第98話:私の決断
「お父様、ありがとうございます。はい、私はもう誰の為にも人生を捧げるつもりはありません。これからは自分の為に、生きると決めましたから」
真っすぐとジョージ殿下の方を向いた。
「幼い頃、いつもあなた様は傍にいて下さいましたね。お父様やお兄様から嫌われていた私には、ジョージ殿下の優しさが本当にうれしくて。ジョージ殿下と過ごす時間は、幸せ以外何物でもありませんでした。
ジョージ殿下が傍にいてくれたから、私は生きてこられたと言っても過言ではありません。婚約者候補を選ぶときも、ジョージ殿下の為ならどんな苦労もいとわない。そんな思いで、あなた様の婚約者候補になったのです。
正直魔力の提供は、辛い事も多々ありました。それでも私は、あなた様に魔力を提供できたことを、後悔したことは一度もありません。
ずっと私を支えてくれたジョージ殿下に、恩返しが出来た事、心より嬉しく思っておりますわ。だからこそ、私はジョージ殿下には幸せになって欲しいと、切に願っているのです」
ジョージ殿下は私にとって、かけがえのない大切な人。それは今でも変わらない。
「それじゃあ、僕と一緒にミレンズ王国に戻ってくれるのかい?」
ジョージ殿下の問いかけに、ゆっくりと首を横に振った。
「申し訳ございません、それは出来ません。私はマレリス王国に来て、初めて家族の温もりを知りました。叔父様や叔母様、ルーカス様と過ごす時間は、私にとってかけがえのない大切な時間でした。
そして私は、また恋をしたのです。どんな時でも私にずっと寄り添ってくれる、ルーカス様に。彼の傍にずっといたい、これからは彼と幸せになりたい、そう思っております。
ですのでジョージ殿下、あなた様の気持ちには応える事が出来ません。申し訳ございません」
ジョージ殿下にむかって、深々と頭を下げた。
「サリー、それは本当かい?本当に僕の事を…」
隣にいたルーカス様が、目に涙を浮かべながら話しかけてきたのだ。
「はい、ずっとルーカス様をお慕いしておりました。ただ…あなた様はとても魅力的なので、きっと他の令嬢といずれ結婚すると思っておりました。義理の妹でもある私に好意を抱かれても迷惑なだけだろうと思い、一時は避けていたこともありました。
ですが私は、やはりルーカス様が好きなのです。それが私の素直な気持ちなのです。私はルーカス様と共に未来を歩みたい、その願いを叶えるためにも、自分の気持ちを正直に伝える事にしたのです。
たとえこの気持ちが報われなかったとしても、後悔はありませんわ」
やっと自分の気持ちを、ルーカス様に伝える事が出来た。もう思い残すことはない。
「サリー…君って子は!僕もずっとサリーが大好きだ。今回の件で、君がミレンズ王国に帰ってしまうのではないかと、ずっと不安だったんだ。でも、まさか君からこんなうれしい言葉をもらえるだなんて…
ありがとう、サリー。絶対にサリーを幸せにするからね」
涙を流しながら私を抱きしめるルーカス様、私も彼の背中に手を回した。ルーカス様の温もり、温かくて落ち着く。
「不安にさせてしまい、申し訳ございませんでした。ルーカス様、これからもずっと一緒にいて下さい。2人で一緒に幸せになりましょうね」
大好きなルーカス様、いつも私の事を考え、どんな時でも傍にいてくれた。ずっと私を支えてくれたのだ。今度は私が、ルーカス様を支えたい。そう思っている。
ゆっくりとルーカス様から離れると、再びジョージ殿下の方を向いた。
「ジョージ殿下、あなた様を大切に思っていた気持ちに、嘘偽りはありません。私にとってジョージ殿下は、今でもかけがえのない大切な人です。
ですので、どうかあなた様も幸せになってください。それが私の願いでもありますから」
辛い事も沢山あった、でも、それ以上に楽しい時間や幸せな時間があったのも事実。結局私とジョージ殿下はすれ違ってしまったけれど、それでもジョージ殿下には幸せになって欲しい。
そう強く願っている。
「サリー…僕は…」




