ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【17】
部屋に戻ると、お互い隣同士に座る。
「サリー、実はね、今日君と父親が訪ねて来たんだ。それで、これを預かった。この日記は、サリーの母親、亡き夫人がサリーを妊娠中に書いたものだよ」
「お母様の日記ですか?このような物を、私が読んでもよろしいのですか?大切なお母様の形見なのに…」
「公爵は君に読んで欲しくて、わざわざ持ってきたのだよ。それじゃあ、僕は席を外すね。ゆっくり日記を読んでくれ」
そう伝え、部屋から出て行こうとしたのだが、なぜかサリーが僕の手をがっちり握っている。どうしたのだろう?
「ジョージ様、どうかお傍にいて下さりませんか?1人で読むのが怖いのです。この日記に何が書かれているのか…怖くて…ジョージ様がいてくださったら、安心できるのです。どうかお願いします。一緒に読んで頂けませんか?」
「僕も読んでもいいのかい?サリーがそう言うのなら、僕も傍にいるよ」
再びソファに腰を下ろした。恐る恐るサリーが、日記を開く。
そこには、亡き夫人のサリーに対する愛情が溢れていた。夫人はサリーが生まれてくることを、心から楽しみにしていた事。お腹の子供が女の子だとわかると、2人でお揃いの服を着て、お茶をするのを楽しみにしていた事。
そして一番衝撃だったのが、実は夫人は僕とサリーを結婚させたくないと考えていた事だ。夫人はサリーに痛い思いも苦しい思いをさせたくなかったらしい。公爵がずっと、夫人がサリーを王妃にしたがっていると言っていたが、あれはなんだったのだ?
公爵の完全な勘違いだったという訳か…まさか公爵は、夫人が嫌がる事を進んでしていただなんて…
そして最後のページには、公爵家で見た映像が流れた。
「お母様は…ずっと私の事を愛してくださっていたのですね…私もお母様と一緒にお揃いのドレスを着て、お茶を飲みたかったです。お母様と色々なお話をしたかった…お母様に、会いたい…」
日記を握りしめ、ポロポロと涙を流すサリーを、そっと抱きしめた。
「サリー、君はずっと、母上に愛されていたのだね…きっと今も、母上は近くで君の事を見守ってくれているのではないかな?」
「お母様が、私を?」
「そうだよ。君の母上はきっと、自分の命と引き換えにしてでも、サリーを守りたかったのだろう。だから自分の命が尽きるとわかった時、最後の魔力を振り絞って、この日記に最期の言葉を残した。
残された家族が、自分がいなくても幸せに暮らせるように…だが、公爵はこの日記の存在に気が付かず、君を苦しめ続けた。亡き夫人の最期の願いに反してね。
公爵もサレオ殿も、今猛烈に後悔していてね。“サリーに合わせる顔がない。もう自分は、二度とサリーの前には現れない”なんて事を言っていたよ。サリー、君はどうしたい?公爵とサレオ殿と、一度会って見るかい?
もちろん君が会いたくないと言えば、その旨を2人に伝えるよ」
「私は…」
「今すぐ答えを出さなくてもいい、もし君が、また父親や兄に会いたくなったら、いつでも言ってくれ。サリー、夫人はサリーが僕に嫁ぐことを嫌がっていた様だけれど、僕は夫人に“ジョージに嫁がせて良かった”と思ってもらえる様に、今以上にサリーを大切にするよ。
だからどうかサリーも、これからは自分の幸せだけを考えてほしい。15年もの間、ずっとサリーは苦しんできた。サリーと同じくらい、亡くなった夫人も苦しんできただろう。だから今度は、サリーが誰よりも幸せになって、夫人を安心させてあげよう。
それがきっと、夫人への一番の供養になると思うんだ」
「私の幸せが…お母様の一番の供養ですか?」
「そうだよ、僕はそう信じている」
「ジョージ様、この日記を持って来てくださり、ありがとうございます。私、これからは自分の為に生きますわ。亡きお母様が、安心して天国で過ごせるように」
そう言って笑ったサリー。どうやらまだ、父親や兄との関係改善には時間がかかるだろう。それでもサリーが、母から愛されて生まれて来た事だけは伝えられた。
まだまだ時間はある。一気に解決しようとせず、少しずつ解決していけばいい。サリーの気持ちに寄り添いながら。
きっといつか、公爵やサレオ殿とも和解できるはずだ。そう信じて…




