第40話:生きていました
“サリー、私の可愛いサリー”
この声は、叔母様?ゆっくり瞼をあげる。
目の前に飛び込んできたのは、温かい光に包まれた世界だ。そして叔母様そっくりの女性が立っていた。この人はきっと!
「お母様、私のお母様ですよね。お母様がいらっしゃるという事は、私は…」
どうやら命を落としてしまったようだ。叔父様と叔母様、悲しんでいないかしら?ルーカス様は、ご自分を責めていないかしら?
でも、後悔はない。大切な人を守れたのだから。
“サリー、あなたはまだ生きているわ。さあ、あなたを待つ大切な人の元へ戻りなさい。それから、アマリリスに伝えて。”サリーを守ってくれて、ありがとう“と。
サリー、私のせいで辛い思いを沢山させてごめんなさい。それでも私は、あなたを愛しているわ。私はこれからも、ずっとあなたの傍にいるから“
そう呟くと、お母様が急に光り出したのだ。
「待って下さい、お母様。私もお母様が大好きですわ。私を陰でずっと守って下さり、ありがとうございます。必ず幸せになります。ですから…」
“ありがとう、サリー。私の愛おしい子…”
「待って、お母様、まだ話したいことが…」
次の瞬間、ものすごい光に包まれたのだ。その瞬間、ぱちりと目を覚ました。
「ここは…」
目の前には、見慣れた天井が。さっきのは、夢?
「サリー、やっと目覚めたのだね。良かった。すぐに医者を呼んできてくれ」
「ルーカス様…」
視界に入って来たのは、ルーカス様だ。顔色が悪く、目の下にはクマが出来ていた。
「ルーカス様、どうしてそんなに体調が悪そうなのですか?もしかして、また魔力が欠乏…」
「いいや、もう完全に魔力が安定したよ。君の魔力のお陰でね。それよりもサリー、どうしてあの時、あんな無理をしたのだい?
一歩間違えたら、君だって命がなかったのだよ。どうか…どうかもう、あんな無茶はしないでほしい。二度と魔力の提供なんて、してはいけないよ!分かったね」
ルーカス様の瞳から、涙が溢れている。
「ごめんなさい、私…ただ、ルーカス様を助けたくて。ルーカス様は初めて会った時から、私にとても親切にして下さったから」
とっさに体が動いたのだ。とはいえ、そのせいでルーカス様には、逆に気を使わせてしまったかもしれない。
「すまない、怒っている訳ではないのだよ。君のお陰で、僕の命が助かったのは事実だ。その点は、非常に感謝している。ただ…君にはもう二度と、あんな苦しみを味わってほしくないんだ。
だからどうか、約束してほしい。二度と魔力を提供しないと!」
真っすぐルーカス様が私を見つめる。
「はい、約束いたしますわ。もう二度と、誰にも魔力を提供しません」
とはいえ、もうすぐ私も16歳になる。そうなれば、もう魔力の提供は物理的に出来なくなるだろう。
「約束だよ。破ったら承知しないから」
次の瞬間、ルーカス様に強く抱きしめられたのだ。ちょっとまって、こんな風に歳の近い男性に抱きしめられたのは、初めてだ。一気に心臓の音が、激しくなる。
「ルーカス様、落ち着いて下さい」
いくら私が令嬢っぽくないからと言って、こんな風に抱きしめられるだなんて。心臓が持たない。必死に押し返そうとするのだが、この人、以外と力が強く、びくとも動かない。
「ルーカス、サリーが困っているよ。放してあげなさい」
「サリー、やっと目覚めたのね。良かったわ、ルーカスはあなたが意識を失ってからの10日間、ずっとあなたの傍にいたのよ。夜もほとんど眠らず、食事もほとんど摂らずにね。そのせいでルーカスまで倒れてしまわないか、心配していたのだから」
やって来たのは、叔父様と叔母様だ。
まさかルーカス様が、ずっと傍にいて下さっていただなんて。それも10日もの間。
「ルーカス様、私…」
「サリーは僕のせいで意識を失ったのだから、呑気に寝て好きに食べるだなんて出来ないよ。サリー、本当に目覚めてよかった」
再びルーカス様に抱きしめられた。だから心臓が持たないから、止めてほしい。
それにしても、ルーカス様はこんな人だったかしら?




