第10話:叔母様と一緒に暮らしたいです
初対面なのに、私の事をこんな風に思ってくれる叔母様と暮らせたら、どんなに幸せだろう。それにこの国にいても、辛いだけ。
でも…
「私が叔母様のお屋敷に行ったら、ご迷惑になりませんか?叔母様には旦那様がいらっしゃるのでしょう?それにお子様たちも…」
私なんかが図々しく叔母様のお屋敷に行ったら、きっと迷惑になる。そう思ったのだが…
「その点は心配しなくてもいいわ。さっき夫とも通信機で話をしたの。ぜひサリーを、我が家で受け入れたいと言ってくれているの。だからどうか、我が家の事は気にしないで、あなたの素直な気持ちを教えて」
素直な気持ちか…
「ですが私は、お母様の命を奪った人間です。叔母様にとって母は、大切な双子のお姉様だったのですよね」
「サリーがマリアを殺したですって!サリー、マリアはあなたのせいで命を落としたのではないわ。そもそも出産は、命がけなのよ。だからマリアが命を落としたのは、誰のせいではないの!
それにしても、誰がそんな酷い事を言ったの?あなたは、マリアの大切な忘れ形見なの。マリアが命を懸けて守った、大切な命なのよ。どうかそんな悲しい事を、言わないでちょうだい」
お母様が命を懸けて守った、大切な命…今までそんな風に言ってくれる人なんて、いなかった。私のせいでお母様は、命を落としたと言われ続けていた。
でも叔母様は…
「私…叔母様と一緒に暮らしたいです…ただ…ここにいる使用人たちの行く末が心配で。王妃殿下、どうか彼女たちを、王宮で雇ってはいただけませんか?彼女たちはずっと、私に寄り添ってくれました。彼女たちのお陰で、今まで生きてこられたのです。
ですからどうか、お願いします」
きっとお父様は、彼女たちをクビにする。だからこそ、王妃殿下に彼女たちをたくしたいのだ。
「サリーちゃん、頭をあげて。もちろん彼女たちが望むのなら、王宮で面倒を見るわ」
「待って、サリー。彼女たちはずっと、あなたを支えてくれた大切な使用人たちなのでしょう?あなた達さえよければ、サリーと一緒にマレリス王国に来て、サリーのお世話をしてくれないかしら?もちろん、お給料は弾むし、住む場所も提供するわ。
とはいえ、この国に家族もいるでしょうから、無理にとは言わないわ。もちろん、この国で王宮使用人として働くという選択をしてもいいのよ。
ぜひ考えてくれないかしら?」
なんと!私だけでなく、この子達の面倒も見てくれるだなんて。とはいえ、叔母様がおっしゃった通り、急に国を出るのは難しい子もいるだろう。それでも、もし彼女たちが付いて来てくれるのなら、私も嬉しい。
「私、サリーお嬢様に付いていきますわ」
「「「私たちもです」」」」
いつも私を支えてくれた使用人たちが、一斉に声を上げたのだ。
「待って、皆。そんなに即答しても大丈夫なの?一度家族とも相談してみて。それでも付いてきてくれるというのなら、その時はお願い。ついていくのが厳しいという子は…王妃殿下、どうかよろしくお願いします」
「ええ、もちろん王宮で面倒を見るから、安心して。もし王宮で働きたい場合は、今から紹介状を作るから、その紹介状を持って王宮に来て。今すぐ紹介状を準備して、この子達に渡して」
近くに控えていた執事に、指示を出す王妃殿下。その場で紹介状を作ってくれ、彼女たちに渡してくれたのだ。これで彼女たちも、安心だ。
「そうと決まれば、早速この屋敷を出ましょう。こんな屋敷、1秒だってサリーを置いておきたくはないわ。お義兄様、サリーの荷物は明日にでも我が家の使用人が取りに来ますので。
サリー、ごめんなさいね。今すぐマレリス王国に帰りたいところなのだけれど、あなたとの養子縁組をこの国で行わないといけないの。
ホテルをとってあるから、養子縁組が終わるまではそこで生活をしましょう。大丈夫よ、2~3日程度で全て終わるから。すぐにこの国を出られるわ」
そう言って笑った叔母様。
この家を追いされるだろうと覚悟していたが、まさかこんな形で屋敷を出る事になるだなんて。
ふとお父様の方を見た。ずっとうつむいたままだ。いつも怖い顔をしているお父様が、なんだか小さく見える。
とはいえ、ずっと疎ましいと思っていた私がいなくなるのだから、きっとお父様も喜んでくれるだろう。




