ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【14】
震える手で、日記をめくる公爵。その横で、サレオ殿も日記を見つめている。1ページずつゆっくりと読み進めていく2人。
「そんな…マリアはサリーを…王妃にしたくなっただと?そんな…」
「母上…俺は優しい子なんかじゃない…母上にサリーを守ると約束したのに…俺は…」
2人が涙を流しながら、ブツブツと呟き始めたのだ。
そして…
サリーそっくりの女性が、ふわりと浮かび上がった。
“あなた、サレオ、サリー、どうやら私の命はもう尽きる様です。サレオ、サリー、ごめんね。傍にいてあげられなくて。あなた、どうかこの子達を頼みましたよ。
私の分まで、沢山愛してあげて。私はずっと、傍で見守っているから…“
そう言うと、スッと女性は消えてしまった。
「マリア、待ってくれ。行かないでくれ!マリア」
浮かび上がった女性に向かって、必死に手を伸ばす公爵。そして…
「マリア、すまない。君が命を懸けて生んだ大切なサリーを、私は…サリーだけではない、サレオ、今まですまなかった。母親がいない分、私がマリアの分も愛情を注がなければいけなかったのに…それなのに私は…
私はなんて事を!!!」
うわぁぁぁっと、声を上げて泣きだした公爵。こんな姿、初めて見た。
「サリー、サレオ、すまなかった。こんな父親ですまなかった。マリア、君の最期の希望を叶えられなくて、本当にすまなかった。私は父親失格だ。私はなんて事をしてしまったんだ!」
「父上だけのせいではありません…俺だってサリーを。母上との約束をずっと破り続けていた。サリーは俺のたった一人の大切な妹なのに…母上と約束したのに…サリーを可愛がるって、俺が守るって。それなのに俺は」
隣ではサレオ殿が、泣き崩れている。
「公爵、サレオ殿、あなた達がサリーにした仕打ちを、僕は決して許すことはできません。ですが…サリーはまだ生きております。まだ公爵の娘で、サレオ殿の妹としてこの国におります。
今からでもまだ、取り返せるのではないですか?サリーが生きている限り、いくらでも償いは出来るはずです。もちろん、無理強いはしませんが…
それから、落ち着いたらサリーに、夫人の日記を見せてあげてくださいませんか?サリーはずっと、母親からも嫌われていると思って生きてきました。ですが実際は、ずっと母親に愛されていた、その事を、サリーにも教えてあげたいので。
それでは僕はこれで、失礼いたします」
泣き崩れる2人に軽く頭を下げ、部屋から出た。彼らにとっては、辛い真実だったかもしれない。
だが、きっと彼ら以上に、サリーはもちろん、サリーの母親はずっと苦しんできたのだろう。誰よりも幸せになって欲しいと願い、命を懸けて生んだ娘が、ずっと愛する家族から虐げられてきたのだから…
どうかサリーの母上の苦しみも、解消されるといいな…
その時だった。
“ジョージ殿下…ありがとうございます。サリーを、よろしくお願いします”
急に女性の声が聞こえたのだ。びっくりして後ろをふりむくが、もちろん誰もいない。だが、僕の頬を温かい風が吹き抜けていく。
きっとサリーの母親だ。なんだかそんな気がした。
公爵とサレオ殿、サリーの関係も少しずつだが改善されるだろう。1度目の生の時と同じように…とはいえ、サリーが今までされた仕打ちを考えると、そう簡単には行かないかもしれない。
それでも僕は、サリーの気持ちに寄り添いたい。そう思っている。
王宮に戻ってくると、サリーが出迎えてくれた。
「ジョージ様、おかえりなさい。王妃殿下に聞きましたわ、私の為にデザイナーを手配してくださったのですよね。お陰で好みのドレスを作る事が出来ました。今度のお茶会に着られる様に、作って下さるとの事です」
嬉しそうに話してくれるサリー。
「サリーが喜んでくれてよかったよ。サリーは自分でデザインしたドレスを着たいと言っていたから、母上に頼んで手配してもらったんだ。君は極端にドレスが少ないからね。たくさん作ったかい?」
「はい、5着も作ってもらいましたわ。届くのが楽しみです」
5着か…本当はもっと作ってもよかったのだが。まあいいか、そのうちサリーの母が作ったお揃いのドレスも届くし。
「サリー、この10日で、随分と体も元にどもってきたね。髪もサラサラになったし。とはいえ、無理は良くないよ。今日はデザイナーとの話し合いで疲れただろう。早く部屋に戻って、ゆっくり休んでくれ」
サリーを抱きかかえた。10日前に比べれば、少しはましになったが、それでもまだ軽い。
「ジョージ様、どうか降ろしてください。恥ずかしいですわ」
「どうしてだい?僕とサリーは、婚約者同士なのだよ。これくらい普通だ。それよりも、サリーは相変わらず軽いね。もっと食べないと。早速夕食にしようね。今日も僕が、食べさせてあげるからね」
「もう、ジョージ様ったら」
嬉しそうに笑うサリーの顔を見たら、僕も嬉しくなった。その後2人で夕食を楽しんだのだった。




