ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【23】
早速屋敷に戻ると、公爵家に使いを出した。サリーが一度、公爵とサレオ殿に会いたがっている旨を伝えた。
するとすぐに返事が来て、明日の午後、王宮で会う事になったのだ。早速サリーにその旨を伝えた。
「もし君がやっぱり会いたくないと思ったら、素直に伝えてくれ。その時は中止にするから」
「分かりましたわ。ジョージ様、明日はずっと傍にいて下さいますか?」
「ああ、もちろんだ。ずっと傍にいるよ。だから安心してくれ。君は僕の大切な人だ。サリーの事は、僕が必ず守るから」
ギュッとサリーを抱きしめた。
そして迎えた翌日。
「サリー、本当に大丈夫かい?もし無理なら、引き返してもいいのだよ」
公爵とサレオ殿が待つ部屋の前までやって来た僕たち。固まって部屋の中に入れないサリーに、声をかけた。
「いいえ、大丈夫ですわ。それでは参りましょう」
僕の手をギュッと握り、ゆっくり深呼吸をすると、恐る恐るドアを開き、部屋の中に入った。そこには、今にも泣きだしそうな公爵とサレオ殿の姿が。
「サリー…」
公爵がサリーの名前を呼んだ瞬間、びくりと肩を震わせる。そんなサリーの肩を抱き、そっと引き寄せる。
“大丈夫だよ、僕が傍にいるから”
耳元で呟いて、そのまま近くのソファに2人並んで腰を下ろす。
「あの…お父様、お兄様…私は…」
「サリー、今まで本当にすまなかった。君はマリアが命を懸けて生んだ大切な命なのに…それなのに私は、見当違いな逆恨みをしてしまった。サリーは私とマリアの宝物なのに…本来なら私が、マリアの分もサリーに沢山の愛情を与えるべき存在だったのに…あろう事か私は、サリーを傷つけ苦しめた。
本当にどうしようもない父親だ。こんな父親の顔なんて見たくないだろう。それなのに今日、私に会ってくれてありがとう」
公爵が涙を流しながら、頭を下げたのだ。
「俺もずっと、サリーの事を恨んでいた。母上を奪ったのは、サリーだと思い込んで。でも…それは大きな間違いだった。俺はサリーがお腹にいた時、母上と約束したんだ。俺がサリーを守ると…
それなのに俺は…君を守るどころか父上と一緒に傷つけた。最愛の母上との約束をすっかり忘れて…こんな愚かな兄ですまない」
サレオ殿も涙を流しながら、必死に頭を下げている。
「お父様もお兄様も、どうか頭をあげて下さい。確かに私は、お父様やお兄様に嫌われ、傷ついた事も多々ありました。ずっと私のせいで、お母様は命を落とした。だから私は、寂しい思いをして当然だと…
ですがお母様の日記を見て、それが間違いだと気が付きました。私1人が我慢すればいい、そう思い苦しんでいた傍で、お母様もきっと私の姿に嘆き悲しんでいたのだと思うのです。
だからこそ、これからは自分の幸せを考えよう、そう思っております。
ですが…
心のどこかでずっと、お父様とお兄様の事を考えていました。今の私には、ジョージ様や王妃殿下、さらに友人たちがいてくれる。とても幸せな毎日を送っているはずなのに。心に小さな穴が空いている様な感じが、ずっとしていたのです。
それで気が付いたのです。私はお父様やお兄様とも、仲良くしたいのだと。唯一血がつながった家族と、すれ違ってしまった日々を埋めたいのだと…
もちろん、すぐにとはいきません。ですが…少しずつでも、すれ違ってしまった時間を埋められたらと考えております」
サリーが言葉を選びながらも、はっきりと自分の気持ちを伝えていた。
「サリー、君はなんて優しい子なんだ…あんなにも酷い事をした私を、受け入れてくれるのかい?サレオも、今まで寂しい思いをさせてしまって、本当にすまなかった。サレオがサリーを恨み、兄妹仲を悪くしたのも、私の責任だ。
本当にすまなかった」
「父上…それは違います。僕が勝手にサリーを恨み、傷つけたのですから。サリー、こんなどうしようもない俺たちに、チャンスをくれてありがとう。本当にサリーは、優しい子だな」
再び公爵とサレオ殿が、涙を流している。
「お2人とも、どうか泣かないで下さい。ジョージ様、どうしましょう。お父様とお兄様の涙が止まらない様です」
「サリー、大丈夫だよ。そのうち止まるよ。せっかくだから、2人とも今日は王宮で食事をしていきませんか?サリーもいいだろう?」
「ええ、ジョージ様が傍にいて下さるのでしたら、私は大丈夫ですわ」
僕が傍にか…サリーにとって、僕は信頼できる人物になれたという事なのかな?そうだと嬉しいな。
「もちろん傍にいるよ。公爵、サレオ殿、すれ違ってしまった親子・兄妹の時間を埋めるお手伝いを、僕にもさせていただけますか?」
「ジョージ殿下、あなたって人は…」
さらに泣きだしてしまった公爵。この人、こんなに泣き虫だったか?まあいいか。
その後、4人で食事をした。最初はぎこちなかったが、最後はサリーも公爵もサレオ殿も、少しだけ笑顔が見られた。
傷つけあった親子・兄妹の溝はそう簡単には埋まらないかもしれない。それでもきっと、いつか埋まる日が来る。そう僕は信じている。




