第53話:サリーに嫌われてしまった~ルーカス視点~
翌朝、いつも通り起き、魔力磨きに精を出す。魔力が安定した今、しっかり魔力を磨いて、サリーを守れる強い男になるためだ。
朝から汗を流した後は、湯あみを済ませてから、サリーの部屋の前にやって来た。もちろん、サリーをエスコートするためだ。
早くサリーに会いたいな。
日に日にサリーへの思いは、大きくなるばかり。今は1秒だって長く、サリーと一緒にいたいと思っている。
しばらく待っていると、サリーが部屋から出てきたのだ。
「おはよう、サリー。体調はどうだい?昨日は疲れただろう…て、どうして目が腫れているのだい?可哀そうに、もしかして何か嫌な事があったのかい?」
部屋から出てきたサリーの目が、かすかに腫れていたのだ。もしかして、泣いていたのか?なんて事だ、サリーを泣かす不届き者がいただなんて!
「おはようございます、ルーカス様。昨日はゆっくり休みましたので、元気ですわ。目は…昨日うつぶせで眠っておりましたので、少し腫れてしまった様で…」
「そうだったのだね。可哀そうに。すぐに治してあげるよ」
サリーの瞳に手を当て、魔力を込めた。この程度の治癒魔法なら、体へ負担はかからないはず。
「ルーカス様、魔法を私の為なんかに使うのは良くありませんわ」
「私なんかの為だなんて、悲しい事を言わないでくれ。君は僕にとって、大切な人なのだから」
君の為なら、僕は何だってできる。君が喜んでくれるのなら、僕は何だってやりたいと思っている。
「さあ、サリー。朝食を食べに行こう。食後はいつもの中庭で、ゆっくりお茶を飲もう。今日は天気もいいし、きっと花々も綺麗に咲いているよ」
サリーの手を取ろうとしたのだが、スッと交わされてしまった。
「ルーカス様、申し訳ございません。今日は色々とやりたい事があるので。あなた様も次期当主になるために、叔父様と一緒にお勉強をなさるのでしょう?どうか私の事は、気にしないで下さいませ」
そう言うと、サリーが足早に去って行った。
いつもは僕のお茶の誘いを、喜んで受けてくれるのに。それに手だって…もしかして、嫌われてしまったのか?
「お坊ちゃま、大丈夫ですか?しっかりしてください」
倒れそうになる僕を支える執事。
「どうしよう、サリーに嫌われてしまったかもしれない。もしサリーに嫌われたら、僕は…」
「しっかりしてください。お嬢様はお坊ちゃまの事を、嫌ってなどおりません。ただ、昨日の夜会は少し強引だったかもしれませんね」
やはり昨日の夜会で、ずっとサリーにベッタリだったのが駄目だったのか?思い返してみれば、サリーは他の貴族と話したそうにしていた。それを僕が遮ったから、僕の事を鬱陶しく感じてしまったのだろうか…
「坊ちゃま、大丈夫ですよ。きっとお嬢様はお優しいので、許してくださいます」
「そうだね、サリーは優しいから、きっと許してはくれるだろう。でも…」
僕の事を鬱陶しい男だと思われているとしたら…
「しっかりしてください。とにかく、食堂に参りましょう。皆様をお待たせするのは、よくありませんから」
執事に連れられ、食堂へと向かった。
「おはよう、ルーカス。遅かったわね。あら?少し顔色が悪いのではなくって。大丈夫?」
叔母上が心配してやってきた。
「いいえ、何でもありません。さあ、頂きましょう」
気を取り直して、食事をスタートする。
「サリー、君、オムレツが好きだよね。僕のもあげるよ」
そっとサリーの好きなオムレツを差し出したのだが…
「私は自分の分で十分ですわ。どうかルーカス様がお食べ下さい」
笑顔で拒否されてしまった。顔は笑っているが、僕の方を見てはくれない。やはりサリーは、僕の事が嫌いになってしまったのか?
「ごちそうさまでした。それでは私は、これで失礼いたしますわ」
食事が終わると、さっさと部屋に行ってしまったのだ。叔父上も叔母上も不思議そうに顔を見合わせている。
やはりサリーは、僕の事を…




