第39話:愛おしい子~ルーカス視点~
その痛みは、治まるどころかどんどん酷くなるばかり。きっともうすぐ、僕は命を落とす。とにかくサリーの事を、2人に伝えないと。
それでも藁をもすがる思いで、もう一度いつも飲んでいる薬を飲んだ。だが…やはり全く効かない。
心配して僕の部屋にやって来た2人に、必死に訴えようとしたのだが、既に話せる状態ではなかった。
使用人たちも続々と僕の部屋に集まって来る。叔母上の計らいで、サリーは部屋から出ない様に、使用人には指示を出した様で、サリーの姿はここにはない。
“叔父上…叔母上…僕はもう…”
きっともう僕は助からない。もう覚悟は出来ている。だからどうかもう…
そう言いたいが、言葉にならない。
その間も、叔母上が必死に医者に訴えている。だが、薬が効かない以上、もうどうしようもないのだろう。医者も困り果てていた。
そんな中、サリーが現れたのだ。どうしてサリーが、ここに?叔父上も叔母上も同じ事を思ったのだろう。
叔母上がすかさずサリーを追い出そうとしているが、逆に僕の方に近づいてきたのだ。
いつもニコニコとしているサリーが、今日はやけに真剣な表情をしている。嫌な予感がする。
するとすっと僕に向かって、手をかざした。何のためらいもなく…
どうやら魔力を提供しようとしているのだろう。彼女は既に自国で、4年もの間王太子に魔力を提供してきた。その副作用からなのか、未だにまだ魔力が完全ではない。それなのにためらいもなく、僕に魔力を提供するつもりなのか?そんな事をしたら、君は…
叔母上がすぐにサリーを止めた。頼む、このままサリーを外に出してくれ。僕はサリーの命を奪ってまで、生きたくなんてない。もう僕は、十分すぎるほど叔父上や叔母上から愛情をもらった。
今度はサリーの番なんだ!
叔父上も僕も、必死に止める。
だがサリーの意思は固かった。僕たちの意見も聞かず、一気に魔力を放出したのだ。激痛からかうめき声をあげ、吐血するサリーを見たら、胸が張り裂けそうになる。だが僕の気持ちとは裏腹に、体はどんどん軽くなっていく。
そして温かく柔らかな光が体全体を包み込んだ。これがサリーの魔力、なんて心地の良い魔力なんだ…
ふとサリーの方を見ると、僕に向かってにっこり微笑んだのだ。そしてそのまま、意識を飛ばしてしまった。
*****
再びベッドに眠るサリーを見つめる。
そんな彼女の髪をひとふさとり、口づけをした。
「サリー、君が与えてくれたこの命、これからは君の為に使うよ。だからどうか、早く目覚めてくれ。愛おしいサリー」
この1ヶ月、僕も幸せだったよ。自国で想像を絶する様な辛い経験をしてきたサリー。それでも性格が曲がることなく、素直で真っすぐな君に、僕はきっと惹かれていたのだろう。
正直言うと、サリーに魔力を提供して欲しくはなかった。こんなに苦しい思いをして欲しくなかった。
だが…
サリーのお陰で僕は、未来への切符を手に入れたのだ。本当は与えられることのなかった未来、だからこそ、これからは君の為に生きていく。
「お坊ちゃま、そろそろお部屋にお戻りください。お嬢様はもう、大丈夫ですので。あなた様だって、病み上がりなのですから。それに一度、医師に診察をしてもらいましょう」
僕の元にやって来た執事。
「僕はもうすっかり元気になったよ。医師の診察など不要だ。それに、僕のせいでサリーはこうなったのだよ。万が一サリーの容態が急変したら大変だからね」
「ですが…」
「僕はここから離れるつもりはない!どうしても診察をというのなら、明日にしてくれるかい?」
「…承知いたしました。ですが、どうかご無理をなさらない様に」
そう言うと、執事は出て行った。
ご無理か…無理をしたのは、サリーだ。
サリー、僕がずっと傍にいる。だからどうか、早く目覚めてくれ。ずっと待っているから…
長くなりましたが、次回からサリー視点に戻ります。
よろしくお願いします。




