ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【8】
翌朝、いつもより早く起きた僕は、再び薬を作った。そして薬を持って、サリーの部屋へと向かう。
「サリー、おはよう。昨日はゆっくり休めたかい?」
「おはようございます、ジョージ様。はい、お陰様でゆっくり休めましたわ」
「それは良かった。昨日よりも少し、顔色が良くなった様だね。良かった。今日のドレスだけれど、どれを着る予定だい?」
「はい、そちらの青いドレスを着ようかと…」
近くには、青のドレスが引っかけられている。だが…
「サリー、クローゼットを見せてもらってもいいかな?」
「ええ、構いませんが…」
使用人がすぐにクローゼットの中のドレスを見せてくれた。
えっ…
クローゼットの中は、ドレスが数着入っているだけで、他は空っぽなのだ。サリーは公爵令嬢だ。それなのに、どうしてこんなにドレスが少ないのだろう…父親から冷遇されていたことは知っていたが、まさかドレスもほとんど作ってもらえていなかっただなんて…
僕は本当に、サリーの何を見ていたのだろうか。
あまりのショックに、言葉を失いそうになるのを必死に堪えた。数少ないドレスの中から、1着のドレスに目が留まる。これは…
「サリー、今日はこのドレスにしてくれるかい?」
1着のグリーンのドレスに目が留まったのだ。僕の瞳の色と同じ、グリーンのドレス。マレリス王国では、婚約者や好きな異性の瞳の色の衣装を着る風習があるらしい。サリーはずっと、ルーカス殿の色でもあるオレンジのドレスを着ていた。あの時思った、いつか僕の瞳の色でもあるグリーンのドレスを着てほしいなと。それが僕の自己満足で我が儘だとは分かっている。
でも、どうしてもグリーンのドレスを着ほしいのだ。本当は僕が贈ったドレスを着てほしかったが、生憎時間がなくてそれは出来なかったが…
「グリーンのドレスですか?ジョージ様がそうおっしゃるなら、このドレスを着ますわ」
「ありがとう、サリー。それじゃあ、朝食にしよう」
今日も2人並んで朝食を食べる。薬が効いたのか、昨日よりも沢山食べてくれた。その後また薬を飲ませた。
そしてそれぞれ準備のため、一度自室へと戻り着替えを済ませる。本当なら僕もサリーの瞳を意識して青い衣装をまといたいところだが、そうもいかない。王族として決められた衣装に着替えると、再びサリーを迎えに行き、会場へと向かった。
「サリー、君は僕の婚約者として今日、皆に発表される。だから今日は、僕と一緒に入場しよう。父上も母上も、それでいいですね?」
「ええ、もちろん構わないわ」
「ああ…私も構わないが…」
嬉しそうな顔の母上とは対照的に、何が起こっているのか理解できない父上。とはいえ、父上もずっと僕とサリーを婚約させたいと思っていたのだ。特に反論する事もない。
「サリー、式が始まるギリギリまで、ここで休んでくれ。君は体調が思わしくないのだから」
近くに準備したソファに、サリーを座らせようとしたのだが…
「私は大丈夫ですわ。昨日ゆっくり休めたのと、ジョージ様が準備して下さったお薬のお陰で、随分体も楽ですから」
そう言ってほほ笑んでいた。だが、まだまだ体調が悪そうだ。
「いいや、無理は良くない。とにかく座っていてくれ」
「ジョージの言う通りよ。サリーちゃん、どうかギリギリまで休んでいて」
僕だけでなく母上からも言われたサリーは、大人しくソファに座っていた。心なしか、なんだか嬉しそうな顔をしているのは、気のせいだろうか。
「皆様、お待たせいたしました。入場のお時間です」
「わかったよ、それじゃあ、行こうか」
いよいよ入場だ。少し緊張気味のサリーの肩を抱き、父上と母上の後に続いて入場した。
僕たちが入場すると、周りから小さなざわめきが起こる。きっと僕がサリーの肩を抱いて入場してきたことに、驚いているのだろう。少し前までは、僕は愚かにもメリンダ嬢の傍にずっといた。本当にあの頃の僕は、どうかしていた。
だが今日は!
ふと周りを見渡すと、メリンダ嬢がものすごい形相でこちらを睨んでいる姿が目に入って来た。1度目の生の時の記憶が蘇る。あの女のあの顔、サリーを殺そうとした時と同じ顔をしている。
無意識にサリーを自分の方に引き寄せた。今度は絶対に、サリーを傷つけさせない!絶対に!




