俺より身長が15cm高い柚葉。
陽太より身長が15cm高い柚葉はだんだん陽太が気になり始めて・・・。
「おい!陽太、一緒に帰ろ?」
「柚葉・・・いつも俺の頭をワシャワシャするのはやめろ」
放課後。
教室に西日が差して机は黄金色に輝いている。
「まぶしい!陽太、カーテン閉めて」
「ったく、自分で閉めろよ」
陽太はカーテンを閉めようとした。
カーテンは窓の上の方に引っかかっている。
「あれ?閉まらねぇ」
陽太は力任せにカーテンを引っ張った。無情にもカーテンはギシギシ突っ張るだけで動く様子がない。
ため息をついて柚葉は窓辺に来た。柚葉はカーテンが引っかかっている部分に手を伸ばした。
陽太は柚葉を見て「やっぱりデカいな」思わず言ってしまった。
「・・・今なんて言った?」柚葉は陽太を見下ろした。
「いや・・・なんでもない」
「ほら、わたしが閉める。どいて」カーテンの引っかかりに手を伸ばす。
陽太はムッとして「いいよ。俺が閉める」
「届かないじゃん」柚葉は再びカーテンに手を伸ばす。
それを遮るように「踏み台持ってくれば届くだろ」柚葉の制服を後ろから引っ張る。
「もう、無理しなくていいよ」柚葉は笑った。
「俺は身長が低いだけでなんにもできないわけじゃないぞ!」
「はいはい、わかったわかった」結局、柚葉がカーテンを閉めた。
それを見ていた男子が「お前らホント仲いいよな。付き合ってるんじゃねーの?」
囃し立てる。
女子も「柚葉、案外、陽太のこと気になってるんじゃないの?」ニヤニヤして二人を見る。
「そんなんじゃねーよ!」
「そんなことないよ!」
ふたりの声がハモッた。
「ほら、息ピッタリだろ」教室は笑いに包まれた。
その様子を教室の隅で見ていた美鈴は制服の袖をギュッと掴んだ。
俺の身長は165cm。対する柚葉の身長は180cm。その差15cm。並ぶと弟と姉のようだ。
実際に柚葉は俺のことを弟のようにちょっかい出してくる。
美鈴はスクバを肩に掛て「陽太くん。そろそろ部活の時間だよ。いこ」陽太に声をかけた。
「お、もうそんな時間か。じゃぁな、柚葉。お前もバレーの大会近いんだろ?エースがこんなとこで油売ってちゃだめだぞ」
陽太と美鈴が並んで教室から出て行った。
それを見て柚葉はクラスメートに「ほら、お似合いなのは美鈴。絵になってるじゃん。変な噂立てないの」少し寂しそうに言った。
クラスメートはそんな柚葉の表情に気付くはずもなく
「やっぱそうだよな。柚葉も自分より身長低い彼氏なんて考えられないだろうしな」
「だね。わたしも陽太はわりと顔もいいし勉強や部活もできる。だけど身長だけがね。めっちゃもったいないな」
勝手なことを言っていた。
柚葉もスポーツバックを肩に掛て体育館へ向かった。
弓道場が目に入る。
陽太が鋭い目つきで的を見ている。
スパン!陽太から放たれた矢は的の真ん中を見事に射抜いていた。
普段見ない陽太の横顔に柚葉は心臓がトクンと鳴った。
陽太が弓を下すと美鈴が笑顔で陽太になにか話している。
柚葉が見とれていると、陽太は美鈴を後ろから抱きしめるような恰好になり、弓の持ち方を教えている。
二人の身長差は10cmほどだろうか。
柚葉はそんな二人を見て、小さな声で「やっぱりお似合いかもね・・・」小さく息を吐いてその場を離れた。
部活が終わり柚葉は首にスポーツタオルを巻いて自動販売機にやってきた。
あ・・・陽太・・。
陽太はジュースを自動販売機から取り出すと振り向いた。
「お、柚葉。お前も終わりか?」
「終わったよ。陽太お疲れ!」そう言って陽太の頭をわしゃわしゃした。
「だから、それやめろよ。俺はお前の弟じゃないぞ」
「いいじゃん。なんか陽太かわいいからね」
「かわいいってなんだよ」いつものことだから反論する気にもなれない。
「そうだ、これ」陽太はスクバを漁る。
「ほら、スポドリ。朝コンビニで買ったこと忘れてた。だから温い。冷たいのはもちろん俺が飲むから。これ柚葉にプレゼント」笑って柚葉に放り投げた。
柚葉はスポドリをキャッチすると
「ホントに温いじゃん!まあ、もらっとく」
「じゃな。また明日」陽太は手をヒラヒラさせながら振り向かずに去っていった。
柚葉は陽太から貰った温いペットボトルを頬にあてた。
ただの温いペットボトル。
陽太にいらないからってもらっただけ。
わたし‥なに考えてんだろ。
体育祭。
クラス対抗で優勝を競い会う。
運動部は自分の競技に出ることは禁止されている。
担任は今年は絶対に優勝すると息巻いている。
生徒たちもやる気に満ちている。
誰がどの競技に出るのか考え抜いた。
しかし、どうしても決まらない競技がひとつだけあった。
男女ペア二人三脚。
年頃の男女には刺激が強く、羞恥心で誰も名乗りを上げない。
担任はしかたなく、くじ引きだ、くじ引き。
用意周到にクジを持ってきた。
みな緊張した面持ちで箱の中に手を伸ばす。
一斉にクジを開いた。
陽太はクジを開くと【あたり】と汚い字で書かれている。
柚葉はクジを開くと【あたり】と汚い字で書かれている。
担任は「あたり引いたやつはだれだー?」と呼び掛けた。
陽太は恐る恐る手を上げた。
もうひとり手を恐る恐る上げる人物がいる。
陽太と柚葉はすぐに目が合った。
「マジかよ!こんなにでかいのと歩幅あわないぞ?」
「わたしだってこんなに小さいのと歩幅あわないよ!」
担任は「静かに!クジで公平に決めた結果だ。ふたりで工夫してみろ。案外、いい経験かもしれないぞ」ニヤリと笑った。
クラスメートも「面白そうじゃん!これから毎日練習だな!」と次々に声を上げ、教室は笑いに包まれた。
陽太と柚葉だけは俯いて赤面していた。
もうひとり俯いている女の子がいる。
美鈴だった。
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