役に立つかはやり方次第
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「俺ね、探索はできるんだよね」
ジグが得意げに語る。
ジグのガチャ魔法を知っているクラウスは、まだ疑わしげだ。
基本的に魔法は、何かを変化させて事象を起こすものだ。一方、探索は魔力を放出することで身体の感覚を拡げるだけで、変化するものがない。
ジグの説明を受けても、わかるようでわからないという顔で、クラウスは、気になったことを訊ねる。
「なら、何故普段から使わない?」
「え、疲れる。俺、体力ないからね」
「……」
ジグ……それは僕でもどうかと思うよ。
「ただ、魔力を使うことにはかわりないから、俺の魔力が相手に触れればバレちゃうんだよねえ」
「それは、役に立つ、のか……?」
「うーん、やり方次第? 視るだけなら、相手の魔力が届かないところでやればできると思うよ」
まあ見てて、とジグが焚き火に手を翳す。
ジグの探索を見るのは久しぶりだ。
一瞬、焚き火の火が大きくなったような気がしたが、僕にはそれ以外の変化はわからない。多分クラウスもルカも同じだと思う。魔力というのは、魔法つかい以外には見ることも感じることもできないからだ。
三人で黙ってジグを見ていると、急にジグの身体が後方に傾いた。クラウスが、慌てて彼を抱きとめる。
何が起きているのか分からないが、ジグの呼吸は穏やかだ。表情も柔らかく眠っているようにも見える。ただ、返事はない。
「ジグ殿?」
少しして、ジグの瞼がゆっくりと開いた。
「ありがとう。久しぶりにやったから加減を間違えた」
ジグはヘラヘラと笑い、体を起こす。
クラウスがジグを座らせると、横からルカが水を渡す。ジグはそれを一気に飲み干した。
「大丈夫か?」
「身体は何ともないよ。ちょっと眼を高くとばしすぎて、身体を支える方に意識を向けるのを忘れてただけ」
ジグの言葉に三人とも安堵する。
「何か得られたか?」
「うーん、どうかなあ」
「誰かに気づかれては?」
「それは大丈夫だと思うよ」
「そうか」
クラウスがジグをじっと見る。ジグは眉を下げて頭を横に振る。
「うーん、少し考えたい。明日でいいかな?」
「わかった」
「じゃあ、俺は寝るよ」
ジグが「水、ありがとうね」とお礼を言って立ち上がる。クラウスとルカは頷いて、ジグが馬車に戻るのを見送った。それに合わせて、僕も寝ることにした。ルカとクラウスは交替で見張りをするようだ。
リオンたちと出会った翌日、マカは村の仲間四人とともに川沿いを歩いていた。
「なんで上流なんだ?」
「お前、バカだな。アイツらの溜池より上になければ、水が取れないだろ」
「あ、そうか」
目的は、溜池だ。昨日の話を聞いたマカは、溜池が自然に発生するなら、他の場所に発見されてない溜池があるかもしれないと考えた。
「でも、本当にあるのかよ」
「さあな」
言い出したマカでさえ、信じきれていない。初めて経験する水不足で、村の大人たちはピリピリしていた。子どもながら、何か村の役に立ちたかった。
「他よりも草木が茂ってるところをとにかく探そう」
村を出て、一時間ほど歩いた。ここまで川沿いを上がってきたが、それらしい茂みはない。子どもの足といえど、それなりに遠くまで来た。
「もうじき村の端だぞ」
仲間の中に諦めの空気を感じ始めた頃、一人が一段大きい声を上げた。
「あ、あそこ、何か草が多くないか?」
指をさされた方を向くと、岩場に隠れて見えにくいが、他のところよりも草が茂っている。マカは勢いよく走り出した。
「あっ、マカ! おいてくなよ!」
マカの足は速い。あっという間に、仲間との距離が空く。
はやる気持ちを抑えながら茂みに近づく。背の高さほどある茂みに踏み込むと、足下が泥濘んだ。マカはそのまま足を滑らせて、尻餅をつく。
「は、はは……」
水だ、水が近くにある。泥だらけになったことを気にすることもなく、茂みをかき分ける。踏み込むたびにビチャ、ビチャ、と音がする。十歩ほど足を進めると急に視界が開けた。マカは目を見張る。
「池だ……」
水面は、大人が十人もいれば囲えるほどの大きさしかない。が、生い茂る草の広さはその何倍もある。探せばきっと、こんな池が幾つかありそうだ。
辺りには、獣の足跡もある。ここを水場にしているのだろう。
両手で水をすくう。マカが足を入れたことで少し濁っている。ここから見た限りでは深さはわからない。村にある畑の全てに使えるかはわからないが、助けにはなる。そうすれば、収穫をあきらめなくていい。
マカは思わず大声で笑いたくなったが、仲間の声で冷静になる。
「何だありゃ? 鳥の巣か?」
視線を上げると、離れたところに、枝という枝に巣が造られた二本の木が立っていた。木は、巣から落とされた排泄物で白く汚され、枯れ欠けていた。
見慣れない鳥が、巣の間を鳥が行き交っている。こちらを警戒しているのだろうか。マカたちも、鳥に気づかれないように小声になる。
「結構いるな」
「見たことない鳥だな。食えるかな?」
「あー残念、仕留めるものを持ってきてないわ。石だけでも投げてみるか?」
「やめとけ、数が多すぎる。纏まってこられたら、こっちも怪我するぞ」
今日の目的は池だ。マカは、余分なことに時間を使いたくなかった。
「違いねえ」
「それより、汲めるだけ水汲むぞ」
「なあ、全員で汲むより、二手に分かれようぜ」
マカが持ってきた水袋を拡げると、仲間の一人が妙な提案をした。
「なんで?」
「全員でここを離れてる間に、他の奴らに盗られてたらダメだろ」
「確かに。お前、頭いいな!」
「おう、もっと褒めていいぞ」
「誰が行く?」
「そりゃ、足の速いやつだろ」
仲間の視線がマカに集まる。マカは残りたい気持ちを抑えて頷いた。大人たちへの証拠のために、拡げた水袋に池の水を汲む。
「じゃあ、頼んだ」
「任せとけ」




