助け
生徒指導部の教員が、黄の襟を掴み何処かへ連れ去ろうとする。
[まって!黄くんを連れてかないで!]
なくあは精一杯の声で発言する。
[なら、皆様見ますか。
成虫になった人間の処刑を。]
処刑と言う単語を聞き、皆の顔が青く染まる。
なくあは、声になっていないが絶望の表情を浮かべている。
全員が恐る恐る指導室内の奥の壁に手を当てる。
すると突然壁が開き、巨大な台が出現する。
[処刑対象1年2組の希樹黄。]
教員の発言後、台の形は蚊取り線香の様な形に変化する。
黄は、台の上に立たされた。
抵抗する気配も見せず、静かに従っていた。
消えた壁はガラスとして再生する。
台の上に立つ黄は静かになくあを見つめている。
[黄、何か言い残したことがあるなら言え。]
教員の言葉の後、黄が口を開く。
[一つだけ。
なくあ聞いてほしい。
これは、嘘一つ無い。
俺は心の底からなくあが好きだった。
それだけは死んでも変わらない。
ありがとう…さようなら。]
密閉された部屋越し越しの言葉は少し聞こえにくい。
発言後、黄は口を閉じる。
[いやだ!言ったじゃん!勝手に逝くなって!
いつもいつも…言ったじゃん。
ずっと一緒って…!]
なくあが涙を流しながら、黄へ呼びかける。
[俺の分まで生きてくれ。]
小さく呟いた言葉は、ガラス越しじゃ届かない。
なくあの言葉だけが聞こえる中、唐突に処刑が始まる。
蚊取り線香風の土台の端が点火する。
火が黄の立つ中心まで迫っていく。
部屋は徐々に薄灰色の煙で包まれる。
黄は咳き込みながら、なくあとの生活を思い返した。
いつも、いつも頼ってばかりと後悔しか残らない人生だったと。
徐々に、黄は立てなくなる。
膝を突き、涙を流す。
[本当は…俺だってまだなくあといたかった。]
しかし、囁くような黄の声は誰の耳にも届かない。
室内は薄灰色の煙に完全に包まれた、外から黄の姿を視認することが出来なくなる。
ガラスはコンクリートの壁へと戻った。
戻ると同時に、校内放送が鳴り響く。
『お疲れ様でした。
自由時間を再度開始してください。
お疲れでしょうし、夕食は30分遅くします。』
生徒はほとんど自身の教室へ戻っていった。
るあ、依井奈、リリアも心を休めるため戻る事にした。
指導室を出てふと振り返ると、涙を流したまま動けずにいるなくあと、なくあの背をさするいなの姿だけが残っていた。
第一節 イレギュラーを最後まで読んでくださりありがとうございます。
次からは第二節へ変化いたします。




