第26話:ルーカス様はとてもいい人です
「もう夜も遅くなってきたし、サリーも疲れているでしょうから、そろそろお開きにしましょうか」
楽しい時間はあっという間、夜もふけってきたころ、叔母様の言葉で宴はお開きだ。こんなに楽しい宴は初めてだ、もう少し皆と一緒にいたかったな…
そんな私の気持ちに気が付いたのか、ルーカス様が
「そんな顔をしないで。明日からずっとこうやって、家族みんなで食事をするのだから。さあ、僕が部屋まで送ってあげるよ。君は今日、この屋敷に来たばかりだからね。迷子になったら大変だ。それでは叔父上、叔母上、おやすみなさい」
「おやすみなさい、叔父様、叔母様」
私もルーカス様に続いて、挨拶をする。そしてルーカス様と一緒に、自室へと向かった。
「ルーカス様、わざわざ送って下さり、ありがとうございます。こんな風に優しくして頂けるだなんて…私には実の兄が居りましたが、兄は私を嫌い、いつも睨みつけておりました。
兄にとって私は、愛する母を奪ったにっくき相手だったのです。実の兄にすら嫌われていた私を、今日出会ったばかりのルーカス様は、とても親切にして下さるので。
何だか嬉しくて。こんなにお優しい方が、私のお義兄様になって下さるだなんて、まるで夢の様ですわ。あの…私は家族からも嫌われ、婚約者にも捨てられるほどの嫌われ者です。
こんな私ですが、これからも仲良くしてくださいますか?」
ジョージ様は、最初は優しかった。でも…いつの間にか離れて行ってしまった。もしかしたら私は、人に嫌われる天才なのかもしれない。
それでも私は、この国で、叔父様や叔母様、ルーカス様の傍で生きていきたいのだ。
「可哀そうに、よほど自国で辛い目に遭って来たのだね。僕が君を嫌うことなんてないから、安心してくれ。これからも家族として、4人で仲良く暮らそう」
「本当ですか?不束者ではございますが、叔父様や叔母様、ルーカス様に嫌われない様に、精一杯努力して参ります。もし気に入らないところがあれば、すぐに教えて下さい。出来る限り直しますから」
こんなにお優しい方たちに嫌われない様に、できることは何でもしたい。
「君は何もしなくてもいいのだよ。今まで通りの君のままで。叔父上も叔母上も僕も、今のままの君を受け入れるつもりだからね」
そう言って笑ってくれた。こんな風に笑いかけてくれるだなんて。私とルーカス様は、血も繋がっていない他人。そんな私に優しい言葉をかけてくれるルーカス様に、なんだか胸の奥が熱くなり、涙が溢れだす。
「ごめんなさい…私、いつからこんなに泣き虫になったのかしら?ミレンズ王国にいた頃は、涙なんてほとんど流さなかったのに…」
そんな私の背中を、優しくルーカス様が撫でてくれる。
「ミレンズ王国では、ずっと自分の気持ちに蓋をして我慢してきたのだね。もう我慢しなくてもいいのだよ、泣きたい時は泣いたらいい。君はもう、僕たちの家族なのだから」
「ありがとうございます、ルーカス様。はい、もう我慢しません。それから、泣くのはもうこれで最後にします。だって、こんなに幸せなのに泣くなんておかしいですもの。これからはずっと、笑顔で過ごします」
「無理して笑わなくてもいいのだよ。それに泣く事は悪い事ではない。泣く事で精神が安定する事もあるからね。ほら、部屋についたよ。今日は長旅で疲れただろう。ゆっくり休んでくれ。それじゃあ、また明日」
「はい、また明日。ルーカス様。おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
笑顔で去っていくルーカス様を見送った。
部屋に戻ると湯あみをして、ベッドに入る。フカフカで温かい、それに私の心も、なんだかホカホカだ。今日はとても楽しかった。家族で過ごす時間が、こんなに楽しいだなんて、思わなかったわ。
叔父様もルーカス様もとても優しいし、素敵な人たちだ。これからは彼らと一緒に過ごせる。これから毎日、楽しくなりそうね。
何だかワクワクしてきた。
それにしても、今日は疲れた。
ゆっくり瞼を閉じると、あっという間に眠ってしまったのだった。




