ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【22】
「サリー、足元に気を付けるのだよ」
「はい、ありがとうございます」
嬉しそうに馬車から降りるサリー。今日はサリーの強い希望で、孤児院にやって来た。幼い頃からよく通っていた孤児院だ。
「サリー様、それにジョージ殿下もお久リぶりですわ。随分ご立派になられて」
「院長も、お元気そうで何よりですわ。それで子供たちは…」
「こっちにおります。どうぞ」
「院長、外で工事が行われている様ですが…」
「ローレティエン公爵家から、多大なご寄付を頂きまして、今改装工事を行っております。ちょうど建物が壊れかかっておりましたので。さらに生活必需品から勉強道具まで、色々と援助してくださいまして。
最近では、公爵様もサレオ様も、定期的に孤児院に足を運んでくださるのですよ。昨日は公爵様が、その前はサレオ様がいらっしゃいました。子供たちもすっかりお2人に懐いております」
「お父様とお兄様が?」
信じられないと言った顔をしているサリー。
「公爵やサレオ殿は、少しでもサリーの力になりたくて、サリーがずっと気にかけていたこの孤児院に足しげく通っているのだよ。それにサリーの生活費にと、多額のお金を置いていってね。サリーに掛かるお金はこっちで賄うからいらないと言ったのだけれど、これくらいしか自分にしてやれることはないと言って置いていったよ。
公爵やサレオ殿は、不器用なりにもサリーに少しでも繋がりを持ちたいと、今必死なのだろう」
「そうだったのですね…」
「そんなに考え込む必要はないよ。彼らが好きでしている事なのだから。さあ、子供たちの元に向かおう。きっと大きくなっているのだろうね」
うつむくサリーの手を握り、子供たちの元へと向かった。
「サリーお姉様」
嬉しそうにサリーの元に駆け寄って来る子供たち。
「あなた達、随分と大きくなったわね。皆元気そうでよかったわ」
子供たちの出迎えに、一気に頬を緩めるサリー。
「サリーお姉様も、すっかりきれいになって。お隣は王太子殿下ですね。お久しぶりですわ」
久しぶりに見る子供たちは、明らかに綺麗は服を着ていた。周りを見渡すと、勉強道具や机なども人数分揃っている。5年前に来た時よりも、明らかに設備が整っている様だ。
「5年来ない間に、なんだか雰囲気が変わったわね」
「雰囲気が変わったのは、ここ最近です。公爵様とサレオ様が、私たちの為に色々と買って下さって。この机も、先日公爵様から送られたのです」
「そうだったのね…お父様が…」
「おねえちゃん、いっしょにあそぼう」
ちょこちょことこちらにやって来た少女が、サリーに抱き着いたのだ。3歳くらいだろうか。そんな少女を抱きかかえるサリー。
「ええ、遊びましょう。何をして遊ぶ?」
あの頃と変わらない優しい眼差しで、少女を見つめる。
「お絵かきをしよう」
少女に誘われ、早速お絵かきをする。どうやら人物を書いている様だ。ペンも真新しい物を使っている。とても孤児院とは思えない程に。
「上手ね、人が沢山いるけれど、誰を書いたの?」
「これはね、こうしゃくさまとサレオおにいちゃん、それからこっちがおねえちゃんとおうじさま。それからこれがわたしね」
嬉しそうに絵の説明をする少女。
「公爵様とサレオおにいちゃん?」
「そうだよ、よくいっしょにあそんでくれるの。2人ともとてもやさしいのよ」
「そうなのね」
にっこり笑って答えるサリー。きっと気持ちは複雑なのだろう。その後も孤児院で子供たちと過ごした後、帰る時間を迎えた。
「サリーお姉様、王太子殿下、今日は来てくださりありがとうございました」
「おねえちゃん、おうじさま、またきてね」
笑顔で子供たちに見送られ、馬車に乗り込んだ。
「ジョージ様、今日は孤児院に連れて来てくださり、ありがとうございました。まさか父と兄がこの孤児院に来ていただなんて、思いませんでしたわ」
「そうだね、僕も知らなかったよ」
「あの…ジョージ様、一度父と兄に会ってみようかと思っているのですが…その時、傍にいて下さいますか?」
不安そうな眼差しで呟くサリー。
「ああ、もちろんだよ。でも、大丈夫なのかい?無理に会う必要はないのだよ」
「実は少し前から、考えていたのです。このまま父や兄から逃げ続けていていいのか…天国の母も、私たちが仲違いしている事を悲しんでいるのではないかと…それに令嬢たちから、父が私の為にメリンダ様の厳罰を望んだことも聞きましたし…
正直信じられませんでした。あの父が、私の為に何かをして下さるだなんて…正直まだ、会うのが怖いです。王宮での穏やかな暮らしを失いたくはない、このままずっと、王宮で暮したい。
そんな思いもあります。ですが、これ以上逃げ続けるのも違うと思うのです。たとえどんな結果になろうと、一度父と兄に会って話をしたいのです」
サリーが真っすぐと、僕を見つめる。
「分かったよ、公爵とサレオ殿に話してみるよ」




