二人三脚の練習。どきどきするじゃん。
陽太より身長が15cm高い柚葉はだんだん陽太が気になり始めて・・・。
「おい!陽太、一緒に帰ろ?」
「柚葉・・・いつも俺の頭をワシャワシャするのはやめろ」
体育祭。陽太たちのクラスは真剣に優勝を目指している。
陽太も柚葉もそんなクラスが好きだった。
だからこそ期待に応えたい。
陽太は弓を弓道場の保管庫にしまった。
「陽太くん。一緒に帰ろ」美鈴が小走りにやってきた。
「ごめん!柚葉と二人三脚の練習するんだ。クラスのみんなもやるき満々じゃん。だから下手できないんだ。美鈴はバレーボールだっけ?」
「そう。こんなに小っちゃいのによりによってバレーボールだなんて」
「大丈夫。うちのクラスにはエースがいるだろ?柚葉ってでかいやつ」陽太は少しふざけたように笑った。
「バレーボールなんてそもそも身長で決まっちゃうじゃん。参考にもならないよ」
「じゃあ、俺はこれで。また明日な!」
そう言うと陽太は校庭の方に向かっていった。
ぽつんと残された美鈴は陽太の姿が見えなくなるまで目で追っていた。
やっぱ陽太くんは心のどこかで柚葉ちゃんのこと好きなのかな・・・。
校庭に照明が灯もった。
遠くからサッカー部の声が聞こえてくる。
校庭の隅。柚葉が待っていた。
「遅い!待ちくたびれた」
「悪い悪い。さ、練習始めようぜ」陽太は早速ふたりの左右の足を紐で結んだ。
「おい、柚葉。そんなに離れてちゃ走れないだろ?」
「あ・・・ん。ごめん」
「なんだ今日はやけに素直だな」
「うっさい。わたしは真剣にやりたいだけだ」
柚葉は陽太の傍に寄る。この距離は恋人より近い。
「やっぱり・・・」陽太がいつものごとく言おうとすると、柚葉はそれを遮って
「やっぱりでかいでしょ?言うと思った!陽太はやっぱりちっさい」楽しそうに笑った。
密着する陽太と柚葉。陽太は柚葉の汗の匂いと制汗スプレーの爽やかな香り、そして柚葉から香る甘い匂い。思わず唾を飲み込んだ。柚葉だって女の子だよな・・・いやいやそんなことはない。余計なことは考えるな陽太。自分に言い聞かせた。
「なにボーっとしてんの?陽太が動かないとわたしも動けないんだけど」
「あ・・な・・なんでもねーよ」
「ほら、さっさとやるよ、陽太」
「よし。いちにっ!いっちに!」
「おい!歩幅合わせろよ。そんなに大股で走るな」
「大股?これわたしの普通だけど?陽太こそそんなに細かく走られたらこっちが走りずらい」
「細かい?これが俺の普通だけど?」
陽太はふたりの歩幅をしっかり合わせるために、柚葉の腰に手をまわした・・・と思ったらそれは柚葉の引き締まったお尻だった。
身長差のいたずら。
「ちょっと!陽太!どこ触ってんの!わたしにムラムラしたからってお尻触るなんて変態よ、変態!」
「ム・・・ムラムラなんてしてねーよ。だいたい俺は柚葉を女として見たことなんてないからな!」
「わたしだって陽太に男を感じたことなんてないからね!」
「おいおい。相変わらず仲がいいな」クラスメートが笑いながら歩いてきた。
「別に仲なんて良くない!!」
「別に仲なんて良くない!!」
また二人ははもった。
体育祭当日。
各競技熱戦が繰り広げられている。
「陽太!柚葉!お前たちが1位でゴールすれば優勝のチャンスだぞ!」男子が叫ぶ。
陽太と柚葉は目を合わせうなずいた。
ふたりの足を紐できつく結んだ。
『位置についてヨーイ』パァン!!
号砲が鳴らされた。
「いっちに、いっちに」
陽太と柚葉は呼吸を合わせる。
大きくもなく小さくもない。お互いがお互いに合わせる。
「陽太!柚葉!いけるぞ!!」
クラスメートが叫ぶ。
小さい男に大きな女の子。
そのデコボココンビに全校生徒も沸く。
陽太と柚葉は白いゴールテープが見えた。
その時…お互いに合わせ全力で走った限界がきた。
ドサッ。
陽太と柚葉の足がもつれて派手に転んでしまった。
「陽太!柚葉!がんばれ!!」
クラスメートがふたりを鼓舞する。
柚葉はなかなか起き上がれない。
「ほら、手、貸せよ」
先に立ち上がった陽太が柚葉に手を差しのべた。
柚葉はちょっと赤面して
「かっこつけんな。陽太のくせに」
「いいから掴まれ」
柚葉は陽太に半ば強引に手を掴まれ立ち上がった。
柚葉は思っていた。
身長が小さくたって男として包容力があってまるで父親のように大きいと。
競技が終わり陽太と柚葉は水道に来ていた。
「柚葉、擦りむいてんじゃん。ほら、足、貸せ」
「いいよ、自分でできるよ」
「腕も痛いんだろ?ムリすんな」
陽太は柚葉の長い足を優しく洗ってあげた。
「保健室から借りてきた」そう言うと陽太は柚葉の傷口に消毒液をかけた。
「いった~!しみる!!もう少し優しくやりなさいよ!」
「我慢しろ」
珍しく真剣な陽太に柚葉の心臓は高鳴った。
陽太は手際よくガーゼを貼り、包帯でくくった。
「はい!できあがり!」
わざとらしく柚葉の傷口を優しく叩いた。
「いた!傷口叩くとかアホか…でも、ありがとう」
柚葉は陽太を見下ろして優しく言った。
陽太は当然、柚葉のいつもの頭ワシャワシャが来るかと身構えたが、柚葉は足元の小石を足でいじっている。
「その‥…ずるい。ちょっとかっこいいって思っちゃったじゃん。いい!?ちょっとだけよ。あと、別に好きとかじゃないんだからね!わかった!?勘違いしないでよ、絶対に!!」
陽太は呆気にとられたが
「そんなんわかってるよ!」
照れ隠しでもなんでもなく陽太は柚葉が自分のことを好きなわけがない。また、自分も柚葉のことが好きなわけではない。
そんな陽太の気持ちがその一言に込められているのは明白だった。
柚葉は小さな声で
「わたしの気も知らないで。ばか。」
陽太に聞こえないように呟いた。
「最後までお読みいただきありがとうございました!少しでも面白い、続きが読みたいと思ったら、下部の【☆☆☆☆☆】と【ブックマーク】で応援していただけると励みになります!」




