第81話:愚かな自分【その6】~ジョージ視点~
翌日、ちょうど侯爵以上が出席する貴族会議へと向かった。貴族会議が始まると、早速貴族の1人が口を開く。
「殿下、メリンダ嬢を本当に殿下の婚約者にされるおつもりですか?メリンダ嬢の王妃教育は、ろくに進んでいないどころか、教育係がすぐに辞めていく事態と聞いております。
そんな女性が王妃になったら、この国は滅茶苦茶になってしまう」
「殿下、いい加減目を覚ましてください。メリンダ嬢では、王妃は務まりません。そもそも、彼女が王妃になるのでしたら、我々はとても王族に忠誠など誓えませんぞ」
「「「「私もです」」」」」
貴族たちが、かなり興奮気味に詰め寄って来る。
「皆様の気持ちは分かりました。皆様のおっしゃる通り、メリンダ嬢は王妃の器ではありません。そもそも、メリンダ嬢は王妃になる資格がなかったのです。本人が最初に、僕の婚約者候補になる事を拒んだのですから…」
「殿下…もしかしてサリー様が、あなた様に魔力を提供していたことを…」
「はい、父から聞きました。サリーは4年もの間、僕に魔力を提供してくれた。それなのに僕は、本来婚約者候補でもあるサリーを傷つけ、あろう事かメリンダ嬢にうつつを抜かした愚か者です」
そう叫ぶと、1人の男性の前へとやって来た。サリーの父、ローレティエン公爵の元だ。
「ローレティエン公爵、サリーの件、本当に申し訳ございませんでした。僕が愚かだったばかりに、サリーを傷つけ、国から追い出す形になってしまいました。僕はメリンダ嬢と婚約をするつもりはありません。
もし…もし許されるのでしたら、もう一度サリーと」
婚約させてほしい、そう伝えたかった。
だが…
「殿下、もう私はサリーの父親ではないのです。それから、私への謝罪は不要です。私はサリーを散々傷つけ、苦しめ、命すら奪おうとした男です。殿下以上に、酷い事をしたのです。
その結果、サリーは絶望し、叔母でもあるアマリリスとの生活を選んだのです。きっとサリーは、もう二度とこの地に足を踏み入れる事はないでしょう。
今サリーは、愚かな父から離れられて、叔母に愛されながら幸せに暮らしているはずです。どうか…もうサリーに関わらないであげてください。それが私たちにできる、サリーへの唯一の償いなのですから…
とはいえ、殿下がメリンダ嬢との婚約の意思がないとなれば、殿下の新しい婚約者探しをしなければなりませんね。殿下は既に、魔力が安定しておりますので、今ならきっと、婚約者もすぐに見つかるのではないですか?」
切なそうに呟く公爵。もしかして公爵も、サリーの事で後悔しているのか?いつもサリーの事を、親の仇でも見る様な目で睨んでいたらあの公爵がか?信じられない。
とはいえ、公爵が言っている事も一理ある。確かにサリーにとってこの国は、辛い事ばかりだっただろう。もう二度と、戻って来たくないと思っているかもしれない。
だが…
「ローレティエン公爵殿、本当にサリー嬢はもう戻らないのですか?申し訳ございませんが、娘はたとえ殿下への魔力提供がなくても、王妃になるつもりはないと申しております。
サリー嬢が命を懸けて魔力を提供して助けた殿下と婚約なんて、とてもできないと」
「家も同じことを申しておりました。そうなると、他国から王女を迎え入れる方向で進めるのがスムーズかと…」
「確かに他国の王女でしたら、きっとスムーズに受け入れられるでしょう。早速よさそうな王女を探してみましょう」
なぜか皆が、他国の王女を進め出したのだ。
「待って下さい、確かに今の状況を考えると、他国の王女を迎え入れるのが得策でしょう。ですが僕は…一度しっかりとサリーと話をしたいのです。もしサリーが許してくれるのなら、今度は僕が命を懸けてでもサリーを幸せにしたい。
だからどうか、少し時間をくださいませんか?もちろん、サリーに拒否される様なことがあれば、その時は諦めますから。どうか少しだけ、お時間を…」
「殿下、気持ちは有難いのですが、サリーはこの国に絶望して出て行ったのです。きっともう、この国には戻るつもりはないでしょう。ですから、どうか…もうサリーの事は、そうっとしておいてあげてくださいませんか?お願いします」
すっと立ち上がったローレティエン公爵が、深々と僕に頭を下げたのだ。この男が、サリーの為に頭を下げるだなんて…
「ローレティエン公爵の言う通りだ。ジョージ、サリー嬢の事はもう、諦めなさい。サリー嬢は今、マレリス王国で叔母上の愛情を一身に受けながら、幸せに暮らしていると聞く。どうかもう、私たちの都合で彼女を振り回すのは止めよう。
とにかく、まずは他国の王女をピックアップするところから始めよう。ファッショレ侯爵も、それで問題ないな?」
父上がずっとうつむいて黙っているメリンダ嬢の父親に向かって問いかけたのだ。




