともに会話ができるようになったキャスに自動石臼作りを頼む。
「いや、水力で石臼を作るんでしょ? それはいいんだけど……、魔物も働いてなかった?」
「キャス、ここは魔物農場だぞ。当たり前じゃないか」
「じゃあ、あの魔物たちも私が毒蛙討伐に行っている間に育てたってわけ?」
「そう。いろいろ契約をすれば働いてくれるみたいだ。人間の街じゃ魔物使いが似たようなことをやってるはずだろ?」
「いや、あれほど多くの魔物を従えられる魔物使いはいないよ」
「そうか。まぁ、でもちゃんと魔石があるからちゃんと働いてくれているよ。キャスにも働き分の報酬は渡しているだろ?」
「確かに。まるで魔道具屋の仕事じゃないけどね」
「そう言えば、スキル屋みたいなものって街にないかな? 単純なスキルを売り買いできるって魔物たちは言うんだけど」
「そんなものがあったら誰でも鑑定士になれちゃうんじゃない?」
ブラウニーの一人は、鉱物鑑定士になっていた。スキルの発生要因を教えているだけなのかもしれない。
「知識を教えることによってスキルを発生させているのかな」
「それなら教会でも似たようなことはやっているよ。経験値鑑定とか魔力鑑定とかね」
「魔力鑑定があれば便利じゃない?」
「どうして?」
「いや、だって魔物の位置がわかれば、冒険者として……。そんな事考えないのか」
「魔物は被害があって、冒険者ギルドに依頼されないと報酬が出ないじゃない?」
誰も金にならない仕事はやらないのか。でも魔石は手に入るし、もしかしたら埋まってる魔石も見つけられるかもしれない。
「そうか。俺の役目は観測と回復設計か」
「何を言ってるの?」
「いや、ごめん。独り言。宇宙に一人でいると寂しすぎて独り言ばかり言うようになるから気にしないでくれ。言語と思考力を忘れないようにするためだからさ」
「そうなの? 宇宙って一人になるの?」
「なるよ。行ってみるとわかる。周りになんにもないからね」
恒星の光を求めてエネルギーの補充に向かうだけだ。この惑星だと石炭石油もあるだろうし、魔石があるはずだ。
その魔石を使って魔物を育成して、加工し、販売がだいたいの商売の基本だろう。育成はミノタウロスやアルラウネたちがやってくれている。加工はキャスが自動石臼を作ってくれれば出来るだろう。空きビンや樽を買ってきて、梱包して製品化も可能だ。検品はドルイドがゴミを飛ばしてくれる。
後は、出てきたゴミをコンポストに入れて栄養にしていけばいい。
現状、魔石はマンドラゴラの魔石に頼っているが、季節によって成長速度も変わるかもしれない。そう思ったら、魔石獲得ルートをいくつか作っておくのが賢明だ。
「キャス、悪いんだけど、自動石臼は一人でできるか。トレントの丸太があるから、それを加工してから、コカトリスの巣の前に置いておくと、勝手に石化してくれるから」
「え!? そんな方法で石臼を作ってたの!? 高価すぎない? でも、まぁ、わかった!」
俺は自動石臼をキャスに任せて、ドローンの充電は完了していた。重力が若干重くても、このドローンは飛ぶ。
「魔物農場を規定して、周辺の魔力探知を頼む」
「了解。魔石含有量でいいね?」
「それで」
15分後には周辺の地図と画像が出てきた。解析よりも飛ぶことの方が時間はかかる。たった15分とは言えすでに電力は空になっていた。電力消費は激しい。
分布を見ると魔物農場が最も魔石含有量は多いが、南側の川下にもかなり溜まっていることがわかった。
「つまり川で流れているってことだよね?」
「そうだな。花お化けを連れて行ってみれば?」
「そうするわ」
落とし穴に嵌まって光合成をしている花お化けを出して、川下へと向かう。途中街道に出たが、誰かがいるわけでもなく素通りできた。
森を抜けると唐突に河原に出た。このまま川下を辿っていくとトシュの材木屋などがある湖に出るが、カーブしているところに魔石が溜まっているらしい。
それがわかっているのかいないのか猪が水を飲んでいる。ただ、花お化けを見ると逃げ出した。
下着もウェアも速乾性のある布なのでジャブジャブ、小川を渡り岸辺の丸石の中から魔石を探した。魔石は他の石よりも柔らかく凹んだりしているが、ちょっと探しただけでも数十個は見つかった。
しかも、川原の魔石は凹んでいるだけでなく、癒着しているものもあり、魔石そのものの性質もわかってきた。
「要は魔力の集合体なんだとは思うんだけど、魔石同士で集まるんだろうね。砂利を取り込んでいるのもあるし、かなり流動性が高い素材だよな」
「性質も付け加えやすいということでもあるんじゃない。トレントの丸太で石臼を作れたみたいに」
AIは観測データを取っていた。
「加工もしやすいということだよな。瓶の中に詰めて魔法の練習とかするのかな」
「その発想はなかったな。つまり魔力を操作するということだろ? 大抵は魔石のランプみたいなものにするんじゃないのか」
「俺もこの惑星で生存しているくらいだから魔力はあるはずだ。形を変えられたりできたら、加工も進むんじゃないか」
「そうだな……。なんかいる!」
振り返ると湖の方から丸い水まんじゅうのようなものが近づいてきていた。
「ああ、スライムの生息域だったのか」
花お化けが蔓のムチで、スライムを割って核の魔石を取り出していた。マンドラゴラの魔石より大きい。花お化けは魔石よりもスライムの体液に根を張り水分を取り込んでいた。
「それ、いい保水剤になるかもしれないな。それ落とし穴に入れて、毒を作れると強いよな」
花お化けも可燃性の油や魔物を混乱させる媚薬などを作れたはずだ。香りが良ければ人が集まる場所なら売れそうだ。販路を広げる算段を付けている間にも、花お化けは続々と現れるスライムを倒し続けていた。
一人だったら逃げられなかったかも知れない。ただ、新しい魔石の回収場所は見つけた。川下も定期的に見に来ることにした。
一旦、魔物農場に戻り、空の樽を担いでスライムの体液をスコップで回収した。荒れ地や砂漠などでは役に立つだろう。売れるかどうかはわからないが、もし土のない場所で植物を育てるなら、いい素材になりそうだ。




