表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/87

87. この先・・・。

「えっと。なんかごめんね?」


すっかり混乱した様子のリャナンにルトナーが不安気に謝る。


「いや。ルトナー様に謝っていただくことではないので。自分の理解力の無さに愕然としているだけです」


脱力したままリャナンが答えると


「今年はこれ以上、リャナンさんにこんな厄介な話を聞かせなくても良いように僕も頑張るからまたこうして遊びに来てください」


何故か低姿勢のルトナーにリャナンは冷静さと思考回路を取り戻した。


「今年はどんな一年になりますかね~?」


出されたお茶を口にしながら平穏な年であるようにとの願いも込めて言った。窓の外から光が差し込んできて少し眩しく自然と目も細くなる。


「みんなが平和に暮らせるように頑張るから」


再び決意のように言うルトナーに、


「ルトナー様は無理をしすぎないでくださいね」


「頑張る」を繰り返すルトナーにリャナンは心配になり、思わず忠告に似たものを言ってしまう。言ったあとで余計なことだったかとルトナーの方を伺うように見れば、ルトナーは満面の笑みで


「誰かに心配してもらえるって、ちょっと嬉しいよね」


等と言いリャナンは脱力してしまう。


「冗談ではなくてですね…。もう適宜止めて下さるローン様もいないんですよ?」


よくわからない喜ばれ方をしたリャナンが言えば、


「わかってる。本当はさ、ちょっと心細いんだ。これから一人で進むしかないことがね」


いつにない神妙な面持ちでいつものルトナーらしくないことを言うことにリャナンは慌てて、


「でもきっとローン様も見ていてくださいますよ。だからルトナー様もローン様の分までこの国のことを考えてください」


慌てすぎて何を言っているか自分でもわからなくなったが、きっとローンはどこかで見ているとヤケになってリャナンは叫ぶように言った。頑張るなと言ってみたり、二人分働けと言ったりする自分の矛盾にリャナンは自分でうんざりした。友人として無理はして欲しくないが、国王陛下には頑張ってもらいたいという完全に乖離した思考にリャナン自身がついていけていない。


「それは無理かな。僕はローンの思いの分まで背負えるほど優秀じゃないよ」

ルトナーの言い分にリャナンが驚くと


「でも自分の思いの分は働くから、リャナンさんも協力してください」


ルトナーがペコリと小さく頭を下げた。リャナンはその行動に驚きつつも


「私に出来ることがあるなら、私も私の思いの分だけ働きます」

しかしさしあたってリャナンができることといえば、花を作ることぐらいだとルトナーの思いに比べて小さい自分にがっかりするが、


「リャナンさんが卒業して、フランツェンになってくれるのを待ってます。」


ルトナーも安心したように微笑んだ。いつの間にか日が傾き、空を茜色に染めている。それを見てリャナンは、


「もう帰りますね。今日はありがとうございました。それに久しぶりにルトナー様と話せて良かったです」


言いながらリャナンが席を立つ。


「うん。こちらこそいつもありがとう。またね」


言いながらルトナーも立ち上がり、リャナンを見送る。

 

 リャナンは城を後にして、家路につきながら自分がフランツェンになってからのことを考えた。まさか国王陛下の友達などという位置に来るとは思っていなかった。と一番驚いたのはそこなのか、と自分にツッコミを入れながら、これから国を支えるルトナーのためになれるように自分も頑張ろうと気合を入れ直して家までの残りを走って帰った。リャナンもルトナーもまだまだやるべきことはたくさんある。それでもきっと大丈夫だとリャナンは思えた。


完結しました。長らくのお付き合いありがとうございました。

87(はな)の国の話ってことで終わりです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ