第17話:愛おしいサリー~アマリリス視点~
「サリー、美味しい?たくさん食べて。あなたはただでさえ痩せているの上、体調も思わしくないのでしょう?ほら、これも食べて。明日もう一度医者に診てもらいましょうね」
夕食時、心配でついサリーの食事の世話を焼いてしまう。この子はもう、15歳だ。叔母からこんな風に世話を焼かれたら、鬱陶しく思ってしまうかしら?
そう思っていたのだが、サリーは嬉しそうな顔をしている。
「叔母様、私の事を気にかけて下さり、ありがとうございます。こんな風に私の事を気にかけてくれる人は、今まで王妃殿下とジョージ様、使用人しかいませんでしたので…血のつながった方で、私に優しくしてくださったのは、叔母様が初めてですわ。
もしお母様が生きていらしたら…こんな風に私に優しくしてくださったのかしら」
少し寂しそうに笑うサリーを、強く抱きしめた。まだ15歳の少女が、こんな事を言うだなんて。この子は今まで、どれほど辛く寂しい思いをして来たのだろう。胸が張り裂けそうになる。
「サリー、これからは私の事を本当の母親だと思って、甘えてちょうだい。私はあなたが望む事なら、何でも叶えてあげたいの。だからどうか、遠慮しないでね」
「はい、ありがとうございます。叔母様」
その後はサリーの事を沢山聞いた。好きなもの、苦手なもの、得意な事、不得意な事、私の問いかけに、少し恥ずかしそうに話してくれるサリーが、愛おしくてたまらない。私が絶対に、この子を幸せにしよう。無念の死を遂げ、未だサリーを心配しているマリアの為にも。なにより、サリーの為にも。
「それじゃあサリー、今日はゆっくり休んでちょうだい」
「はい、おやすみなさい、叔母様」
部屋に戻り、湯あみを済ますとベッドに横になった。まさかサリーが、こんな酷い仕打ちを受けていただなんて…思い返しただけで、腹が立つ。
とはいえ、今日は感情が抑えきれず、少し暴走しすぎた。私の悪い癖だわ。まだやらなければいけない事が残っているし。
そっとベッドから出ると、隣で休んでいるサリーの元へと向かった。どうやらもう、眠っている様だ。すやすやと眠るサリー、こうやって見ると、マリアや私によく似ている。私達と同じ、水色の髪。本来ならサラサラで鮮やかな髪なのに、魔力の使い過ぎで艶もなく、かなり傷んでしまっている。
明日医者に診せた後は、使用人たちに徹底的にサリーのケアを行う様に指示しないと。これからは貴族令嬢としての幸せを、目いっぱい感じてほしい。
そんな思いで部屋から出ると、私も眠りについた。
翌日
「魔力は欠乏しておりますが、このまま休めば問題ないでしょう。魔力を作る薬を出しておきますので。それから栄養のある食事を食べさせてあげてください。後は、リラックスできる環境を整えるとよいかと。睡眠も沢山とってください。それでは、私はこれで失礼いたします」
「ありがとうございます、先生」
早速医者に診てもらった。リラックスか…
「あなた達、サリーにマッサージをしてあげて。肌や髪が痛んでいる様だから、ケアもお願い。それからサリーは本が好きなの。ありったけの本を集めて。リラックス効果のあるお茶や甘いお菓子の準備も。
とにかく、サリーが居心地の良い空間を作り上げて」
「「「「かしこまりました、奥様」」」」
「叔母様、そこまでして頂かなくても…」
「あら、私はこれでも公爵夫人よ。それに公爵令嬢ならこの程度、当たり前にみんなやっているわ。これからはもう、何も我慢しなくてもいいの。あなたがやりたい事を、やりたいようにすればいいのよ。それが私の…そしてあなたのお母様、マリアの願いでもあるのだから。
だからどうか、もう何も我慢しないで。諦めないで」
「どうして…どうして叔母様は、こんなに良くしてくださるのですか?私は…」
「どうして?そんなの、決まっているじゃない。あなたを愛しているからよ。可愛い姪の為なら、私は何だってできるわ。だからどうか、これからは自分の事だけを考えて生きてちょうだい。あなたが幸せになる事が、私の一番の願いだから」
私だけではない、マリアの願いでもある。
「叔母様…私、誰からも愛されていないと思っていました。でも…でも…はい、これからは自分の幸せの為に、生きますわ。早くマレリス王国に行きたいです」
「そうね、早くマレリス王国に行きましょうね。今まで辛い思いをした分、きっとたくさんの幸せが、あなたを待っているわ」




