ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【16】
「殿下、ローレティエン公爵殿が殿下に会いたいとの事です」
「ローレティエン公爵がかい?すぐに準備をするよ」
亡き夫人の部屋での出来事から3日目、ローレティエン公爵が僕を訪ねてきた。きっとサリーの事だろう。
準備を整え、彼の待つ部屋へと向かった。
「お待たせして申し訳ございません」
部屋に入ると、憔悴しきった公爵とサレオ殿がいた。夫人の日記がよほどショックだったのだろう。あれほどまでにやつれた2人を見るのは、初めてだ。
「ジョージ殿下、本日はお時間を頂き、ありがとうございます。それから…今回の件、なんと感謝を申し上げたらよいか。もし殿下がいらっしゃらなかったら、私は亡き妻マリアをこの先もずっと苦しめる事になっていた事でしょう。
それにサリーの事も…サリーは、その…元気にしておりますでしょうか?」
「ええ、元気にしておりますよ。今日も母上と一緒に、来週開催予定のお茶会の準備をしております」
「そうですか…サリーにとって、ジョージ殿下と王妃殿下が、唯一の家族だったのでしょう。ジョージ殿下、サリーの傍にいて下さり、ありがとうございます。あの…せめて王宮でのサリーの生活費は、我が家で出させてはいただけないでしょうか?私は今まで、父親らしいことを何一つしてやれませんでした。
それどころか、母親殺しの罪まで着せて…マリアが命を懸けて守った、大切な命なのに…それなのに私は…
サリーにとって、私はいない方がいい父親です。もう二度と、サリーの前には顔を出しません。どうかサリーの事を、よろしくお願いいたします」
ポロポロと涙を流し、頭を下げる公爵。隣ではサレオ殿が、辛そうに俯いている。この男、極端だな…そもそもサリーは今後僕の婚約者として、そしていずれ王妃としてこの国で暮し続ける。それなのに、この国の公爵でもある彼と顔を会わせないだなんて、物理的に不可能だ。
それに何よりも…
「確かにあなたがサリーにした事は、最低な行為です。亡き夫人もきっと、嘆き悲しんでいた事でしょう。ですが…サリーはまだ生きてこの地にいるのです。壊れてしまったサリーの心を元に戻すのは厳しいかもしれない。
それでもまだ、やり直すことが出来るのではないでしょうか。夫人の最期の願いを、これから叶えて行けばよいのではないですか?とはいえ、今急にサリーの前に現れても、サリーが怯えるだけでしょう。
僕から今回の件は、サリーに話しをします。そこでサリーがどうしたいか、確認します。もしサリーが、公爵に会いたいと言えば、会う機会を作りましょう。だが、もし公爵を拒むようでしたら、しばらくは距離を置きましょう。
サリーはずっとあなた達家族の愛を、欲していました。時間はかかるかもしれませんが、必ず和解できる日が来ると、僕は信じています」
現に1度目の生の時、公爵に殺されそうになっていたにもかかわらず、サリーは公爵を許し受け入れた。きっと今回も、サリーは彼を受け入れるだろう。それが亡き夫人の願いでもある。
なんとしても、僕が上手く取りまとめないと。
「ありがとうございます…ジョージ殿下。これ…サリーの母、マリアの日記です。どうかサリーに渡してもらえますか?」
「ありがとうございます、必ず渡します」
どうやら僕のお願いを、公爵は覚えていた様だ。これでサリーに、亡き母の気持ちを伝えられる。
「それでは私共は、これで失礼いたします」
公爵とサレオ殿が頭を下げて、部屋から出て行った。公爵が置いていった日記に手を伸ばす。
一体何が書かれているのだろう…
気になり、ゆっくりページを開こうとしたところで、バチンと閉じた。この日記は、部外者でもある僕が勝手に読むべきではない。亡き夫人の思いが詰まった日記なのだから…
とにかく早くこの日記を、サリーに見せよう。
サリーがいるはずの中庭へと向かう。そこには母上と嬉しそうに何やら話をしている、サリーの姿が。ガリガリだったサリーも、今は随分とふっくらしてきた。髪も艶が出てきて、サラサラになった。青白かった肌も、今は血色もよくなった。
これが本来のサリーの姿なのだ。やはりサリーは、とても美しいな…
「ジョージ様!」
サリーに見とれていると、僕に気が付いたサリーが飛んできたのだ。
「サリー、お茶会の準備は順調かい?」
「はい、王妃殿下が色々と教えて下さるので、きっと素敵な会場になりますわ」
「それは良かった。実はね、サリーに大切な話があるんだ。ちょっと来てくれるかい?」
「大切なお話ですか?分かりましたわ…」
不安そうな顔のサリーを、ギュッと抱きしめた。
「悪い話ではないから、安心して。さあ、行こうか」




