第29話:ルーカス様の役に立ちたい
ルーカス様がいない中、夕食を頂く。心なしか、叔父様も叔母様も元気がない様だ。2人とも、ルーカス様を心配しているのだろう。
私も心配だ。今日の午前中まで、元気だったのに…
食後、自室に戻って湯あみを済ませる。そしてハーブティを飲みながら読書をする。
ただ…
ついルーカス様の事を、考えてしまうのだ。叔母様はいつもの発作だと言っていた。薬を飲めばすぐに元気になると。でもそれならどうして、叔父様も叔母様も心配そうにしていたのかしら?
あの2人はとても優しいし、ルーカス様の事をとても大切にしている。だからルーカス様の体調が悪いとあって、心配しているのだろうとも思うのだが…
ふとお昼ご飯の時のルーカス様の姿が、脳裏に浮かんだ。とても体調が悪そうだった。もしかして…
すっと立ち上がり、ドアへと向かって歩いていく。
「お嬢様、どこに向かわれるのですか?」
「ルーカス様の体調が悪かったでしょう?だから心配で、様子を見に行こうと思って」
「ルーカス坊ちゃまは、今お部屋で眠っていらっしゃると奥様が先ほどおっしゃっておられました。容態も安定している様ですので、明日お会いになられればよろしいかと」
そう使用人が、教えてくれたのだ。容態が安定して眠っているのであれば、今私がルーカス様の部屋を訪ねると、かえって迷惑よね。
「教えてくれて、ありがとう。それじゃあ、私もそろそろ寝ようかしら。あなた達ももう、あがってちょうだい」
使用人たちに声をかけ、ベッドに入った。この国に来てから、寝る時間も随分早くなった。そして長い時間眠るようになって、体調も驚くほどよくなったのだ。やはり睡眠時間は、とても大切なのだろう。
そう思い、瞳を閉じた。
瞳を閉じた瞬間、なぜかルーカス様の苦しそうな顔が脳裏に浮かんだのだ。その姿は、魔力が欠乏して苦しんでいる、ジョージ様の姿と重なる。
どうしてこんな姿が浮かぶのかしら?ルーカス様は魔力が欠乏しているなんて話は、聞いたことがない。だけれども、なんだか胸騒ぎがする。
使用人はルーカス様は今、眠っていると言っていた。でも…
ベッドから起き上がると、そっと部屋の外に出る。どうしてもルーカス様の事が、気になるのだ。一目元気な姿を見たら、すぐに部屋に戻ろう。そんな思いで、ルーカス様の部屋へと向かうと…
「ルーカス、しっかりして。薬を飲んだのに、どうしてまだルーカスがこんなに苦しそうなの?この薬もダメだったって事なの?」
この声は、叔母様?
ルーカス様の部屋のドアが少し開いており、そこから声が漏れているのだ。そっとドアの隙間から、部屋を覗いた。そこには、苦しそうにうなされているルーカス様の姿と、涙を流してお医者様に訴えている叔母様。さらに拳を強く握りしめ、唇を噛んでいる叔父様の姿も。
これは一体、どういうことなのだろう。
「どうやらお坊ちゃまには、こちらの薬も合わなかった様です。この薬でも合わないとなれば、もう…」
「そんな…他に良い薬はないの?」
「…」
叔母様の問いかけに、黙り込んでしまったお医者様。きっともう、手の施しようがないのだろう。
苦しそうなルーカス様、間違いない。あの症状は…
「叔母様、これ以上薬を使うのは、非常に危険です。そもそも薬は一時的な改善しか期待できないうえ、副作用から体への負担が大きいのですから…」
だからこそ、我が国では薬の服用を推奨してこなかったのだ。
「サリー、どうしてあなたがここにいるの?ルーカスは大丈夫よ。ほら、早く寝なさい」
叔母様が涙をぬぐうと、私を部屋から出そうとしている。もちろん、出ていくつもりはない。そのままルーカス様に近づく。顔色が悪く、苦しそうだ。
よかった、私がまだ16歳になっていなくて…まだ間に合うわ。
そっとルーカス様に向かって、手をかざした。
「サリー、何をするつもりなの!ダメよ、あなたは散々魔力を王太子に提供してきたせいで、体はボロボロなのよ。今は回復しているように見えても、まだまだ魔力は回復していないのだから。
それに魔力の提供は、生涯1人にしかしてはいけないと決められているのよ。それは複数の人間に魔力を提供する事が、命に関わるほど危険だと言われているからなのよ。
もし今ルーカスに魔力を提供したら、サリーは…」




