第59話:突然の来客
「皆様、今日は本当にありがとうございました。とても楽しい時間、過ごすことが出来ましたわ」
「こちらこそ、とても楽しかったですわ。ぜひ次は、我が家にいらしてください」
「我が家にもぜひ。サリー様、ルーカス様の件、頑張ってくださいね。応援しておりますわ」
「ありがとうございます。はい、どう転ぶかはわかりませんが、頑張りますわ」
楽しい時間はあっという間、お開きの時間になり令嬢たちを馬車まで見送りに来ているところだ。
すっかり仲良くなり、次の約束も取り付けた。次々に馬車に乗り込む彼女たちに手を振り、お見送りをした。
「サリー、楽しい時間が過ごせたようでよかったわね」
私の元にやって来たのは、叔母様だ。
「はい、とても楽しかったです。友人とは、こんなに素敵な存在なのですね」
「そうよ、これからは令嬢として、やりたい事を目いっぱい楽しむといいわ。あなたはそれが今まで出来なかったのだから。さあ、屋敷に戻りましょう」
叔母様と2人で屋敷に戻ろうとした時だった。
1台の馬車が、我が家に入って来ようとしたところを、門番に止められている。
「あら?一体誰かしら?馬車には家紋も入っていないし。サリーは戻っていなさい。私が確認をして来るわ」
叔母様が馬車に近づこうとした時だった。中から1人の男性が降りてきたのだ。
「サレオ…どうしてサレオがここにいるの?」
「叔母上、それにサリーも…」
降りてきたのは、なんとお兄様だ。どうしてお兄様がここに?一気に体が強張る。その時だった。我が家の馬車が入って来たのだ。
どうやら叔父様とルーカス様が、帰って来た様だ。馬車が停まると同時に、ルーカス様が飛び出てきた。
「サリー、大丈夫かい?君が不安そうにしている顔が見えて。あの男性は…」
私の方に駆け寄り、抱き寄せるルーカス様。その瞬間、一気に安心感に包まれた。
「ルーカス様、彼は…」
「サレオ、君はサレオだね。どうして君がこの屋敷にいるのだい?アマリリスが呼んだのかい?」
叔父様も馬車から降りて来て、叔母様とお兄様の方に駆け寄った。
「サレオ?」
怪訝そうな顔で、ルーカス様が呟く。
「ルーカス様、彼は私の兄ですわ…」
「サリーの兄だって。どうしてそんな男が、我が家にいるんだ!もしかして、サリーを傷つけに来たのか?サリー、一旦部屋に戻ろう。大丈夫だよ、あんな男、すぐに追い払うからね。さあ、こっちにおいで」
ルーカス様に連れられ、部屋にやって来た。
「サリー、大丈夫だよ。君は僕が守るから。どういうつもりでこの国に来たのか知らないけれど、すぐに追い返すからね。とにかくサリーは、この部屋から出ないで。君たち、サリーの事を頼んだよ」
「「「「承知いたしました」」」」
使用人たちに声をかけると、ルーカス様がそのまま部屋を出て行こうとする。そんな彼の後ろ姿を、見つめた。
「お嬢様、大丈夫ですか?まさかお坊ちゃまが、この国にいらっしゃるだなんて」
「一体何をしにいらしたのかしら?とにかく、お嬢様は何も心配いりません。旦那様や奥様、ルーカスお坊ちゃまもいらっしゃいますから」
「皆、ありがとう。少し動揺していて。ハーブティをもらえるかしら?」
「かしこまりました、すぐに準備をいたします」
使用人が準備してくれたお茶を飲んだ。
それにしても、どうしてお兄様が、わざわざこちらにいらしたのかしら?お兄様は、私を憎んでいた。それなのに、どうして…
それにしてもルーカス様、迷わず私の傍に駆け寄ってきてくれた。この1週間、ルーカス様を避けて、彼を傷つけたのに。どうしてこんなに、優しいのだろう…
私はいつも、自分の事ばかり。勝手にルーカス様を好きになって、勝手に彼を避けて。ルーカス様の気持ちなんて、これっぽっちも考えずに。
こんな我が儘な女、放っておけばいいのに。
本当に自分が嫌になる。ルーカス様を諦めようと決めたのも、結局は自分が傷つくのが嫌だったから。正面からルーカス様にぶつかるのを避けた、情けない女。
そんな私を、ルーカス様はいつも受け止めて下さる。どんな時も、私の事を一番に考えて下さって。兄が来た時だって、すぐに私を安全な部屋に避難させてくれた。
いつもルーカス様は、私の事を考えて下さっている。それなのに私は…




