第1章 —— 新しい世界
IM - お待たせして申し訳ありません。気に入っていただけると嬉しいです。
午後の風が丘を優しく撫で、どこまでも青い空の下で黄金色の草を揺らしていた。谷全体に広がる太陽の光は、大地そのものを鎮めるかのように、優しく心地よい温もりで風景を包み込んでいた。
ロンドンで過ごした春とは大違いだ。あそこでは、緑地といえば公共の公園か、自宅で育てようとしていた植物くらいしかなかった。
丘の上からは、見渡す限り緑と黄金色の果てしない野原が広がっていた。花々が点在する小さな森、耕作地を縫うように続く道、そして奥には草木に覆われた巨大な山。この場所が、かつて俺が知っていた世界と同じものだとは到底思えなかった。
古い桜の木の陰で、俺は木の幹に背をもたれて座っていた。
「つまり……ここが俺のやって来た異世界ってわけか」と呟いた。
魔法で浮かぶ都市や、浮遊魔法を放つ鉱石みたいなものがあると思っていた。空を舞い、その威厳を見せつけるようなドラゴンもいない。遠くに凝縮された魔力で光り輝く魔法の城があるわけでもなかった。
……
あるのは、夕暮れの光を浴びた静かな谷だけ。それでも、この風景の何かが、俺の胸に奇妙な不安を抱かせた。おそらく、かつての生活に戻る道はないのだと知っているからだろう。
再び風が吹いた。
前世の記憶を持ったまま、五歳の子供の自分の手を見つめるというのは、かなり奇妙で奇抜な体験だ。
『この世界で生まれた時に与えられた名前はアーサー。死んで転生してから五年が経った』
『もし俺がアニメみたいな世界に転生したって知ったら、ジェイコブはどんな顔をするだろうな』 俺は笑みを浮かべた。『きっと大笑いするだろうな、はは……』
『……それにしても、あんな風に突然別れることになるなんて、思いもしなかったな……』 虚ろで沈んだ目をしながら、そう思った。
風で木々の枝が軋む音や、遠くの森の音に耳を傾けた。ここには車の排気ガスも、耳をつんざくような交通の騒音もない。その代わり、湿った土や野花が香る空気と、大自然が奏でる音があった。
俺は我に返り、気を散らさないように深呼吸をした。
『よし、もう一度やってみよう』 と思い、目を閉じてあぐらをかいた。
何ヶ月もの間、父の仲間たちが村に帰ってくるたびに話していた、あの有名な「マナ・コア」を見つけようとしていた。最初はただのファンタジーの神話だと思っていたが……ここは異世界なのだと思い出した。ここでは不可能なことも可能になるんだろ?
でも、ルールや順序が分からないから、まずは呼吸に集中しよう。ダメなら少しずつ試してみるさ……
俺の意識は別の場所へと移った。そこは暗く空っぽの空間で、星空があり……水に覆われた緑色の石の床があった。それはまるで、目の前のすべてを映し出す完璧な鏡のようだった。
『ここはどこだ?』 この広大な場所に何かないかと、四方八方を見渡した。
『かなり広いな……あれは何だ?』 遠くにいる、ぼんやりとした何かの存在をじっと見つめた。
その存在は急速に近づいてきて、一秒ごとにどんどん大きくなっていった。
『くそっ、どうすればいい?』 きびすを返して走ろうとしたが……
見知らぬ場所で、他に逃げ場などなかった。助けになるような建造物も何もない。
奴との距離を測るために振り返ると、すでに目の前で俺の目をじっと見つめていた。俺と同じくらいの大きさだったが、縦に長く、一秒ごとに緑色の煙を吐き出していた。
『なぜ攻撃してこないんだ?』 奴を見ていたが、その存在に対して恐怖も憎悪も感じなかった。
目の前にいるその存在は、何かを示そうとするかのように体の一部を伸ばしてきた。どこへ向かっているのかは分からなかったが、どうやら俺の……
胸の中心で、温かく振動する小さな鼓動が鳴った。まるで第二の心臓が目覚め、少しずつ、しかし急速に力強く鼓動し始めたかのようだった。
『痛い、かなり……こんな感覚は初めてだ、くそっ』
ついに感じた。それは誰も経験するとは思わないような感覚だった。体の隅々が反応し、どこからともなくチクチクするような感覚がした。それは右手から来ていた。腕を伸ばすと、胸から腕、そして手のひらへと、電気のようなチクチクとした何かが駆け巡るのを感じた。微風が耳元でささやき始めた。
小さな光の火花が飛び散り、一秒ごとに光は強くなり、今にも膨張しそうな暖かい球体として形を取り始めた。
『やった!ついに……』
「アート!どこにいるんだ?」
木々の間に響き渡る、心配そうな声だった。
驚いて小さく飛び上がってしまい、苦労して作り出した光は風と共に消え去った。バランスを崩し、少し疲労感が残った。
『くそっ、せっかく上手くいってたのに……運命なのか?一番タイミングの悪い時に見つかるなんて。それにしても、どうやって俺を見つけたんだ?』 俺は息を大きく吐き出した。
胸が燃えるように熱く、腕の感覚がない。まるで消えない炎で内側から焼き尽くされているかのようだった。
『これは体への反動がかなり大きいな』 俺は自分を落ち着かせようとした。
数秒後、古い木の太い幹の陰から人影が現れた。まあ、見つかるのは時間の問題だった。なにしろ、無断で家を抜け出してきたのだから。
その声は、この世界での俺の父、エラリオンのものだった。彼は大柄でがっしりとした体格の、漆黒の髪を持つ男で、そこにいるだけで安心感を与えてくれた。村の狩人の一人として、彼は他の男たちと共にこのささやかな村を守っていた。
「ここにいたか、逃げ足の速い小僧め……!」彼は服の埃を払いながら、疲れたような笑みを浮かべて言った。
『あの笑顔には未だに違和感を感じるな……赤ん坊の頃にトラウマでも植え付けられたんだろうか?』
「また抜け出して。お前がそうするたびに、母さんがどれだけ心配するか分かってるのか?」
「ごめんなさい、父さん……ウサギを見かけて、つい追いかけちゃったんだ」俺は、子供らしく最高に無邪気な顔を作って答えた。
「そうか、お前はウサギが好きなのか?」
「うん、とっても可愛かったから……」俺は愛を込めた千の嘘の笑顔を向けた。
『嘘をつくしかなかった。ごめんよ、父さん。でも、マナ・コアを作ろうとしていたなんて、まだ説明できないんだ』
父は何も言わず、まるで羽のように軽く俺を抱き上げ、肩に乗せて家へ向かった。
丘を下ると村が見えてきた。クランモ村という。ここから見ると小さく見えるが、一歩一歩近づくにつれて、その場所は大きく見えた。
村の人々は親切で、畑仕事や薪にするための木を伐採するのをお互いに助け合っていた。子供たちはあちこちを走り回って遊び、体が弱くなった老人たちは、子供たちを見守るか家の中で過ごすことしかできなかった。
主に何人かの男たちが狩りのために魔法を使っていた。それができない者たちは、農業のために、つまり植え付けの準備をしたり、誰かが転ばないように地面を平らにしたりするために魔法を使っていた。そして少数の女性たちは、日常の家事、つまり料理のための火を起こしたり、雨の日に濡れた服を乾かすための風を起こしたりするために使っていた。
さらに、俺の新しい家は村の西の入り口近くにあった。到着すると、燃える薪の匂いと温かいシチューの香りが俺たちを迎えてくれた。
母さんは暖炉の近くで何かを探していて、背中を向けていた。
「帰ったぞ!」敷居をまたぎながら父が言った。
母さんは瞬時に振り返り、俺たちを見るや否や駆け寄ってきた。
彼女の名前はダイアナ。美しい栗色の長い髪と、同じ色の温かい瞳を持つ女性だ。不安で曇っていた彼女の瞳は、俺を見た瞬間、純粋な喜びの輝きへと変わった。
彼女は俺を腕に抱き、胸に強く抱きしめた。その瞬間、俺が生まれた時に初めてそうしてくれた時のような、絶対的な温もりを再び感じた。それは、ロンドンでの前世ではめったに経験することのなかった、無条件の愛に満ちた優しい抱擁だった。この新しい世界のすべてのものの中で、この感覚こそが間違いなく、俺が最も大切にし、守りたいと思うものだった。
「アート、どこに行っていたの?」彼女は少し震える声で叱った。「すごく心配したのよ。森が危険だってこと、よく知ってるでしょう?しかも日が沈んでからは、あなたみたいな小さな子供には……」
「ごめんなさい、母さん……」俺は彼女の肩に顔をうずめ、力いっぱい抱きしめながら呟いた。
「いいのよ……」彼女はため息をつき、俺の頭を優しく撫でた。「無事で本当によかった、私の可愛いアート。さあ、夕ご飯にしましょう。今夜は美味しいお肉のシチューを作ったのよ」彼女は光のように純粋な笑顔を浮かべた。
しかし、父に向けるその目は「後で話がある」と物語っていた。
家族の夕食と、父が森での狩りについて語る「偉大なる」冒険譚による食卓での笑い声の後、俺は自分に見せられているものの先には何があるのかを知るために、熱心に耳を傾けていた。
「それで、野生のイノシシたちが突進し始めた時、俺が気を引いたんだ。全部俺の方に向かってきたぞ!そこから準備していた罠のところまで走ったんだ。他の奴らが土の魔法を使って猛突進を止めようとしてたが、あまり効果がなくてな。俺は最後の一本になった矢で弓を構えたんだ。これで終わりだと思って最後の矢を放った。イノシシは俺の数メートル手前でそれを避けたんだが……!」
『本当に大げさに話すのが好きだな』 俺は少し微笑ましい眼差しで黙っていた。
「矢は奴を狙ったものじゃなかった。風のように速く、イノシシは奴のために用意された罠に落ちたのさ」
「すごいね、父さん!」
父は俺たちを楽しませるために、似たような話を話し続けた。馬鹿馬鹿しかったが、同時に心地よい時間でもあった。
夕食を終え、俺は自分の部屋に行った。
ベッドに座り、新しい家の窓から風景を眺めた。太陽は沈み、夜が谷を支配していた。空には満月が昇っている。その光は純白で、谷や森がその輝きを浴びているかのようだった。
『自分がここにいるなんて、未だに信じられないな。うるさくないし、いい匂いがするし、それに何より……』 幸せな笑みがこぼれた。
『もう仕事に行かなくていいんだ!あの地獄のような場所に戻らなくていい、あの忌々しい馬鹿どもに会わなくていいと考えるだけで。』
嬉し涙を流しながら、俺は手で口を覆った。
『公園で定年退職した老人たちが話していたのはこのことだったんだな。何にも縛られていない感覚!これぞ自由!?』
苛立ちと怒りの海から解放されたことを知り、俺はほんの少しの間、満足感に浸った。
「アート、まだ起きているのか?」
部屋のドアをノックしてゆっくりと開けたのは、父だった。
「うん、父さん。でももう寝るところだよ」笑顔を浮かべて彼を見た。
『今日はすごく充実した一日だった。自分のマナを少し感じることができたし……どうしようかな?』
「アート、明日は村まで一緒に来てほしい。父さんは、とても重要で特別なものを運ぶのにお前の助けが必要なんだ」彼は真剣な眼差しで俺に言った。
「え?」
俺は驚いた。エラリオンはいつもリラックスした表情で、笑顔を見せているからだ。あんな目で見られるなんて……よっぽど大事なことを頼んでいるに違いない。
「分かったよ、父さん。一生懸命頑張るよ」ためらうことなく、勇気ある声で言った。
「よし、もう寝なさい……明日は少し忙しい日になるからな」
彼は廊下へと歩き出し、ゆっくりとドアを閉めた。
「おやすみ、アート」
「おやすみ、父さん」
窓を見つめながら、毛布にくるまってベッドに横になった。長い時間をかけて、ようやく少しだけマナを顕現させることができた。たとえ小さな光の球体だったとしても、これは大きな進歩だ。眠るために目を閉じ始めた。
『明日は気をつけないとな。父さんが言っていたこと……』
完全に目を閉じる前、窓から緑色の光が覗いているのが見えた。
『幻覚だったのか?……いや、もしかしたら少し……大きなホタルだったのかもしれないな?』
ベッドから飛び起き、すぐに窓を開けて周囲を見渡した。ここは異世界だ……論理的に考えて、こんなものを見たら三つの選択肢がある。
一つ、ただのホタルで、俺が酷く眠かっただけ。
二つ、実は小さくて無害なモンスターだが、悪い予兆をもたらすもの。
三つ、あれは……
村の中心近くで、さっき見たあの光の軌跡が見えた。
『やっぱりだ。危うく無視するというミスを犯すところだった』
音を立てないように窓から飛び降りた。幸運なことに家は二階建てではなかったので、その光の跡を追って抜け出すのは簡単だった。
村の夜は冷え込んでいた。わずかな音といえば虫の鳴き声と、服の僅かな隙間にまで入り込んでくる風のささやきだけだった。その道を一歩進むごとに奇妙な感覚に襲われた。体がリラックスしていく。まるで再びバランスを崩しそうになっているかのようだが、それは温かい感覚で、ついさっきまで感じていた寒さは消えていた。
集中するために頭を振り、深呼吸をして、道をたどって一軒の家までやってきた。
『ここに何があるんだ?それに、どうして俺はこの場所に惹きつけられているんだ?』
足音と、ゆっくり近づいてくる話し声が聞こえ始めた。見つからないように身を隠した。危険な奴だろうか?顔を出して確認すると、パトロール中の父の友人たちだった。
『家に帰った方がいいな。そうじゃないと母さんが怒るし、そうなったら……』
それを考えただけで体に寒気が走った。男たちが去った後、俺は見つからないように早足で来た道を戻った……少し前から、誰かに見られているような感覚を抱きながら。
SE - 読んでくださって本当にありがとうございます。




