第13話:信じられない~アマリリス視点~
「その件なのだけれど…サリーちゃんはずっと、王太子でもある私の息子、ジョージの婚約者候補として、この4年魔力を提供してくれていたの。ジョージは歴代の王子に比べ、魔力が不安定で。通常のペースを大きく上回るほどの頻度で、魔力を提供してもらっていたの…
そのせいで、サリーちゃんはいつも魔力不足で…サリーちゃんには本当に感謝しているのよ。だからこそ、今日ジョージの16歳の誕生日のタイミングで、サリーちゃんを正式にジョージの婚約者にしようとしたのだけれど…
ジョージが他の令嬢にうつつを抜かしてしまって…もちろん、サリーちゃんが魔力を提供してくれたお陰で、ジョージは今まで生きられたの。それなのに、他の令嬢と婚約だなんて、私や陛下はもちろん、他の貴族たちも納得する訳ないわ。猛反対したのだけれど。
サリーちゃんは…ジョージがそれで幸せになれるのならって、身を引いて…」
ポロポロと涙を流すマーガレット。
「それじゃあサリーは、魔力だけ提供させられたって事なの?マーガレット、あなただって今の陛下に魔力を提供していたからわかるでしょう?魔力提供が、どれほど体への負担がかかるかくらい。
それを4年も、通常よりもハイペースで行っていただなんて…サリーの体の事は、誰も心配しなかったの?あんなにやせ細っているのに…
可哀そうに…4年も尽くしてきたのに、あっさり捨てられるだなんて…お義兄様も、どうしてサリーを守ってあげないの?それでも父親なの!」
どいつもこいつも、勝手な事ばっかり言って。結局誰も、サリーの事を考えてなんていないじゃない。サリーがどれほど傷ついたか。どんな思いで4年も尽くしてきた人の為に、身を引いたか…
考えただけで、胸が張り裂けそうになる。
それなのに、こいつらは!
「勝手な事を言うな!そもそも他の貴族や陛下、王妃殿下はジョージ殿下の婚約者には、サリーだと言ってくれたのだ。それなのにサリーの奴!あいつが変な意地を張るから悪いんだ。あいつはマリアを殺した疫病神なんだ!きっとマリアだって、さぞ無念だっただろう。あんな奴さえ身ごもらなれば、きっと今頃…」
この男は、何を言っているの?これ以上この男と話していると、頭が痛くなるわ。
「分かったわ。殺したいほどサリーが憎いのよね。それじゃあ、サリーは私の養子にするわ。そしてマレリス王国に連れていく。サリーは幸い15歳だから、本人の同意なしに養子縁組が出来るはずよ。
あなただって、殺したいほど憎い娘と、一刻も早く縁を切りたいでしょう?早速養子縁組の手続きをしましょう」
こんな男に、マリアの大切な忘れ形見のサリーを任せてはおけない。それに何よりもこの国にいては、サリーは幸せになんてなれない。絶対にサリーは私が守る。誰がなんと言おうと!
「あの疫病神を引き取ってくれるのか?それは有難い。早速養子縁組の手続きを進めよう」
この男、どこまでも腐っているのね。でも…話が早くて助かるわ。
「待って、アマリリスも公爵も、落ち着いてちょうだい。とにかくもう一度ジョージを説得するから、もう少し私に時間を…」
「マーガレット、あなたの息子は他の令嬢にうつつを抜かしているのでしょう?たとえ説得できたとしても、きっとサリーは幸せになれないわ。あなたの息子が、その令嬢を思い続ける限り、サリーは辛い思いをするだけ。
とにかくサリーは、マレリス王国に連れていくから。お義兄様、すぐに裁判所に行きましょう。直接裁判所に行けば、最短3日で申請が下りるはずだから」
「分かった、すぐに行こう」
すぐに馬車に乗り込み、裁判所を目指す。その間に夫に連絡し、今回の経緯を説明した。
「あなた、私、これ以上この国にサリーを置いてはおけないの。だから…」
“アマリリスの気持ちは分かったよ。可哀そうに、サリーは随分と辛い思いをしたのだね。君の大切な姉の忘れ形見だ。これからは、私達がサリーを大切に育てよう”
「ありがとう、あなた。それじゃあ、このまま養子縁組の話を進めるわ。多分3日程度で、承認されるでしょうから、承認され次第マレリス王国に帰るわ。だからそれまで、屋敷の方をお願いしてもいいかしら?」
“もちろんだよ、とにかくサリーのケアを最優先にしてやってほしい。サリーが何か欲しいもの等あれば、事前に準備をしておくから教えてほしい”
「ありがとう、あなた」
夫にも許可が下りた。後は裁判所で手続きをするだけだ。




