第85話:不安です
「サリー、ルーカス、おかえりなさい。随分と早かったわね。なんだか怒っている様だけど、何があったの?」
不安そうな顔で、叔母様がこちらにやって来た。
「ミレンズ王国から、王太子殿下がいらしていたのですよ。あの男、サリーに散々酷い事をしたのに、サリーに会いたくてわざわざ我が国に来たようです」
「何ですって!ジョージ殿下が?どうして今更、ジョージ殿下が我が国にいらっしゃるの?あの人は別の令嬢に好意を抱き、サリーとの婚約を拒否したくせに!今更何の用があってきたのかしら?」
「どうやらその令嬢とはうまくいかなかった様で、やはりサリーと結婚したいと言いに来たのですよ!あれほどまでに酷い事をしておきながら、今更サリーと結婚できなければ自分は独身を貫くだなんて、ふざけたことを抜かして!
思い出しただけでも、腹が立ってきた。今叔父上が、あの王太子を招き入れた我が国の王太子殿下に抗議に行っております」
「そう…とはいえ、王太子殿下のお立場を考えると、ミレンズ王国の王太子殿下を無下にする事はできないかもしれないわね。そもそもジョージ殿下の母でもあるマーガレットは、この事を知っているのかしら?
マーガレットの様子を考えると、ジョージ殿下をこの国に来させることに、反対しそうだけれど…」
「叔母上、何を呑気な事を言っているのですか!とにかく、もうあの王太子にサリーを会わせるつもりはありません。サリー、嫌な思いをさせてしまってすまなかったね。君の好きな中庭でお茶にしよう」
ルーカス様に連れられて、中庭に向かった。
相変わらず綺麗な青バラ咲いている。魔法で1年中枯れない様にしている為、どんな時でも青バラを楽しむことが出来るのだ。
本当に綺麗なバラだわ。
そういえばミレンズ王国の王宮にも、青いバラが咲いていた。お母様を思い、王妃殿下が作った庭だったわね。私もその場所が大好きだったな…
あの場所でよくジョージ殿下とも、遊んだわ。私の為に、青バラのブーケを作ってくれたっけ。あの頃は…て、私は何を考えているのかしら?ジョージ殿下には、確かに酷い事をされたけれど、楽しかった思い出も沢山ある。
彼がいたから、私はミレンズ王国でも頑張って来られたのだ。とはいえ…もうジョージ殿下の元には戻れない。だって私には…
「サリー、そんなに悲しそうな顔をしてどうしたのだい?大丈夫だよ、君は僕が守るから。誰がなんと言おうと、あんな男の元に返したりはしないよ。たとえ戦争になろうともね。サリーのお陰で、魔力も安定したし」
「戦争だなんて!その様な恐ろしい事を言わないで下さい。その様な事は、決してなりませんわ。ミレンズ王国には、王妃殿下もいらっしゃいますし、それにお兄様だって…力を貸してくれるはずです。ですから、その様な物騒な事は…」
もし私が、ミレンズ王国でもっとしっかりと人間関係を築けていたら、皆様に迷惑をかけずに済んだのかしら?家族とも不仲で、友人もいなかった私は、結局お荷物でしかないのかもしれない。
「ごめんね、そんなつもりで言ったわけではないよ。もしそんな事になったら、サレオ殿が全力で止めてくれるだろう。それに叔母上だっているんだ。何も心配する必要はないよ。
さあ、お茶にしよう。カモミールティだよ、ゆっくり飲んで」
「ありがとうございます、ルーカス様」
穏やかな表情を浮かべ、お茶を差し出してくれたルーカス様。もしも私のせいで、彼に負担をかけてしまったら。
私のせいで、叔父様や叔母様の立場が悪くなってしまったら…
この国に来て、本当に幸せだった。叔父様や叔母様、ルーカス様が沢山の幸せと愛情を与えてくれた。
それに友人も出来た。これから沢山友人たちとお話をして、お茶をして…そう思っていた。せっかく私の友達になって下さった彼女たちにも、私のせいで迷惑をかけたら…
考えれば考えるほど、申し訳なく思ってしまう。
これから私は、一体どうすればいいのだろう…




