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哀蛹乱の非行期  作者: 亡久むふ
第一章:第一節 イレギュラー

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助け

 生徒指導部の教員が、黄の襟を掴み何処かへ連れ去ろうとする。

[まって!黄くんを連れてかないで!]

なくあは精一杯の声で発言する。

[なら、皆様見ますか。

成虫になった人間の処刑を。]

処刑と言う単語を聞き、皆の顔が青く染まる。

なくあは、声になっていないが絶望の表情を浮かべている。

 全員が恐る恐る指導室内の奥の壁に手を当てる。

すると突然壁が開き、巨大な台が出現する。

[処刑対象1年2組の希樹黄。]

教員の発言後、台の形は蚊取り線香の様な形に変化する。

 黄は、台の上に立たされた。

抵抗する気配も見せず、静かに従っていた。

消えた壁はガラスとして再生する。

台の上に立つ黄は静かになくあを見つめている。

[黄、何か言い残したことがあるなら言え。]

教員の言葉の後、黄が口を開く。

[一つだけ。

なくあ聞いてほしい。

これは、嘘一つ無い。

俺は心の底からなくあが好きだった。

それだけは死んでも変わらない。

ありがとう…さようなら。]

密閉された部屋越し越しの言葉は少し聞こえにくい。

発言後、黄は口を閉じる。

[いやだ!言ったじゃん!勝手に逝くなって!

いつもいつも…言ったじゃん。

ずっと一緒って…!]

なくあが涙を流しながら、黄へ呼びかける。

[俺の分まで生きてくれ。]

小さく呟いた言葉は、ガラス越しじゃ届かない。

 なくあの言葉だけが聞こえる中、唐突に処刑が始まる。

蚊取り線香風の土台の端が点火する。

火が黄の立つ中心まで迫っていく。

部屋は徐々に薄灰色の煙で包まれる。

黄は咳き込みながら、なくあとの生活を思い返した。

いつも、いつも頼ってばかりと後悔しか残らない人生だったと。

徐々に、黄は立てなくなる。

膝を突き、涙を流す。

[本当は…俺だってまだなくあといたかった。]

しかし、囁くような黄の声は誰の耳にも届かない。

 室内は薄灰色の煙に完全に包まれた、外から黄の姿を視認することが出来なくなる。

ガラスはコンクリートの壁へと戻った。

戻ると同時に、校内放送が鳴り響く。

『お疲れ様でした。

自由時間を再度開始してください。

お疲れでしょうし、夕食は30分遅くします。』

 生徒はほとんど自身の教室へ戻っていった。

るあ、依井奈、リリアも心を休めるため戻る事にした。

指導室を出てふと振り返ると、涙を流したまま動けずにいるなくあと、なくあの背をさするいなの姿だけが残っていた。

第一節 イレギュラーを最後まで読んでくださりありがとうございます。

次からは第二節へ変化いたします。

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