第9話:叔母様からの提案
急いでサンドウィッチを食べる。次はいつ食事が出来るか分からない。しっかり食べておかないと。そんな思いで、食べられるだけ食べた。
お腹がいっぱいになったら、なんだか眠くなってきた。なんだかんだ言って、ずっと魔力不足なのだ。ベッドで眠るのも、今日で最後かもしれない。出来るだけ体力を回復させておいた方が、いいだろう。
そう思い、ベッドに横になった。なんだか物凄く眠い…
そのままゆっくり瞼を閉じたのだった。
*****
“…リー、私の可愛いサリー”
この声は誰だろう。
ゆっくり瞼をあげると、そこには悲しそうな顔をした叔母様が。いいや…さっき会った叔母様よりも、随分若い気がする。この女性は一体…
“サリー、あなたには辛い思いをさせてしまって本当にごめんなさい。どうか…どうか幸せになって…あなたの幸せを、ずっと願っているから…”
悲しそうにそう呟くと、そのままスッと消えてしまったのだ。
待って、あなたはもしかして。
その瞬間、ぱちりと目が覚めた。あの人は、私のお母様?今まで一度の夢になんて出て来てくださらなかったのに…
もしかして、私の願望が夢になって現れたのかしら。
でも…
お父様に魔力をぶつけられそうになった時に聞こえた声と、同じだったような…
その時だった。
ドアをノックする音が聞こえたと思ったら、叔母様が部屋に入って来たのだ。後ろには王妃殿下と、なぜか俯いているお父様の姿が。
「サリー、大事な話があるのだけれど、いいかしら?」
「ええ、構いませんが…」
一体どんな話なのかしら?不安から体が震える。
「今王妃殿下から、あなたが置かれている状況を聞いたわ。可哀そうに、随分と辛い思いをしていたのね。まさかあなたが、この国でこんな非道な扱いを受けていただなんて、夢にも思わなかったわ」
「サリーちゃん、ジョージが本当にごめんなさい。あそこまであの子が愚かだとは、思わなかったわ。侯爵以上の貴族を中心に、ジョージとメリンダ嬢の婚約に、大反発している人も多いの。
そもそもメリンダ嬢は、ジョージに魔力を提供する事を拒んだのよ。それなのに…美味しいところだけ持って行くだなんて。貴族たちからは、この様な事がまかり通るのだとしたら、誰も婚約者候補になりたがらない。このままジョージ殿下とメリンダ嬢の我が儘を許したら、王族が亡びると危惧している人もいるくらいよ。
ジョージも今はメリンダ嬢に熱を上げているけれど、きっとあなたが魔力を提供してくれたと知ったら、考え直すと思うの。
だからどうか…」
「私はもう、ジョージ様の婚約者になるつもりはありませんわ。これでも私は、ずっとジョージ様をお慕いしておりました。ジョージ様が笑っていて下さったら、私も幸せでした。ジョージ様の幸せこそが、私の幸せだったのです。
だからこそ、ジョージ様がメリンダ様との婚約を望むのでしたら、私は喜んでその座を譲ります。
どうか、私の事は気にしないで下さい」
たとえ私とジョージ様が婚約を結んだとしても、きっとジョージ様は、幸せではないだろう。それなら私が身を引き、愛するメリンダ様と幸せになってほしいのだ。たとえそれが、親不孝だったとしても…
「サリーちゃん…あなたはどこまでも優しい子なのね。あんな愚かなジョージの為に、そこまで考えてくれていただなんて」
王妃殿下が、ポロポロと涙を流している。私の為に泣いて下さる王妃殿下の方が、心優しいと思うが。
「サリーの気持ちは分かったわ。サリーはマリアに…あなたの母親に似て本当に心優しい子なのね…ねえ、サリー。あなたさえよければ、私の住んでいるマレリス王国に来ない?
実はね、あなたを我が家の養子にしようと考えているの。もちろん、あなたさえよければだけれど」
「私が、叔母様の養子ですか?」




