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あなたに全てを捧げてきたけれど…これからは自分の為に生きます  作者: Karamimi


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第38話:覚悟は出来ています~ルーカス視点~

 “お帰りさないませ、叔父様、ルーカス様。あの…ルーカス様、これ”


 サリーがやって来たのだ、そして何やらハンカチを渡してきた。よく見ると、綺麗に刺繍が施されている。


 “昨日ルーカス様に、1日かけてお屋敷を案内していただいたので、ささやかながらお礼です。いらなかったら捨てて下さって構いません”


 少し不安そうな顔をしているサリー。なぜだろう、この子の顔を見ると、元気が出てくる。


 “ありがとう、大切に使うよ”


 そう言って受け取ると、ぱぁぁぁッと明るくなったのだ。こんなに分かりやすい子、初めて見た。なんだか笑いがこみ上げてきた。


 “よかったわね、サリー。ルーカスが喜んでくれるか、ずっと心配していたのよ”


 そう言って叔母上も笑った。きっと3人だったら、空気が重苦しいものになっていただろう。だが、サリーがいてくれたお陰で、なんだか一気にその場の空気が明るくなった。


 その後部屋に戻り、早速処方された薬を飲んだ。ただ、副反応が酷く、酷い頭痛と吐き気に襲われ、その日は一晩中うなされ続けた。


 それでもなんとか1週間薬を飲み続けた。だが…


 “魔力量が回復していないですね…とにかく、他の方法を探しましょう”


 医者にそう言われてしまったのだ。どうやら僕には、この薬は合わなかった様だ。叔母上はショックで泣き叫び、叔父上は必死に医者に訴えている。


 その後も色々な薬を試すが、どれも僕には合わなかった。


 ああ…僕はもうすぐ命を落とすんだ…なんだかそんな気がした。叔母上、泣かないで。叔父上、謝らないで。僕はこの家の家族で、本当に幸せだった。2人の子供として育ったかけがえのない時間は、僕に一生分の幸せを与えてくれたのだ。


 でも…


 もっと叔父王や叔母上と一緒にいたかった。2人に親孝行をしたかった。そんな思いが、溢れ出す。


 せめて僕がいなくなっても、叔父上と叔母上が笑顔で過ごしてくれたら…それに、新しく家族になったサリーも。あの子は優しい子だ、もし僕が亡くなったと知ったら…それも魔力欠乏症で…きっと自分を責め、後悔するだろう。


 絶対にこの病気を、サリーに知られてはいけない。彼女はずっと、苦しんできたんだ。だからこそ、幸せにならないといけないんだ。


 だが…


 無意識にサリーがいるであろう中庭へと向かった。今日も嬉しそうにバラを眺めながら、お茶を飲んでいる。なぜだろう、サリーの笑顔を見ていると、胸の奥が温かいもので包まれるのだ。


 もう僕には、未来は来ないかもしれない。それでもサリーといるときは、来ないはずの未来の話をしてしまうのだ。僕はサリーのお披露目の日まで、生きていられるかな?もし生きて居られたら、サリーの傍に寄り添って、彼女を悪い奴から守ってやりたいな。


 でも…僕はもうすぐ死ぬ。それなのに、一体何を考えているのだろう。彼女といると、つい自分の病気の事を忘れてしまうのだ。


 とにかく彼女の中に、僕の存在を極力残してはいけない。距離を取らないといけないのに…頭では分かっているが、どうしても傍に寄って行ってしまうのだ。これは僕の本能なのか?


 僕がサリーの元に行くと、嬉しそうに笑いかけてくれる。君が来ることを密かに拒み、自分の事しか考えていなかった男を、純粋に慕ってくれる。こんないい子を、僕は拒もうとした。


 その罰が当たったのかもしれない。


 どうかこの子だけは、僕の病気の事を知らずに、僕がいなくなっても悲しむことなく生きて行ってほしい。だからこそ、あえて距離を取る様な態度をとり続けている。未だに彼女の前では、彼女の名前も呼んでいない。


 そう、僕の心の中は理性と本能が戦っているのだ。とにかくこのまま、サリーにはずっと笑っていてほしい。


 その為にはどうすればいいのだろう。そうだ、僕が亡くなったら、サリーにはしばらく黙っていてほしいと、叔父上と叔母上に伝えよう。急遽長期間留学に行く事になったとでも、話してもらえば問題ないだろう。


 そして3年くらい経ったら、本当の事を話してもらおう。とにかく今は、サリーを悲しませたくない。早速その提案をしようとしたのだが、その日の昼、一気に体調を崩してしまったのだ。


 今までに感じた事のない苦しみが、僕の体を襲った。もうダメだ、僕はもう…

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