第21話:初めての船の旅
王妃殿下も、叔母様も、私の事を思ってくれている。彼女たちの為にも、私はマレリス王国で心機一転、必ず幸せになってみせる。
「それでは王妃殿下、お体には十分お気を付けください。またお会いできる日を、楽しみにしておりますわ」
「サリーちゃんも、体には気を付けてね。アマリリス、サリーちゃんの事をよろしくね」
叔母様と使用人たちと一緒に、船に乗り込む。王妃殿下は、いつも私に優しく接してくれた人。
王妃殿下に見送られながら、船はゆっくりと動き出した。王妃殿下が、私たちに向かって手を振ってくれる。私も王妃殿下に向かって、手を振り返した。
あら?あれは…
ふと遠くでこちらを見つめる人物が。あれは、まさかお兄様?その奥にいるのは、お父様?そんな訳がないか。あの2人は、私をとても憎んでいた。あの2人が、私のお見送りに来るわけがない。
とはいえ…
15年間過ごしたこの国とも、今日でお別れだ。辛い事や悲しい事も多かったけれど、それでも私が生まれ育った故郷だ。なんだか名残惜しい…
「サリー、そろそろ船の中に入りましょう。潮風が強くなってきたわ。ここ数日で、随分と顔色は良くなったけれど、まだまだ魔力不足なのだから」
叔母様が私に、毛布を掛けてくれた。確かに風が冷たい。
「ありがとうございます、叔母様」
叔母様に連れられ、船の中に入っていく。さすがマレリス王国の公爵家の船。とても立派で、いくつもの部屋がある。
「ここがあなたの部屋よ。好きに使っていいわ。それから、奥には食堂やダンスホール、娯楽施設もあるの。今回は2日の船旅だけれど、長いときだと1ヶ月以上旅に出る事もあるから、飽きない様に色々な施設があるのよ」
「まあ、1ヶ月以上もですか!」
「ええ、そうよ。マレリス王国は島国だから。この船にある施設は、好きな様に使ってちょうだい。分からない事があれば、何でも聞いて」
「ありがとうございます、叔母様」
船の散策は後からするとして、まずは自分の部屋を確認する。それにしても立派な部屋だ。船の中なのに、公爵家の私の部屋に劣らないくらい、広くて豪華なのだ。もちろん、お風呂も付いているし、大きなベッドもある。
それに私の好きな本が、ぎっちり詰まった本棚もある。本を読んでいるだけで、マレリス王国に着いてしまいそうだ。
「お嬢様、馬車移動でお疲れでしょう。お茶とお菓子を準備いたしました。魔力がまだ回復していないとの事なので、どうかごゆっくりお過ごしください」
「ありがとう、早速頂くわ」
すかさず専属メイドが、お茶とお菓子を準備してくれた。私が大好きなお茶とお菓子、とても美味しい。叔母様にお世話になってから、毎日この様に好きなものを食べ、好きな様に生活をさせてもらっている。
今までは自由な時間なんて、ほとんどなかった。毎日せわしなく動いていたのだ。そのせいか、魔力の回復も遅かったが、今では十分栄養と休息が取れているお陰か、今まで以上に魔力の回復が早い。
もうすっかり元気なのだ。
「せっかくだから、ちょっと船の中を見てくるわ。叔母様が、娯楽施設があると言っていたから」
早速部屋から出て、船の散策を開始する。それにしても、船の中なのにとても広い。ここが叔母様が言っていたダンスホールね。それからここが、娯楽施設か。
「これは何かしら?」
「こちらはダーツですね。あのボードに向かって、このピンを投げるのです。ボードにはそれぞれ得点が書いてあり、一番得点が高かった人が勝ちなのです」
「まあ、それは楽しそうね。あなた達、一緒にやりましょう」
なんだかワクワクしてきた。早速使用人たちと、ダーツを楽しんでいると…
「あなた達、なんだか楽しそうね。私も混ぜてちょうだい」
やって来たのは、叔母様だ。叔母様も加わり、皆でダーツを楽しんだ。
「叔母様、どうしてそんなに強いのですか?全く歯が立たないですわ」
使用人たちとやっていた時は、勝ったり負けたりだったのに。叔母様が入ってからは、全く勝てないのだ。
「これでもダーツ歴が長いの。でも、サリーも初めてにしては上手よ。さあ、ダーツはこれくらいにして、夕ご飯にしましょう。沢山運動をしたから、お腹がすいているでしょう?」
「確かにお腹ペコペコですわ。船の上の食事は、どんなものが出てくるのでしょうか。楽しみですわ」




