ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【13】
「申し訳ございません、殿下。母の部屋の鍵は、父しか持っていなくて…それにしても、どうしてそんなに母の部屋にこだわるのですか?」
不思議そうに問いかけてくるサレオ殿。
「あの部屋に、夫人の思いが詰まっているのではないかと思いまして。夫人は本当に、サリーを恨んで死んでいったのでしょうか?僕はそうは思わないのです。実は僕の誕生日の日、サリーにそっくりな水色の髪に青い瞳の女性が夢に出てきたのです。
その女性が言ったのです。“どうか私の部屋へ”そう呟くと消えてしまいましたが…もしかして、亡くなった夫人なのではないかと思いまして…
サレオ殿、夫人はどの様な人でしたか?」
本当はそんな女性、夢になんて出てきていない。でも、きっと夫人は自分の部屋を見てほしい、そう願っているだろう。僕はそう信じている。だからこそ、サレオ殿を揺さぶるためにも、この話しをしたのだ。
「確かに母は、サリーと同じく水色の髪に、青い瞳をしておりました…それじゃあ…」
「サレオ殿、明日また来ます。それでは、失礼します」
これでもしかしたら、サレオ殿が公爵に話しをしてくれるかもしれない。そう思い、翌日公爵家に向かったのだが…
「殿下、息子から話は聞きました。マリアが夢に出て来ただって!よくもそんな出鱈目を!とにかくあの部屋には、誰も入らせませんから!もう二度と来ないで下さい」
いつも以上の剣幕で、僕を怒鳴りつける公爵。だが、諦める訳にはいかない。
「公爵、お願いです。どうか夫人の部屋を見せて下さい。少しだけでもいいのです。お願いします」
必死に頭を下げた。夫人、どうかお願いです。サリーと公爵、サレオ殿の仲を改善したいのです。どうか僕に、力を貸してください。お願いします!
必死に夫人に心の中でお願いした時だった。
今まで無風だった屋敷の中が、急に温かい風に包まれたのだ。その風は、僕を導くかのように、ある方向に向かって吹いている。
「これは一体…」
その光景に、公爵もサレオ殿も固まっている。
その風に誘われるように、僕の足が勝手に動き出す。きっと夫人が力を貸してくれているのだろう。なんだかそんな気がした。導かれるように、屋敷の中に入っていく。
「殿下、勝手に屋敷に入らないで下さい」
後ろから公爵とサレオ殿も付いてくる。どんどん進んでいくと、ある部屋の扉が全開になっており、そこから風が出ている様だ。
「どうして…マリアの部屋が空いているのだ?鍵がかかっていたはずなのに…どうして?」
どうやらあそこが、夫人の部屋の様だ。僕たちは導かれるように、ゆっくりと部屋の中へと入って行った。
「ここが、母上の部屋なのか?」
サレオ殿も初めて入る様で、辺りを見渡している。一番に目に飛び込んできたのが、赤ちゃんに着せるための服だ。
きっとサリーに着せるつもりだったのだろう。ピンクや黄色などの色の服が、丁寧にたたまれ置かれていた。
「マリア…」
入り口の前で、既に涙を流している公爵。夫人が亡くなってから15年間、一度も足を踏み入れる事が出来なかった場所。
「公爵、どうか中に入って来てください。夫人の最期の思いを、どうかご自分の目で確かめて下さい」
僕の言葉に、ゆっくりと部屋に入って来る公爵。
「この服は、サリーの為にマリアが準備していた服か?小さいな…マリアはずっと、サリーの誕生を心待ちにしていたのだったな…」
ポツリと呟いた公爵。
そして机の上に置いてある、1冊の日記を見つけた。
「公爵、サレオ殿、ここに日記がありますよ。ここに夫人の気持ちが記されているのではないですか?」
そっと2人に、日記を渡したのだった。




