表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
受難の王子とガチャ魔法  作者: 間中未森


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/9

仕事の後は

 僕たちは一時間ほど歩いて、町の入口にあるギルドを訪れた。夕刻には少し早い時間のせいか、店内はそれほど混んでいない。

 受付にいたギルドの職員が、僕たちに気づいて駆け寄ってきた。


「リオン殿下とジグ様ですね。ただ今、貴賓室にご案内致します」

「調査員として来ているから、普通の対応でいいよ」

「いえ、そういうわけには……」

「大丈夫だから」


 苦笑いをしながら、丁寧に断る。

 僕が隣国から呪いを受けそうになったことは、この国の民なら誰でも知っている。けれど、呪いが変質して残っていることは知らない。知っているのは城に勤める者と魔法つかいだけだ。彼らには、他言できないように制約をかけている。

 だから、ギルド職員が僕のことを知っているわけではない。貴賓室への案内は王子への対応としては間違っていないけど、今回は王子として来てるわけじゃないからね。

 それに、僕は皆を騙しているような気持ちになり、こういう扱いは苦手だ。手早く終わらせてギルドを出るべく、僕は用件を伝える。


「―――そんなわけだから、しばらくは洞窟への一般人の立ち入りは、やめた方がいいかな」

「畏まりました。国王へのご報告はいかがされますか?」

「一応、ギルドからも報告してもらえると嬉しい」

「では、そのように手配いたします」


 僕が頷いて、話が終わったと判断したルカが後ろから出てくる。


「では、こちらの買取をお願いしていいでしょうか?」

「買い取り、ですか?」


 ギルド職員が不思議そうに僕を見る。僕は苦笑いをするしかない。


「それは、彼が個人的に手に入れたものだからね。調査とは別で考えてもらえると嬉しいな」

「……はあ、それなら」


 頭に浮かんだ疑問を飲み込んで職員が買取をしてくれた。やるべきことを終えて、僕たちはギルドを出る。その瞬間、


「腹減った」


 クラウスがあからさまに不機嫌になっている。

 溜息をついたルカが「……風呂の後と食事と、どちら……」と話すのに被せてクラウスが「食べる」と即答する。

 どうやら、クラウスは待てないらしい。ジグが「お風呂……」と悲しそうな顔をしているが、ルカはクラウスを優先したようだ。

 



「いらっしゃい!」


 近くの食堂に入ると、元気な女性の声がした。よく分からないので、お薦めを頼む。ジグは、出されたおしぼりで念入りに顔と手を拭き始めた。

 男四人なら肉だねと、テーブルいっぱいに肉料理を並べられた。焼いた物、煮込んだ物、揚げた物、それにほんの少しの野菜と果物。


「さあ、どんどん食べて!」

「おお、美味そうだ」

「ですね」


 クラウスとルカは、山盛りの肉に喜んでいる。体格のいいクラウスはともかく、どちらかといえば細身のルカは、見た目に反してよく食べる。どこにそんなに入るのか、いつも不思議に思う。


「俺、もうそんなに若くないから、もう少しあっさりした物が欲しいかも。あ、この果物の蜜煮、食べてもいい?」


 ジグがメニュー表を見ながら追加注文をしている。


「いただきま―す」


 僕も早速肉を頬張る。


「美味しい!」

「良かった! たくさん食べてね!」


 女性が、片目を瞑りながら親指を上に立てる。町の食堂は、王宮とは違って食卓の距離が近い。王宮ほどマナーを気にしなくていいのも気安くていい。


「ああ、でも本当に酒はいらないのかい?」

「俺、こう見えて酒に弱いのよ。ありがとねえ」


 ジグが申し訳なさそうに笑う。


「お気遣いありがとうございます。せっかくの美味しそうな料理をしっかり楽しみたいので、今日は遠慮しておきます」


 ルカが目を細めて爽やかに断りを入れる。その笑顔に、女性が少し目を見開いて頬を染めて「あら、そう? じゃあ、ごゆっくり」と挙動不審になりながらテーブルを離れていった。仕方ない、ルカは美人顔だからね。

 僕は未成年なので、酒は飲めない。他の国では、早くから慣れさせるところもあるようだが、僕の国では飲酒は成人してからと決まっている。

 ルカも僕同様に未成年なので飲めない。クラウスは二十二歳で成人済みだが、護衛騎士が酔っ払っていては職務に影響があるとかで飲まない。なんとも健全な食卓だ。だから、飲まない分ひたすら食べる。

 しばらく無言で食べ続けて、幾分腹が満たったところで、今日の出来事を振り返る。


「結局、あの洞窟って何だったんだろう」

「そうだねえ」


 ジグが、塩で焼いた肉と果物の蜜煮を一緒に食べながら相槌を打つ。その食べ方は、美味しいのか? 隣でクラウスも少し引いている。


「……罠があって、魔蛇がいたなら、できたてのダンジョンといったところだろう。あとはダンジョン管理課とギルドが何とかするさ」


 なるほど、ダンジョンか。そういえば最近読んだ冒険小説の中にダンジョンものがあったな。いわれてみれば確かに、あの洞窟はダンジョンに近い気がする。だとすれば、ボスがいるよな?


「魔蛇はボス?」

「リオン殿下、口に物を入れたまま喋らないでください」

「どうだろうねえ」

「どうでもいい」

「魔法で変えられた魔蛇って、どうなるんだろう?」

「「「さあ」」」


 ……三人ともあまり興味はないらしい。まあ、僕たちの役目は洞窟の調査であって、魔物の討伐ではないから仕方ない。

 どうして王子である僕がこんなことをしているかというと、呪いのせいでもある。

 僕にかけられている呪いは、いろいろ引き寄せる呪いである。良いことも悪いことも、面倒なことも、いろいろ引き寄せる。本当にいろいろ引き寄せる。いわゆる、トラブルメーカーである。

 そんな僕が少しでも役に立つ方法はないかということで、未開発地などの調査を任じられた。父上曰く「未開発地なら被害額は知れているから」らしい。分かってはいても、少し傷つく。


「じゃあ、調査はもう終わり? 明日は王都に向けて出発?」

「そうなるな」

「道中も含めると二ケ月ぶりの王都ですね」

「帰ったらちょうど建国式典だな」

「あー、人が多くなるう。なら、帰り道で食材とか蓄えていこうよ」


 ジグがあからさまに眉を下げている。


「ジグは人混み苦手だもんね」

「なんかね、酔っちゃうんだよねえ」


 そんな話をしていたら、店の奥が騒がしくなった。どうやら、冒険者同士で喧嘩が始まったらしい。


「どうせ報酬の取り分で揉めているんだろう、よくあることだ」


 クラウスが喧嘩を横目に肉を頬張る。クラウスは傭兵上がりの騎士だ。傭兵時代は、冒険者と一緒に仕事をすることもあったらしいから、揉め事の理由にも見当がつくのだろう。けれど、止める気はないらしい。

「できれば、外でやってほしいですね」


「派手になるようなら、店が憲兵を呼ぶだろ」

「若いなあ」

「ジグが年寄りくさい」

「だって、俺もう三十だからねえ」


 テーブルにあった料理は、既に食べ終えている。三人とも、僕の引き寄せる呪いを心配したのか、巻き込まれる前に食堂を出て宿に向かうことにした。外はすっかり暗くなっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ