第37話:また始まった…~ルーカス視点~
翌日、いつも以上に早く目覚めてしまった。サリーはちゃんと眠れただろうか?ミレンズ王国より南にあるマレリス王国は、温暖な気候だ。空調設備が付いているとはいえ、熱くて寝られなかったなんて事は、なかったかな?
て、何を考えているのだろう。
もうサリーとは、距離を置くと決めたのに。
そう思い、距離をとろうとしたのだが、ついサリーが気になってしまう。そんなサリーは朝食の時間、目を輝かせて料理を頬張っていた。
昨日の宴でも、料理をとても美味しそうに食べていた。あんなに目を輝かせて料理を食べるだなんて、普段一体どんなものを食べていたのだろう…それに、僕が少し優しくしただけで、涙を流して喜んでいた。
あの程度の親切で、あんなに喜ぶだなんて…
サリーの事を考えると、心臓が握りつぶされる様な痛みに襲われる。
気が付くと、サリーの部屋の前まで来ていた。すると、タイミングよくサリーが出てきたのだ。僕の顔を見ると、嬉しそうに駆け寄ってきたのだ。
僕なんかの顔を見て、嬉しそうにするだなんて…とはいえ、なんだか僕も嬉しい。本当は距離を置きたいのに、気が付くとつい世話を焼いてしまう。
この日も屋敷に来たばかりのサリーの為に、屋敷中を案内して回った。ちょっとしたことでも、本当に嬉しそうだ。だが、サリーはガリガリで顔色も悪い。体に負担がかからない様に、休憩を挟みながら案内していく。
この子は自分から疲れたとは言わない、きっと我慢しているのだろう。なんだか昔の自分を見ている様で、どうしても放っておけないのだ。いつからこんなに世話焼きになったのだろう、そう自分でも呆れてしまうほど、彼女の事が気になるのだ。
叔母上にはあんな事を言ったけれど、そもそも彼女は、戸籍上僕の妹だ。妹を気遣うのは悪い事ではない。
僕を救ってくれた叔父上や叔母上は、きっと僕とサリーが仲良くする事を望んでいるだろう。それなら、もう彼女を受け入れよう。
そう腹をくくったのだが…
その日の夜、いつもの息苦しさで目を覚ました。まただ…また始まった、もう16歳になったのに、どうしておさまらないのだろう。16歳になれば、魔力は安定するというのに。やはり、薬ではダメなのだろうか。
再び魔力が不足し始めたのだ。すぐに薬を服用する。薬を飲めば、酷い眠気とだるさはあるものの、すぐに体調は戻るはず…
だが、なぜか薬を飲んでも、息苦しさはあまり改善されない。すぐに医者を呼んだ。すると…
“どうやら坊ちゃまの年齢的に、薬が効かなくなり始めているのかもしれません。とにかく、一度精密検査を行いましょう”
そう医者に言われたのだ。翌日、叔父上と一緒に、貴族病院へと向かった。本当な屋敷に医者を呼んでもよかったのだが、そんな事をしたらサリーが心配する。そう思い、叔父上に頼んで病院に行く事にしたのだ。
その結果
“やはり薬が効きにくくなっております。新しい薬を処方しますので、そちらを飲んでください。それと、早急に魔力提供者を見つける事も進めて下さい。このままだと、ルーカス様のお命も危ないです”
そう医者に宣告された。
“そんな…何とかならないのですか?ルーカスはまだ、16歳なのです。それに魔力提供者だって、金をつめば何とかなるものでもない。金はいくらでも出す、だから何とかしてくれ”
叔父上が必死に医者に縋りついている。僕の魔力が安定しないせいで…いいや、もうそんな風に考えるのは止めよう。そう決めたのだから。
“分かりました、こちらでもありとあらゆる方法を考えます。とにかく、この薬を飲んでみてください”
そう言われて、薬を渡された。この薬は、1週間かけて服用するタイプの様だ。
帰りの馬車の中
“ルーカス、大丈夫だ。お前を絶対に死なせはしないから。せっかくサリーも引き取り、我が家は賑やかになったんだ。私が必ず守るから”
“叔父上…”
悲しそうに笑う叔父上を見ていたら、胸が締め付けられそうになる。
屋敷につくと、叔母上が心配そうに駆けつけてきた。
“あなた、ルーカスはどうだったの?”
“ああ、大丈夫だよ、新しい薬を処方してもらったから”
“そう…ルーカス、大丈夫よ。きっと新しい薬が効くわ。さあ、今日はもう休んで”
叔母上に連れられ、部屋に戻ろうとした時だった。




