↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたに全てを捧げてきたけれど…これからは自分の為に生きます  作者: Karamimi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/134

第67話:今はまだ…

「お兄様、このブローチを届けて下さり、ありがとうございます。正直まだ、お父様に会う勇気はありません。ですが…あのお父様が、私の誕生を少なからず楽しみにして下さっていたと知れて、なんだか胸の奥が熱くなりましたわ。このブローチは、大切に持っておりますね」


 そっとブローチを握りしめた。


「あんなにも酷い扱いを受けていたのに、父上からのブローチを受け取るだなんて…サリー、これも受け取ってもらえるかな?」


 お兄様が使用人に指示をすると、何やらいくつかドレスが運ばれてきたのだ。大人用のドレスと小さな子が着る様な幼女用のドレスが、それぞれ同じデザインで準備されていた。さらにアクセサリー箱も一緒に運ばれてくる。


「これは母上が生前、準備したドレスだ。サリーが生まれたら、同じデザインのドレスを着る事を楽しみにしていたみたいだからね。まさかこんなに沢山、ドレスを準備していただなんて。その上、髪飾りやアクセサリーまで、お揃いで準備していた様だよ。


 このドレスやアクセサリーは、元々サリーが身に付ける予定だったものだからね。どうしてもサリーに届けたくて、一緒に持ってきたのだよ。サリー、母上が君の為に準備したドレスとアクセサリー、受け取ってくれるかい?」


「もちろんですわ。お兄様、私の為にお母様が準備してくださったドレスを持ってきてくださり、ありがとうございます」


 早速ドレスを手に取ってみる。同じデザインなのに、大人用と幼女用のドレスでは、明らかに肌触りが違った。幼女用のドレスは、絹で出来ているのかとても肌触りがいい。


 きっと私の肌の事も考えて、素材にもこだわってくれたのだろう。あちらこちらから、お母様の愛情が感じられる。


 お母様に、会いたい…


 決して叶う事のない願い、でも、願わずにはいられないのだ。


 誰よりも私を心配し、見えないところで見守っていてくれたお母様。そんなお母様の最期の願いを、叶えたい。


 でも…


「サリー、君はとても優しい子だ。でもね、無理をする事はないのだよ。君はすぐに無理をする癖があるからね。きっと君の母上も、もう無理をしてほしくないと願っているのではないかな。


 どうか自分の事を一番に考えて欲しいと…」


 耳元でルーカス様が呟いたのだ。どうしてルーカス様は、私が考えていることが分かるのかしら?お父様が病気になり、命の危機に瀕している事、お母様はきっと、私やお兄様、お父様の仲が改善する事を願っているという事。


 お母様の願いを叶えるために、お父様との和解を考えているということを…


 でも私は、やはりまだ、お父様を受け入れる事は出来ない。


「お兄様、私の為に色々とありがとうございました。お母様がいかに私を大切に思ってくれていたか、そして私が生まれてくることを心待ちにしていたかが、改めてよく分かりました。


 私は少なくとも、お母様に愛されていた。そして生まれてくるまでは、お父様にも…


 とはいえ、お父様が私にした仕打ちは、そう簡単に許せるものではありません。正直お父様の事を考えると、胸が苦しくなるのです。あの時の辛かった記憶が一気に蘇り、恐怖で足がすくみます。


 ですから私は、今はまだお父様にお会いする事は出来ませんわ」


 お兄様に向かって、頭を下げた。


「君が謝る必要はないよ。父上はそれだけサリーを傷つけ苦しめて来たんだ。今すぐ会えだなんて、そんな残酷な事は言わないよ。そもそも、俺に会ってくれただけでも奇跡だと思っているし。サリー、父上の事は、俺に任せてくれ。


 君はどうか、自分の幸せだけを考えてほしい。サリーには、誰よりも幸せになる権利があるのだから」


 そう言うと、お兄様はスッと立ち上がった。そしてなぜかルーカス様を真っすぐ見つめたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。