第99話:何が起こったのですか?
ジョージ殿下がなにかをいいかけた時だった。背中部分に激痛が走ったのだ。
さらに口から大量の血が…
「サリー、どうしたのだい?これは一体…貴様は…」
ゆっくり振り向くと、そこにはメイドの姿をしたメリンダ様の姿が。どうやら攻撃魔法を使って、私の背中を攻撃した様なのだ。次の瞬間、体が燃えるように熱く激痛に襲われ、その場に倒れ込んだところを、ルーカス様が受け止めてくれた。
「サリー、しっかりするんだ!サリー」
「この女を取り押さえろ!それからすぐに医者を呼べ!」
王太子殿下の叫び声が聞こえた。すぐにメリンダ様を取り押さえようとする護衛たち。
「サリー様、どう?私の全魔力を使った攻撃魔法は。あなたのせいで、私の人生滅茶苦茶よ。ジョージ様と結婚できないどころか、修道院に送られて…全てあなたのせいよ!
だからね、私、考えたの。私の人生をかけて、あなたの幸せを奪ってやろうと。あなただけ幸せに何てさせないわ!苦しみながら、死になさい…」
そう叫んだ瞬間、メリンダ様が血を吐いて倒れたのだ。
「ぎゃぁぁぁ、ぐるじぃ…どうして…こんなにくるじいの…ぎゃぁぁ」
メリンダ様が恐ろしい顔でのたうち回っている。あまりにも恐ろしい光景に、護衛たちも近づけずに固まっていた。だが次の瞬間、ぐったりとメリンダ様が動かなくなったのだ。
護衛たちが、恐る恐るメリンダ様に近づく。
「王太子殿下、脈も呼吸もありません。心臓も止まっております」
「なんだって!とにかく、その女をつまみ出せ!」
ぐったりと倒れているメリンダ様を、騎士たちが運んで行った。
段々視界も悪くなってくる、メリンダ様はご自分の命と引き換えに、私の命を奪おうとしているのね…
「サリー、しっかりしてくれ!どうして治癒魔法が効かないんだ。どんどん血が流れ出ていく。このままだとサリーの命が」
「サリーしっかりしてくれ。生きてくれ!」
「サリー、嫌よ、死なないで」
いつの間にか皆が、私の元に集まってきている。そして治癒魔法をかけてくれている。
「皆様…私は…もう…」
「サリー、もう話さないでくれ。医者はまだか!」
「お待たせいたしました。王宮医師を連れて参りました。すぐに診察を」
お医者様たちがこちらにやって来て、診察をしてくれる。
「これは…サリー様は攻撃魔法を受けたと言いましたね。そして攻撃魔法をかけた人間は、命を落とした。これはただの攻撃魔法ではありません。怒りや悲しみ、憎しみを力とした攻撃魔法で、自分の持つ魂を魔力に宿らせることで、治癒魔法を跳ね除け、確実に相手の命を奪う。
いわば呪いの様な魔法です。とはいえ、攻撃した本人も無傷ではいられません。命を落とすことはもちろん、魂自体も消滅してしまうのです。
魂が消滅するという事は、亡くなった後は完全な無になる。我々は魂があれば、次に生まれ変わる事が出来る。だが、魂が消滅すれば、それすらできなくなるのです。攻撃者は、来世すら捨てたのでしょう…」
お医者様が丁寧に説明してくれた。要するに、治癒魔法は使えないという事か。それならやはり…
「そんな…それではサリーはもう、助からないのですか?このまま指をくわえて、サリーが息を引き取るのを見ていろと言うのですか?」
「ふざけるな!やっとサリーは愛する人を見つけて、幸せになれるはずだったのに。頼む、私の命を使っても構わない、どうかサリーを助けてくれ。この通りだ」
お父様が必死にお医者様に頼んでいる。私の為に…お父様が…
「落ち着いて下さい。これでも私は王宮医師です。助かる可能性はゼロではありません。ですが…」
「ですがなんだ!サリーが助かる可能性があるのなら、何でもする。頼む、教えてくれ」
お父様がお医者様に縋りついている。お父様、もう私はいいのです。私の為にこんなに心配してくれる人がいる事が分かって、今私はとても幸せなので。
そう伝えたいが、言葉にできない。
「ローレティエン公爵殿の血と魔力を、サリー様に提供するのです。そうすれば、サリー様は助かるかもしれません。今サリー様は、酷い怪我による出血で、命を落としかけているのです。
血を提供する事で、提供者のみ治癒魔法の効果が発揮すると言われております。ですので、治癒魔法で傷口を塞ぐのと同時に、魔力と共に血を提供すれば、助かるかと。
ただし、血と魔力の同時提供はただでさえ非常に体への負担が大きいうえ、治癒魔法までかけないといけないのです。その上、血のつながった人間かつ、1人しか与える事が出来ません。ただし、サリー様が助かる確率は五分五分。公爵様が命を落とす確率も五分五分。
最悪2人とも命を落とす可能性もあります」
2人とも命を落とす可能性があるですって。
「お父様…どうかその様な事は…」
「私の命などどうでもいい。サリーが助かる確率が少しでもあるのなら、血も魔力も好きなだけ持って行ってくれ」




