第95話:サリーは何を考えているのだろう~ルーカス視点~
しばらく待っていると、ガチャリと部屋のドアが開いた。
「おはようございます、ルーカス様」
穏やかな表情で、サリーが部屋から出てきたのだ。
「おはよう、サリー。昨日はその…ゆっくり休めたかい?」
「はい、お陰様でゆっくり休めましたわ。ルーカス様こそ、休めたのですか?何だかげっそりしているように見えるのですが…少々お待ちください」
僕にそっと手をかざすと、治癒魔法をかけてくれたのだ。
「サリー、君はまだ魔力が完ぺきではない。魔法を使うのは良くないよ」
「あら、これくらいの魔力は平気ですわ。さあ、朝ご飯を頂きに行きましょう。私、お腹がペコペコですわ」
穏やかな表情を浮かべたサリーが、食堂へと向かってゆっくりと歩き出した。僕も慌てて後を追う。
いつも通り食事を済ませると、サリーはいつも通り大好きな青バラ園へと向かい、お茶を飲み始めたのだ。あまりにもいつも通りの姿に、僕はもちろん、叔父上も叔母上も困惑をしていた。
「サリーの事だから、悩みすぎて部屋から出てこないのではないかと心配したのだけれど…いつも通りね。あの子、もう気持ちが固まっているのかしら?それとも、何か考えがあって、いつも通り過ごしているのかしら?」
叔母上も首をかしげている。確かにサリーは、いつも以上に穏やかな表情をしている。既に気持ちを固めているのか?もしかして、ミレンズ王国に行く事を決めたとか?
一気に不安が襲う。
「叔母様、ルーカス様もそんなところで何をなさっているのですか?こっちに来て、一緒にお茶をしましょう」
固まる僕たちに気が付いたサリーが、穏やかな表情でこちらにやって来て、僕たちの手を引きイスに座らせたのだ。
「サリー、あなた随分と穏やかな表情をしているけれど、その…もうどうするか結論は出たの?」
叔母上が、恐る恐るサリーに確認をする。そんな叔母上に微笑み返すサリー。
「このバラ園は、叔母様が亡くなったお母様の為に作ったのですよね。お母様は、どんな方だったのですか?」
急に話題を変えてきたサリーに、叔母上も困惑顔だ。
「マリア…そうね、マリアは誰よりも優しくて強くて、それでいて芯がしっかりした子だったわ。こうと決めたら真っすぐで。相手の幸せを強く願う子でもあった。当時まだ交流のなかったマレリス王国に留学したいと言い出した私に、両親は大反対したわ。
そんな中、両親を説得してくれたのも、マリアだった。あの子のお陰で私はこの国に来られて、そしてここで愛する人と出会った。
マリアはいつも、私の気持ちに寄り添ってくれた大切な人よ。マリアにはいつも笑顔でいてほしい、幸せでいて欲しいとずっと願っていたわ。
だからこそ私は、マリアの最期の願いを、どうしても叶えたかった。あの子が命を懸けて生んだサリーを幸せにしたい、そう思っているのよ。マリアはきっと、誰よりもあなたの幸せを願っているだろうから」
叔母上の話を、真剣な表情で聞くサリー。
「叔母様、お母様の事を教えて下さって、ありがとうございます。それでは私はこれで、失礼いたしますわ」
そう笑顔で告げたサリーが、その場を後にした。
一体サリーは何を考えているのだろう。その日は不安の中1日を過ごした。
翌日も、その翌日もサリーは穏やかな表情でいつも通り過ごしている。サリーはもう気持ちが固まったのか?それともまだ悩んでいるのだろうか…
サリーの気持ちが読み取れず、不安な日々を過ごしていた。
そんな日の夜
「サリー、今日ジョージ殿下に話しをして来たよ。明日面会できるとの事だ」
「ありがとうございます、叔父様」
王宮から戻ってきた叔父上が、サリーにそう告げたのだ。明日サリーは、ジョージ殿下に会いに行く様だ。という事は、もう結論が出たのか?
「サリー、もう気持ちは固まったの?」
叔母上も同じ事を思った様で、サリーに問いかけている。
「はい、明日ジョージ殿下に、私の気持ちを伝えます。大切な話なので、叔母様とルーカス様も来ていただけますか?」
「ええ、もちろんよ。ルーカスもいいわよね」
「はい、もちろんです」
「ありがとうございます」
僕たちに笑顔を向けるサリー。彼女は一体、どんな判断を下したのだろう。サリーの感情からは、全く読み取ることが出来ない。
もしサリーが、ミレンズ王国に戻る事を選んだら…
考えただけで、胸が締め付けられる。
結局この日も僕は不安から、一睡も眠る事が出来なかったのだった。
次回、サリー視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。




