第57話:私の勘違い?
「皆様、何か勘違いされていらっしゃるようなので、はっきりと申し上げますわ。私とルーカス様は、そういう関係ではないのです。お披露目の日も、ルーカス様は家族でもある私を気にかけて下さっただけで。
ルーカス様は本当にお優しくて、いつも私に親切にして下さるので、変な誤解を生んでしまった様ですわ。それにルーカス様には、他に気になる令嬢がいらっしゃる様で…」
ルーカス様には、思い人がいるのだ。私と婚約するだなんて噂になっていると知ったら、きっとショックを受けるだろう。
そう思い、必死に訴えたのだが、なぜか令嬢たちは、お互いの顔を見合わせている。
「あの…サリー様、本当にサリー様は、ルーカス様が他に好きな令嬢がいらっしゃると思っていらっしゃるのですか?
サリー様は最近ミレンズ王国からいらしたのですよね。もしかして、お披露目パーティのお召し物の意味をご存じないとか?」
「ルーカス様本人に聞いたので、他に好きな人がいらっしゃるのは間違いありませんわ。あの…お召し物の意味とは、一体どういうことですか?衣装に意味などあるのですか?」
訳が分からず、首をかしげる。
「我が国では、婚約者や好意のある異性の瞳の色のドレスやスーツを着る風習があるのです。特に貴族たちが多く集まる大きなパーティでは、そういった傾向が強いのです。
サリー様はルーカス様の瞳の色でもあるオレンジを、ルーカス様はサリー様の瞳の色でもある青いスーツを着ていらしたでしょう。ですからお2人が、思い合っているとばかり…」
なんと!そんな風習があっただなんて。それじゃあ私は、あんな公の場で、ルーカス様をお慕いしていると大々的に知らせてしまっていただなんて。
恥ずかしくて顔から火がでそうだ。だから皆、勘違いしたのね。
「どうしましょう、私、その様な事とは知らずに…」
「落ち着いて下さい、サリー様。知らなかったのなら仕方がありませんわ。とはいえ、この国で生まれ育ったルーカス様が知らないはずはございませんから、ルーカス様はサリー様に好意を抱いている事は間違いないかと」
「それはありませんわ、だってルーカス様は、好きな令嬢がいると」
「サリー様、この国で青い瞳をしている女性は、あなた様以外にはグラッサム公爵夫人しかいらっしゃいませんわ。水色の髪も青い瞳も、この国では非常に珍しいのです。もしルーカス様が本当に他に好意を抱いている人がいらっしゃるのでしたら、あなた様の叔母様になると思うのですが…」
ルーカス様が、叔母様を?そんな事は、さすがに考えられないような…
「お披露目の時、ルーカス様はずっと令息たちを牽制しておりましたわ。きっとあなた様に、令息を近づけさせたくはなかったのでしょう。まるで番犬のように…」
「いつも笑顔を絶やさないルーカス様が、令息がサリー様に近づくと露骨に睨みつけていましたものね。なんだか新鮮でしたわ」
「サリー様のあの時のドレスは、サリー様自身が選ばれたのですか?ルーカス様は、サリー様がどのドレスをお召しになられるかは、ご存じなかったとか?」
「えっと…あの時は確か…このシルバーのドレスかオレンジ色かで迷っていて…それでルーカス様がたまたまいらしたので、相談したのです。そうしたらオレンジ色のドレスがいいとおっしゃって下さって。そういえばルーカス様も、私の為にオレンジ色のドレスを準備してくれていた様な…」
「やはりルーカス様は、あえてサリー様に自分の瞳の色でもあるオレンジ色のドレスを着させたのですわ。そういえばグラッサム公爵も夫人に、オレンジ色のドレスを贈っていたと聞いたことがありますわ。
この国の事をあまり知らない夫人は、知らずに贈られたドレスを着ていたと。きっとルーカス様も、外堀から埋めていこうと考えられたのでしょう」
うんうんと、他の令嬢たちもなぜか頷いている。
待って、それじゃあまるで、ルーカス様が私の事を、好きみたいじゃない。
どう考えても信じられないわ、だって私は今まで、誰からも愛されない女だったのよ。それなのに、あんなにも優しくてお美しいルーカス様が私を好きだなんて、到底思えない。
「あの…もしかしたらルーカス様は、私の事を家族として好きという意味だったのかも…」
「「「「それはあり得ませんわ」」」」
4人の声が、重なり合ったのだ。そこまではっきりと言われてしまうと、なんだかそんな様な気もしてきた。




