第48話:夜会が始まりました
しばらく4人で雑談していると、来賓の方たちが次々と入って来た。いよいよだ、なんだか緊張してきた。
「サリー、大丈夫だよ。僕がずっと傍にいるからね」
そっと私の腰に手を回したルーカス様。ルーカス様の温もりが、腰から伝わる。そうよ、私には家族がいるのだから、何も怖がる必要はないわ。
それにマナーやダンスのレッスンも沢山した。きっと大丈夫だ。背筋をしっかり伸ばした。
「グラッサム公爵、夫人、ルーカス殿、お久しぶりです。お隣にいらっしゃる方が、サリー嬢ですね。夫人の若い頃にそっくりですね」
最初に話しかけてきたのは、叔父様と同じくらいの男性と女性、それに私たちくらいの令嬢と令息だ。
「キレッソ公爵、夫人、カロイド殿、カレン嬢、ようこそ。はい、この子がサリーです。どうか仲良くしてやってください」
叔父様が私を紹介してくれた。私も挨拶をしないと。
「サリー・グラッサムです。ミレンズ王国から参りました。どうぞお見知りおきを」
令嬢らしくカーテシーを決める。
「なんて可愛らしい女性だ、青い髪をしているだなんて、まるで海の女神の様だ…」
えっ?女神?
「サリー様、私はカレンと申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます。そして16歳のお誕生日、おめでとうございます。
なんてお可愛らしい方なのでしょう。それにこのドレス、とっても素敵ですわ。こんなにふんわりしたドレス、初めて見ましたわ。中はどうなているのかしら?
このドレス、どちらのデザイナーのものですか?本当に素敵ですわ」
カレン様がものすごい勢いで、迫って来たのだ。以前ルーカス様が言っていた通り、この国の令嬢たちは積極的だ。
「カレン嬢、このドレスはデザイナーと一緒に、サリーがデザインしたものなのよ。そうよね、サリー」
すかさず叔母様が、助け舟を出してくれた。
「はい、ミレンズ王国で少し前から流行っておりましたので、それを取り入れてみましたの。マレリス王国でも受け入れていただいて、嬉しいですわ」
「まあ、そうだったのですね。なんて素敵なのかしら?ドレス、触らせてもらってもいいかしら?」
「ええ、もちろん…」
「カレン嬢、申し訳ないが、まだ他の貴族への挨拶が残っているので、また後にして頂けますか?」
ルーカス様がグイッと私を引き寄せて、カレン様にそう伝えたのだ。
「まあ…そう言う事でしたのね。申し訳ございません、私ったら全く気が付かなくて。サリー様、また後でお話をしましょうね。それではこれで」
なぜかカレン様が訳の分からない事を呟き、笑顔で手を振っている。その隣で、がっくり肩を落としているカロイド様の姿も。カロイド様、どうしたのかしら?
その後も次々と貴族たちに挨拶をしていく。令嬢も令息も皆積極的に話し掛けてくれる。特に令嬢たちは、私のドレスに興味がある様で、目を輝かせていた。
ただ、なぜか話が盛り上がろうとするところで、いつもルーカス様からストップがかかるのだ。もう少し皆様とお話をしたいのだが、なんだかご機嫌の悪いルーカス様に、その事を伝えづらい。
チラリとルーカス様の方を見ると、にっこりとほほ笑んでこちらを見ていた。ただ、目が笑っていない。やはり怒っている様だ。
私、何か粗相をしてしまったかしら?一応この国のマナーについては頭に叩き込んできたのだけれど、気が付かないところで、マナー違反をしてしまったのかしら?
「あの…ルーカス様、私、何か粗相をいたしましたか?」
恐る恐るルーカス様に問いかけた。
「サリー、あなたの振る舞いは完璧だったわよ。さすが私の姪だわ。ただ…ルーカスにとっては色々と面白くない事が多いのよ。そうよね、ルーカス」
面白くない事?叔母様が言っていることが、イマイチよくわからない。
「そうだね、サリーは令嬢として完璧だったよ。ただ…いいや、何でもない。ある程度挨拶も終わったし、一緒にダンスを踊ろう。今日の為に、沢山練習をしたしね」
「ダンスですか!はい、踊りましょう。」
ルーカス様と一緒に、ホールの真ん中に出た。そして音楽に合わせて踊り出す。
「ルーカス様もサリー様も、息がぴったりですわね。とてもお似合いですわ」
「若い頃の公爵と夫人を見ている様だ。本当にお似合いだな」
有難い事に、あちこちからお褒めの言葉が聞こえてくる。こんな風に皆に認めてもらえるだなんて。




