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あなたに全てを捧げてきたけれど…これからは自分の為に生きます  作者: Karamimi


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第62話:まだ時間はかかるけれど…

 再びお母様の写真に目をやった。私達幼い兄妹を見つめるお母様、さっきは嬉しそうだったけれど、今はなんだか悲しそうだ。きっとお母様は、私とお兄様が仲たがいをしている事を、気にしているのだろう。


「サレオ、あなたの気持ちは分かったわ。可哀そうに、こんなに追い詰められて。きっと天国のマリアも、あなたの事を心配しているわ。さあ、今日はもう遅いし、我が家でゆっくり休みなさい」


「いいえ、俺はもう帰ります。サリーの元気そうな姿を見る事が出来ましたし…サリー、これを君に。母上の日記だ。あの後、父上と一緒に、母上の部屋に入ったんだ。そこで見つけたんだ。君にもこの日記を見る権利があるからね。


 それから…ルーカス殿と言ったね。サリーを支えてくれて、ありがとう。サリーが今幸せそうなのは、きっと君の支えがあったからだろう。サリーにもやっと、支えてくれる男性が出来たのだね。俺が言うのも何だが、サリーは今まで本当に苦労してきた。


 だからどうか、サリーを幸せにしてやってください。お願いします」


 何を思ったのか、お兄様がルーカス様に頭を下げたのだ。お兄様が、私の為に…


「頭をあげて下さい。もちろん、サリーは僕が必ず守ります。ですから、ご安心を」


 なぜか満足そうなルーカス様。お兄様も完全に誤解している様だ。


「それでは俺はこれで…」


「お兄様、お待ちください。今日はもう遅いです。どうかこのお屋敷に、お泊り下さい。それに…確かにお兄様には、冷たくされた事もありました。ですが、私もずっと夢を見ておりました。


 いつか…いつかお兄様が、私の方を見てくれるのではないかと。国を出た時、その様な夢も諦めました。でも…今お兄様は私と向き合おうとしてくれている。だから私も、お兄様と向き合いたいのです。ですから、もう少しだけ、ここにいてくれませんか?」


 ずっと苦手だったお兄様、謝罪されたからと言って、すぐに受け入れられる訳ではない。現に恐怖で震えが止まらない。


 でも…


 私が震えている事に気が付いたルーカス様が、そっと抱きしめてくれる。きっとルーカス様が傍にいてくれたら、この壁も乗り越えられる。そんな気がする。


「ありがとう、サリー。君は本当に優しい子だね。こんな優しい子を、俺は…」


「サレオ、もう泣かないで。今日は疲れたでしょう。今あなたの部屋を準備させたから、ゆっくり休んで。また明日、あなたの話をゆっくり聞かせてちょうだい。部屋に夕食の準備もするから、今日は私と一緒に食事をしましょう」


「それなら私も、一緒に食事をしてもいいかな?サレオの話を、ゆっくり聞きたいしな。ルーカス、サリーの事を頼んだよ」


「ええ、分かりました。サリーの事は、僕に任せて下さい」


「それじゃあ行きましょう、サレオ」


 叔母様と叔父様がお兄様を連れて、席を立った。


「叔母上、あの時俺に、またいつかマレリス王国に遊びにおいでと言って下さいましたよね。あの叔母上の言葉があったからこそ、今回来る勇気が持てたのです。叔母上、こんな愚かな俺を見捨てないでくれて、本当にありがとうございました。


 叔父上もルーカス殿も、受け入れてくれてありがとうございます。それでは一度、失礼いたします」


 お兄様が頭を下げ、叔母様たちと一緒に部屋から出ていく。叔母様はお兄様にも、優しい言葉をかけてくれていた様だ。私達兄妹に寄り添ってくれる叔母様の偉大さを、改めて痛感した。


「今日はお茶会やら君の兄上が訪ねてきたりと、色々とあって疲れただろう。君さえよければ、一緒に夕食を摂ろう。もちろん、1人で考えたいというのなら、それでも構わないよ。サリーはどっちがいい?」


「私は…ルーカス様と一緒に、食事がしたいです」


 令嬢たちに背中を押してもらったのだ、ここは素直に自分の気持ちを伝えたい、そんな思いで正直に自分の気持ちを伝えた。


「本当かい?それじゃあ、早速食事にしよう。すぐに準備をしてくれ」


「かしこまりました、ただ今準備をいたします」


 嬉しそうにルーカス様が、使用人たちに指示を出している。その後久しぶりに、ルーカス様とゆっくり食事をした。会話は今日の出来事など、他愛のないもの。それでもなんだか心が温まるのはきっと、彼が傍にいてくれるからだろう。


 本当は今、私の気持ちを伝えたい、ルーカス様の気持ちが知りたい、でも…きっと今ではない。お兄様の事が全て解決したら、その時自分の気持ちを伝えよう。


 そう決意した。


 食事が終わり、部屋へと戻ってきた。


 お兄様から手渡されたお母様の日記を手に取る。


 この日記に、何が書かれているのだろう。


 そっとページを開いたのだった。

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