第56話:令嬢たちとの時間
翌日、今日もいい天気だ。ルーカス様は叔父様と一緒に、朝から領地の視察にいっている。そして私は、この国に来て初めてのお茶会会場の最終確認に来ている。
「素敵な会場ね、これなら皆様、喜んでくださるかしら?」
「ええ、皆きっと喜んでくれるわ。ミレンズ王国から、人気のお菓子も取り寄せて準備したし。サリー、今日は令嬢同士、めいっぱい楽しむのよ」
「はい、そう致しますわ」
今日はルーカス様の事は忘れて、令嬢たちと楽しもう。ただ…自国では全く友達がいなかった私が、令嬢たちをうまくもてなせるかしら?我が家はお母様がいなかった事もあり、我が家主催でお茶会を開く事はなかった。
だから、正直きちんとおもてなしが出来るか不安なのだ。
不安の中、叔母様と一緒に今日のお客様でもある令嬢たちを待つ。すると
「お久しぶりですわ、サリー様、それにグラッサム公爵夫人も。本日はお招きいただき、ありがとうございます。グラッサム公爵家のお茶会に招待して頂けるだなんて、光栄ですわ。
まあ、今日のドレスも素敵ですね。このふわりとしたドレス。それに今日は、シルバーのドレスを身に付けられているのですね。本当にお似合いですわ」
最初にやって来たのは、キレッソ公爵家のカレン様だ。相変わらず気さくな方だ。その後も次々と令嬢たちが来てくれて、お茶会スタートだ。
「公爵家のお庭、本当に素敵ですね。それにこのお菓子は?」
「はい、こちらは私の母国でもあるミレンズ王国のお菓子なのです。叔母様が私の為に取り寄せて下さって。とても美味しいので、皆様に召し上がっていただきたくて」
「まあ、こんな可愛らしいお菓子、初めて見ましたわ」
皆が嬉しそうにお菓子を口に運んでいる。気に入ってもらえるとよいのだが。
「なんて美味しいのかしら。口の中で溶けましたわ」
「本当ですわ。こんな美味しいお菓子、初めて食べました」
「喜んで頂けて良かったですわ。実は皆様が夜会で興味を持っていただいたこのドレスも、ミレンズ王国で流行していたものなのですよ」
「まあ、あの素敵なドレスもなのですか?私、サリー様のドレスがとても素敵で、今同じドレスを新調中ですの」
「私もですわ。本当に素敵なドレスですよね。王女殿下なんて、早速昨日の夜会でサリー様と同じドレスを着ておられましたわ」
「まあ、王女殿下がですか!」
それは恐れ多い…
「それほどサリー様のドレスは、魅力的でしたのも。ドレスだけではありませんわ、穏やかでお綺麗でお優しい雰囲気に加え、動きひとつひとつが洗練されていて。
こんな令嬢は見た事がないくらい、魅力的なのですもの。家のお兄様なんて、完全にサリー様にノックアウトしておりましたわ」
「家の弟もですわ。夫人も初めて留学してきた時は、あまりの美しさに国中がパニックになったとお父様もおっしゃっておられましたし。そんな夫人の姪でもあるサリー様のお披露目とあって、実はお披露目前からかなり注目されておられましたのよ。
そして現れたサリー様は、夫人の若い頃にそっくりとあって、お父様まで騒いでおりましたわ」
「家の父もですわ。年甲斐もなくみっともない…でも、サリー様にはもう、ルーカス様がいらっしゃいますものね」
「ルーカス様はこの国では珍しい、魔力欠乏症に掛かっていらしたのでしょう。その病気を完治させたのも、サリー様だと聞いております。命を懸けてルーカス様を守るだなんて、素敵ですわ」
「ルーカス様って、いつも笑顔だけれど“僕に近づくな”オーラが酷かったものね。令嬢がいくらダンスに誘っても、完全拒否でしたし。それなのに先日のお披露目の場では、サリー様にべったりで。
まるで番犬の様でしたわね。あんなルーカス様、初めて見ましたわ」
「それでいつ、ルーカス様と婚約をなさるのですか?」
一気に令嬢たちの生暖かい視線を浴びた。どうしてそこで、ルーカス様のお名前が…そうか、あのお披露目でたくさんの令嬢たちが、私とルーカス様が婚約すると、勘違いされていたのだったわ。ここでしっかりと誤解を解いておかないと。




