第84話:愚かな自分【その9】~ジョージ視点~
「メリンダ、なんてことを言うんだ!殿下、本当に申し訳ございません。ほら、メリンダも謝れ」
フンっとあちらの方を向いているメリンダの頭を押さえ、必死に頭を下げるファッショレ侯爵。
「離してください、お父様。だって本当の事でしょう。そもそも、あんなみんなに嫌われている女の為に、どうして私が修道院に入らないといけないのよ!あんな女から王妃の座を奪おうが、誰にも迷惑をかけていないじゃない。何がマレリス王国で幸せに暮らしているよ!自分で言ったけれど、なんだか腹が立ってきたわ。
あんな女、叔母様からも嫌われて、マレリス王国でも不幸になればいいのよ。そうよ、どうして私があんな女の為に、納得いかなわ!あの女さえいなければ!」
「メリンダ、いい加減にしなさい。サリー嬢に怒りの矛先を向けるだなんて、恥ずかしくないのか!お前が最初に言った通り、きっとサリー嬢は、叔母上の愛情を一身に受けて、今幸せに暮らしている。
彼女には幸せになる権利があるんだ!メリンダがサリー嬢を傷つけた分、サリー嬢には誰よりも幸せになってもらいたい。私はそう願っている。さあ、帰るぞ。すぐに修道院を手配しないと。この国で一番厳しい修道院がいいだろう。
早速この国の最北端にある修道院に連絡を入れないと。きっとすぐに受け入れてくれるだろう。
殿下、数々のご無礼、どうかお許しください。もう二度と、メリンダは殿下の前に現れる事はございませんので。それでは失礼いたします」
「ちょっと、どうして私が最北端の修道院に行かないといけないのよ。絶対に嫌よ。ジョージ様もサリー様も、絶対に許さないのだから。覚えていなさい!絶対に地獄に叩き落してやるのだから!!!」
侯爵に引きずられながら、退場していくメリンダ嬢。全く正反対な事を言って怒って、本当に最後まで愚かな女だ。だが、あれがメリンダ嬢の本性だったのだろう…
翌日、メリンダ嬢はこの国の最北端にある修道院に送られたと聞いた。これでもう、メリンダ嬢は二度と王都に戻ってくることはない。
きっとあの女の事だから、最後まで抵抗したのだろうな…あんな女に騙されるだなんて…
ふとあの女の昨日の顔が、脳裏に浮かんだ。それと同時に
“命を削って助けたのに、あっさり他の女にうつつを抜かす恩知らずの尻軽王太子の事なんて忘れてね!”
あの言葉も蘇る。メリンダ嬢の言う通りだ、きっとサリーは今頃、恩知らずな僕の事なんて忘れて、新しい家族と共に幸せに暮らしているはずだ。きっともう、僕の顔なんて見たくもないだろうし、思い出したくもないだろう。
だが…
どうしてもサリーを諦める事なんてできない。たとえサリーが僕を嫌い、拒絶したとしても、一度会ってきちんと謝りたい。
悩んだ末、マレリス王国の王太子殿下に手紙を送った。その後何度も王太子殿下とやり取りを行い、やっと今日、マレリス王国に来ることが出来たのだ。
「今日のサリー、とても穏やかな表情をしていた。ガリガリに痩せていた体も、随分令嬢らしくなった。あの頃と同じく、優しい眼差しを向けてくれた。あんなに酷い事をしたのに、サリーは…君はどこまでも優しいのだね」
そっと鞄からあるものを取り出した。幼い頃、サリーと一緒に撮った写真だ。あの頃よりもずっと美しくなったサリー。やっぱり僕は、サリーの事を諦めたくはない。
とはいえ、サリーの叔父と義理の兄が、サリーを完全にガードしているし。そもそも義理の兄にあたるルーカス殿とサリーは、一体どのような関係なのだろう。
ライモンド殿下の話では、ルーカス殿も僕と同じ、魔力が安定せずに命の危機に瀕していたらしい。そんな状況の中、サリーが命を懸けて魔力を提供したと言っていた。
サリーは本当に優しい子だ。2人以上に魔力を提供する事が、どれほど危険な事か。グラッサム公爵や夫人はもちろん、ルーカス殿も魔力の提供を止めるように訴える中、サリーは魔力の提供をしたと聞いた。
もしかしてサリーは、ルーカス殿が好きなのかな?だから魔力の提供をしたのかな?ルーカス殿もきっと、そこまでされたらサリーの事を…
いいや、それならすぐにでも婚約を発表するはずだ。2人は義兄妹とはいえ、血は繋がっていない。結婚も普通に出来るはずだ。それなのに婚約を発表していないという事は!
大丈夫だ、まだ僕にもきっと、チャンスがあるはずだ。
ここまで来てサリーの顔を見たら、やはり諦めるなんてできない。やれることは何でもやって、サリーの叔父上や叔母上にも認められる様に頑張ろう。
そしていつか、サリーを故郷に連れて帰りたい。あの子はもともと、ミレンズ王国の公爵令嬢なのだから…
長くなりましたが、次回からサリー視点に戻ります
よろしくお願いいたします




