第54話:完全に嫌われてしまった~ルーカス視点~
食後、恐る恐るサリーの部屋を訪ねた。
「サリー、昨日はその…ずっと傍に張り付いて、君が他の貴族との交流を深める場を邪魔してしまって、本当にすまなかった。言い訳になってしまうかもしれないが…その…サリーは心優しくて純粋だから、意地悪な貴族に嫌な思いをさせられないか心配で…とにかくすまなかった」
必死に頭を下げた。
「ルーカス様、頭をあげて下さい。あなた様が私を心配してずっと傍にいて下さった事、とても嬉しかったのです。今までこの様に、私の事を気にかけて下さる方がいらっしゃらなかったので。
でもそのせいで、ルーカス様にとって大切な方と過ごす時間を奪ってしまう形になってしまい…私の方こそ、申し訳ございませんでした」
そう言って、なぜかサリーが頭を下げたのだ。
「どうしてサリーが謝るのだい?悪いのは僕なのに。それに大切な人との時間って?僕はサリー以外に大切な人なんて、いないよ」
サリーは一体、何を言っているのだろう。訳が分からない。
「ルーカス様はお優しいから…私はいつも、ルーカス様に助けられてばかりで。これ以上ルーカス様に、ご迷惑をかける訳にはいかないので。どうかルーカス様も、ご自分の事だけ考えて下さい」
自分の事だけ考えてほしい?僕はいつも、自分の事しか考えていない我が儘な男なのだが…
サリーの言っている意味が、さっぱり分からない。
「申し訳ございません、やる事があるので、どうぞお引き取り願えますでしょうか」
そう言われて、部屋から追い出されてしまったのだ。
それ以降、サリーが部屋から出てこなくなってしまった。いつもは午前中、必ず中庭でお茶をしているのに…
その上、昼食も夕食もさっさと済ませて、すぐに部屋に戻ってしまう。僕がお茶に誘っても、うまくかわされてしまうのだ。
完全にサリーに嫌われてしまった。
そんな日々が1週間続いたある日。
「ルーカス?サリーのお気に入りの中庭で、何をしているの?」
いつもサリーが座っているソファに腰かけ、バラを見つめる僕に話しかけてきたのは、叔母上だ。そのまま隣に座った。
「叔母上ですか…どうやら僕は、サリーに嫌われてしまった様です。叔母上、僕はどうすればいいのでしょうか?どうすればサリーは、僕を許してくれますか?僕は…」
気が付くと涙が溢れていた。僕はただ、サリーが傍にいてくれるだけでいい。それ以外は何もいらないのに…
「ルーカス、大丈夫?サリーはね、決してあなたを嫌っている訳ではないと思うわ。それにしても、ここまで思い合っているのに、どうしてすれ違ってしまうのかしら…」
「叔母上?何か言いましたか?」
「いいえ、何でもないわ。サリーはね、ちょっと勘違いしてしまっている様なの。だから一度、きちんとサリーと話をした方がいいともうわ。そうそう、明日ね、我が家で令嬢たちを招いてお茶会をする予定なのよ。
サリーが令嬢たちと一度話をしたいと言って、実現したお茶会よ。あの子は狭い世界で生きていたから、今自分の置かれている状況を知るにはいい機会だと思ったの」
「明日ですって、明日は叔父上と視察が…そうか、邪魔者の僕がいない日に、あえてお茶会を…」
僕がいると、令嬢との時間を奪われると思ったのだろう。そこまで僕の事を、サリーは嫌っているのか…
「ルーカス、変な妄想をしてショックを受けるのはやめて。すぐにネガティブになるのだから、あなたの悪い癖よ。何度も言うけれど、サリーはあなたを嫌ってなんていないわ。とにかく明日のお茶会が終わったら、一度2人でしっかり話をしなさい。
それから、いつまでもウジウジしていないで、あなたの気持ちをきちんとサリーに伝えてあげて。あなた、サリーと婚約したいのでしょう?」
「でも、今気持ちを伝えても、迷惑なだけでは…」
「迷惑かどうかを決めるのは、サリーよ。どのみちサリーと婚約を考えているのなら、気持ちを伝えないといけないのだから」
確かに叔母上の言う通りだ。それにどうせ嫌われているのなら、せめて自分の気持ちだけでも伝えたい。
それではっきりサリーにフラれたら、気持ちも前に向くかもしれない。とはいえ、サリーが僕の気持ちを断ったことで、サリーがこの屋敷に居づらくなる事は避けないといけない。
それに何よりも、サリーをこれ以上悩ませたくはない。
と言いたいところだけれど、避けられている時点でサリーを悩ませているのは同じか。それならいっその事、腹をくくるのも悪くはない。
そこでサリーにきっぱり拒絶されたら、その時は潔く諦めよう。
次回から、サリー視点です。
よろしくお願いします。




