第12話:こんな事になっていただなんて~アマリリス視点~
「あなた、今ホテルに戻ってきたわ。可哀そうに、サリーはかなりやせ細っていて。顔色も悪いし、きっとずっと王太子殿下に魔力を提供し続けていたせいよ。
命を削り、必死に支えていたのに、あっさりと裏切られて。その上、お義兄様に殺されかけていたのよ!あの男、マリアが亡くなったのは、サリーのせいだとずっと言っていたみたいで。公爵家でもずっと寂しい思いをしていたみたいなの。
まさかここまで酷い生活をしていただなんて…サリーが可哀そうで…」
感情が高ぶり、涙が溢れだす。私の大切な双子の姉、マリアが命を懸けて守った大切な忘れ形見のサリー。そんなサリーを、あのように扱ったお義兄様も、息子可愛さにサリーを利用したマーガレットも許せない!
怒りから魔力が暴走しそうになるのを、必死に抑えた。
とはいえ…
私もサリーの様子を、今まで一度も確認しなかったのだ。2人を責められた立場でもない。もし私が定期的にサリーの様子を確認していれば、あの子はここまで傷つかずに済んだかもしれないのに。悔やんでも悔やみきれない。
“君の気持ちは分かったよ。こっちもすぐに、サリーを受け入れる準備を進めるよ。今まで辛い思いをした分、サリーには我が家で幸せに暮らしてもらおう。とにかくこちらの事は、気にしないでくれ。
ルーカスにも既に、サリーの事は話してあるから“
「ルーカスは、何か言っていた?あの子に負担がかからないといいのだけれど…」
ルーカスは夫の姉の子で、7年前義姉夫妻が事故で命を落としてから、我が家の養子として迎え入れた子だ。サリーと同じく、15歳の男の子。物分かりがよく、とても優しい子なのだが、私と血が繋がっていないせいか、妙に遠慮する癖がある。
ルーカスはきっと、サリーの事を嫌だとは言わないだろう。ただ、あの子に負担にならなければいいのだが。とはいえ、サリーをこの国に残す訳にはいかない。辛い思いをした分、絶対に幸せになって欲しいのだ。
マリアの為にも…
“ルーカスの事は、君が心配する事はないよ。とにかく今は、サリーの心のケアを最優先に考えてやってほしい。それにしても、義兄上がそこまで薄情な人とは思わなかったよ。実の娘を殺そうとするだなんて。考えただけで、虫唾が走る。
とにかく、サリーがこれから幸せになれるよう、私たちが出来る事は何でもしよう“
「ありがとう。きっとサリーも喜ぶわ。それじゃあ、また連絡をするわね」
そう伝えると、静かに通信機を切った。
それにしても、お義兄様があれほどまでに愚かで非道な人間だっただなんて。いいえ、お義兄様だけではないわ。あの国の人たち、皆非道よ。
思い出しただけで、腸が煮えくり返るわ!
~数時間前~
「お義兄様、一体どういうことですか?サリーはあなたの実の子供なのですよ。そんなサリーに、攻撃魔法をかけようとするだなんて!」
怒りから、お義兄様に詰め寄った。サリーは実の娘だ。それに何よりも、亡きマリアの忘れ形見なのに。どうしてそんな非道な事が出来るのか!
「あいつが私達から、マリアを奪ったからだ!そもそもサリーは、マリアの最後の願いだった“王妃にしたい”という願いを、あっさりと切り捨てたんだ!やっとマリアの願いを叶えてやれると思ったのに、それなのにあいつは!」
「マリアがサリーを、王妃にしたいと願ったですって…」
あり得ないわ、この国の王子は、魔力が不安定で、16歳以下の女児から魔力を提供してもらわないと生きられない。とはいえ、魔力の提供はかなりの激痛が伴ううえ、体への負担も大きい。
あれほどまでにお腹の子供の誕生を待ちわび、大切にお腹の中で育てていたマリアが、自分の子供にあえて苦痛を与えるような事を望むかしら?たとえ本人がそれを望んでも、真っ先に反対しそうなのに…
正直信じられない。だが、今この男にそんな事を訴えても仕方がない。
「そんなくだらない理由で、サリーを傷つけようとしたのですか?そもそも、どうしてサリーはあんなに顔色が悪いの?それにやせ細っているし…一体この国で、サリーはどんな生活をしていたの?」
どう見てもサリーの体調は悪そうだった。やせ細り、骨と皮しかなかった。見ているこっちが辛くなるくらいに…




