第52話:叔父上もか~ルーカス視点~
「ルーカスの気持ちも理解できる。確かにこの国の男どもは、少し馴れ馴れしいというか、フットワークが軽いというか…とはいえ、サリーは元々公爵令嬢で、自国でもたくさん社交界にも出てきているだろう。
ああ見えて芯は通っているし。何よりも、ルーカスが傍にいたらサリーが他の貴族と話が出来ないだろう。今日だって、ずっとサリーの傍にくっ付いて、サリーが他の貴族と話をするのを邪魔していただろう」
「邪魔だなんて…」
「とにかく、サリーには好きな様にさせてやろう。自国ではずっと我慢していたのだから」
僕の肩を叩く叔父上。確かにサリーは自国でずっと辛い思いをして来た。やりたい事もろくに出来ず、ずっと我慢してきたのだ。僕だって、サリーには好きな事をしてほしい。
「分かりました、サリーが望むのなら、好きな事をさせてあげましょう。ただし、令嬢同士のお茶会ならともかく、夜会に1人で参加させるのは不安です。しばらくは僕も一緒に参加しますから!」
そうはっきりと告げた。サリーにもしもの事があったら大変だ。僕がしっかりサリーを守ってあげないと!
「あなた、ルーカスに何を言っても無駄よ。それにしても、ルーカスは本当にあなたそっくりね。覚えている?私がこの国に留学してきた時の事を。あの時私に一目ぼれしたあなたは、夜会のたびにずっと私から離れなかったわよね。
私の瞳の色でもある青いスーツを毎回着て。それに自分の瞳の色でもあるオレンジのドレスをいつも贈って来ていたわ。せっかく贈ってくれたのだからとそのドレスを着ていたら、いつの間にか周りからも誤解されて。
結局私もあなたの情熱に負けて、結婚したのよ」
そう言って笑った叔母上。なんだ、叔父上も叔母上を手に入れるために、僕と同じことをしていたんじゃないか。
ジト目で叔父上を睨んだ。
「いや…私は別にその様なつもりは…」
叔父上が急に、もじもじし始めたのだ。さっきまでえらっそうな事を言っていたのに、結局これか…
「それでも私は今、とても幸せだし。私と同じように、サリーにも幸せになって欲しいと思っているわ。それにもうサリーも16歳だし。そろそろ将来を本格的に考えていかなければいけないものね」
将来を本格的に…それは僕にとっても同じ事だ。
「とにかく明日には山のような招待状が来るでしょうから、サリーと相談して参加するか決めていきましょう。さあ、ルーカスもそろそろ寝なさい。あなたも今日は久しぶりの夜会で、疲れたでしょう?
体調も悪かったから今まであまり公の場に出る事も少なかったけれど、これからはあなたも次期当主として、社交の場に積極的に顔を出さないといけないわね」
確かに僕は、魔力が不安定な事もあり、あまり公の場に出る事はなかったな…
「ええ、分かっておりますよ。サリーが出る夜会には、僕も必ず出るようにします。それでは僕はこれで、失礼いたします」
叔父上と叔母上に頭を下げ、そのまま自室へとやって来た。湯あみを済ませ、ベッドに横になった。そっと魔力を込める。
温かくて心地よい光が、手に集まる。サリーに魔力を提供してもらってから、魔力の質も変わった。温かくて柔らかな光が出るようになったのだ。きっとこれは、サリーが持つ魔力の力なのだろう。
瞳を閉じると、オレンジ色のドレスに身を包んだサリーの姿が脳裏に浮かんだ。今日のサリーは、いつも以上に美しかったな…彼女の事を考えるだけで、心の中が幸せな気持ちでいっぱいになる。
正直サリーを、あの薄汚れた貴族社会になんて出したくなかった。もちろん、いい人もいるだろう。だが大半が、我がグラッサム公爵家に近づこうという、悪しき感情を持った奴らだ。
とはいえ、今日の僕たちの姿を見た貴族たちの大半が、僕とサリーが近々婚約を結ぶと思い込んでいるだろう。さすがにあんな姿を見て、まだサリーを嫁に欲しいだなんて愚かな考えを起こす貴族などいないはず。
幸いサリーは、気になる令息はいないと言っていた。大丈夫だ、叔父上が叔母上を手に入れた様に、このまま外掘りを固めて行けば、きっと大丈夫だ。
サリーはきっと、僕の事を好きになってくれるはず。明日からは、今まで以上にサリーと一緒に過ごそう。そう心に決めて眠りについたのだった。




