第50話:封印すべき気持ち
「待って、部屋まで送るよ」
1人で部屋に向かおうとしたところ、ルーカス様も私の方にやって来た。正直今は、1人になりたい。でも、彼の気持ちを無下には出来ない。
結局部屋まで送ってもらった。
「ルーカス様、部屋まで送って下さりありがとうございます。あの…次から参加する夜会は、どうか私の事は気にせず、気になる令嬢のところに行ってくださいね。私もこの国に少しでもなれるように、色々な貴族の方とお話をしようと思っているので」
私のせいで、ルーカス様が気になる令嬢と話が出来なかったら申し訳ない。そんな思いで伝えたのだが…
「急にそんな事を言いだすだなんて、もしかけてサリーは、僕が傍にいるのが嫌だったのかい?気になる令息でもいたのかい?」
「いえ…そういう訳ではありません。ただ、私のせいでルーカス様が、気になる令嬢とお話が出来ないのではないかと…」
「そんな事を気にしていたのかい?僕はしっかり話が出来ているから、君が心配をする事ではないよ。これからも僕が傍で守るからね。それじゃあ、お休み」
笑顔でルーカス様が、去っていく。気になる令嬢と、しっかり話が出来ているのか…
部屋に入ると、メイドたちがすぐにドレスを脱がしてくれた。そして湯あみを済ませ、眠る準備をする。
布団に入っても、考える事はルーカス様が好意を抱いている令嬢の事ばかり。
ルーカス様は一体、どちらの令嬢に好意を抱いていらっしゃるのかしら?叔父様や叔母様は、知っているのかしら?
あれほどまでにお優しくて見た目も美しいルーカス様なら、きっと相手も振り向いてくれると思う。
でも…
もしルーカス様が、婚約をしたら…
“サリー”
ルーカス様が笑顔で私の名前を呼ぶ姿が、脳裏に浮かんだ。分かっている、彼は私の事をきっと、家族としてしか見ていないという事を。
分かっているが、どうしても頭が付いていかない。
ルーカス様の事だ、きっと私の気持ちを知ったら、ものすごく苦しむだろう。ルーカス様には、無駄な気苦労を絶対にかけたくはない。
大丈夫だ、私は諦める事になれている。お父様やお兄様から愛されたいという願望も、ジョージ様との幸せな未来も、全て諦めてきたのだ。今更諦める事なんて、たやすい事。
それなのに、どうして涙が止まらないのだろう。いつから私は、こんなに泣き虫になったのだろう。この国で生活をし始めて、本当に幸せで、これ以上何かを望むことは贅沢な事なのに。
それなのに私は、どこかでルーカス様との未来を望んでいる。決して叶わない未来なのに…
もし叔父様や叔母様が、私がルーカス様に好意を抱いていると知ったら、どう思うだろう。きっと困惑するだろう。叔父様や叔母様には、今まで本当によくしてもらった。返しても返しきれない程の、沢山の恩がある。
だからこそ、2人にも迷惑をかけたくはない。
私がやらなければいけない事は、ただ1つ。この気持ちを封印する事。それが私に今できる、唯一の恩返しなのだから。
これ以上、気持ちが大きくならないように、明日からルーカス様への接触は、必要最低限にとどめよう。
それから、これからは積極的に社交界の場に参加しよう。社交界の場に出れば、私にも友達が出来るかもしれないし、素敵な殿方が見つかるかもしれない。
とにかくこれ以上ルーカス様への気持ちが大きくならないように、行動しないと。
お披露目も終わったし、きっと明日には色々なお家から招待状が届くはず。お誘いいただいた招待状は自分で目を通して、積極的に参加していかないと。
泣いていても仕方がない。とにかく恩人でもある叔父様や叔母様、ルーカス様に迷惑をかけないようにすることだけを、今は考えていこう。
そう心に決めたのだった。
次回、ルーカス視点です。
よろしくお願いします。




