第88話:ジョージ殿下と視察に向かいます【その2】
玄関に出ると、叔父様と叔母様も待っていた。
「サリー、どうか無理はしないでね。私もルーカスと一緒に、王宮であなたの帰りを待っているから。もし何か嫌な事があったら、すぐに教えてちょうだい」
「ありがとうございます、叔母様。ですが叔父様もいらっしゃいますし、きっと大丈夫ですわ」
2人きりで出かける訳ではない。叔父様や王太子殿下もいらっしゃるだろう。何も心配する必要はないのだ。
それでもまだ心配そうな叔母様も一緒に、馬車に乗り込んで王宮を目指す。王宮に着くと、既に王太子殿下とジョージ殿下が待ってくれていた。
「お待たせしてしまって申し訳ございません」
急いで馬車から降りると、叔父様がすかさず頭を下げた。私達も続いて頭を下げる。予定より随分早く到着したはずなのに…
「グラッサム公爵殿、頭をあげて下さい。僕が待ちきれなくて、早くからここで待っていただけですので。
あなたがサリーの叔母上の、アマリリス夫人ですね。サリーにそっくりですね。お初にお目にかかります。ジョージ・ラビレ・ミレンズです」
「ジョージ殿下、初めまして。と言いたいところですが、実はあなた様がまだ幼い時に、一度会っているのですよ。あなた様のお母様、マーガレット王妃とは仲良くしてもらっていてね。
殿下も随分と大きくなられましたね。陛下にそっくりですわ」
お互い笑顔で話をする2人の姿を見ていると、なんだか不思議な気持ちになった。まさかこの2人が、こんな風に話をするだなんて。
「立ち話も何ですから、そろそろ参りましょう。グラッサム公爵、サリー嬢、今日はよろしく頼みます。ジョージ殿下、馬車へどうぞ」
王太子殿下に促された。
「叔母様、ルーカス様、行って参ります。グラッサム公爵家の令嬢として恥ずかしくない様に、しっかり務めて参りますので、ご安心を」
叔母様とルーカス様に笑顔で挨拶をして、馬車に乗り込んだ。なぜかルーカス様が不安そうな顔をしている。そんな彼に、私は大丈夫よ!そう言わんばかりに、再び笑顔を向けた。
そして叔父様の隣に座り、馬車が動き出す。
「サリー嬢、今日は来てくれてありがとう。せっかくだからサリー嬢も、この国の事を知ってもらいたいと思ってね。観光にでも来たつもりで、気楽に過ごしてくれたらいいから」
王太子殿下が笑顔でそう言って下さったのだが、さすがに観光気分でいる訳にはいかない。
「お気遣いありがとうございます、王太子殿下。今日は私も色々とお勉強させていただくつもりで、視察に参加させていただくつもりです」
色々とあって、まだあまり王都の街に出たことがないのだ。この街には魅力的なところが沢山あると聞いているので、実際この目で見られるのが楽しみなのだ。
まずは王都の街を見て回る。王太子殿下や叔父様が、マレリス王国の人々の生活を詳しく説明してくれた。こうやって実際平民の生活を身近で見られるのは、やはり新鮮だ。
私も昔はこうやって街に出て、人々がどんな暮らしをしていたか見ていた。孤児院にもよく足を運んでいた。ジョージ殿下の婚約者候補になってから、忙しくてなかなか足を運べなくなってしまったが…
あの子たち、もう随分と大きくなっているだろうな。元気にしているかな?急に来なくなった私の事を、恨んでいないかしら?ついそんな事を考えてしまった。
「サリー、どうしたのだい?さっきから上の空のようだけれど」
私に話しかけてきたのは、ジョージ殿下だ。いけない、私ったらつい昔の事を…
「申し訳ございません。昔の事を考えてしまいまして…さあ、次に参りましょう」
気を取り直して、次の視察場所へと向かう。途中昼食を摂りながら、視察は順調に進んでいった。
「ジョージ殿下、こちらで最後になります。お疲れになったでしょう。王宮に戻りましょう」
今日の日程を無事に終え、王宮に戻るために馬車に乗り込もうとした時だった。




