ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【7】
食後
「サリー、この薬を飲んでくれ。見た目はあまり良くないが、体にはとてもいいのだよ」
早速薬を手渡した。緑色をした薬を見て、戸惑うサリー。見た目も味も良くないが、効果は非常に高いのだ。
「ジョージ、それは一体何なの?得体のしれない物を、サリーちゃんに飲ませようとするだなんて」
「母上は黙っていてください。サリー、大丈夫だよ。飲んで。僕が自ら作ったものだから、毒は入っていないから」
「ジョージ様が、作って下さったのですか?分かりました、飲みますね」
一気に薬を流し込むサリー。苦かったのか、顔をしかめている。その瞬間、サリーの体がピンク色の光を発したのだ。どうやら体に馴染んだようだ。とはいえ、この後はゆっくり浸透していく。
ダニエルの妻の時は、魔力提供後すぐ、毎回飲んでいたお影か生活に支障をきたすことはなかった。だがサリーは、既に4年もの間、僕に魔力を提供している。劇的に改善される事はないかもしれない。とにかく、サリーの体調が完全に戻るまでは、毎日この薬を与えないと。
「サリー、よく頑張って飲んだね。偉かったよ。さあ、甘いお菓子だ。これを食べて」
すぐに甘いお菓子を食べさせた。これで少しは、口の中の苦みも和らぐだろう。
「なんだか体が軽くなった気がしますわ。それに体の痛みも和らぎました」
「それは良かった。少し苦いけれど、毎日この薬を飲めば、すぐに元気になるよ」
サリーにも効果があった様だ。良かった。
「サリーちゃんの顔色、なんだか少し良くなった気がするわ。とはいえ、まだまだ体調は戻らないわよね。とにかく今日は、ゆっくり休んで。
それと、何か必要なものがあったら、遠慮なく言って。そうそう、これ、私が使っているオイルなの。髪がつやつやになるから使って。それからこっちは、肌にいいと言われているオイルよ。
一式置いておくから。他にもリラックス効果のあるアロマも沢山準備したから、使用人に渡しておくわね」
既にサリーの部屋から必要なものは運び出し、サリー専属使用人たちも王宮に来ている。だが、どうやらそれだけでは足りなかった様だ。
「王妃殿下、お心遣いありがとうございます。ですが…」
「遠慮しなくてもいいのよ。さあ、疲れているでしょう。すぐに湯あみをして、ゆっくり休んで。それじゃあ、私たちは退散するわね。さあ、ジョージ、行きましょう」
「えっ?ちょっと…母上…」
母上に無理やり背中を押され、部屋から追い出されてしまった。
「母上、どうして僕まで追い出されなければいけないのですか?サリーが心配なので、僕は部屋に戻ります」
「ジョージ、あなたにどんな心境の変化があったのかは知らないけれど、あなたや私が傍にいたら、サリーちゃんがゆっくり休めないでしょう?あの子には専属の使用人もいるし、今日はゆっくり休ませてあげましょう。
それにしても、一体何があったの?昨日までメリンダ嬢と婚約したい!と、我が儘を言っていたのに」
母上が不思議そうに問いかけてくる。
「別に何もありませんよ。サリーは僕にとって、いかに大切な存在かに気が付いただけです。それではまだやらなければいけない事があるので、これで失礼いたします」
母上に一礼をして、その場を後にする。自室に戻ると、護衛から預かった映像を見る。そこにはやはり、メリンダ嬢が言っていた通り、サリーに嫌味を言う伯爵以下の令嬢の姿が。公爵令嬢で僕の婚約者候補でもあるサリーに、伯爵以下の令嬢がこの様な愚かな事を口にするだなんて!
怒りから体が震えそうになるのを、必死に抑えた。
大丈夫だ!落ち着け、僕はこの50年、ずっと想像し続けていたのだ。もしももう一度、人生をやり直せたら…何度も何度も想像した。決して訪れる事のない過去の出来事、それでも想像せずにはいられなかったのだ。
あの時こうしておけば…ああしておけば…そう考え続ける事で、この50年何とか心を保ってきたのだ。50年もの思いを、今こそ実行するとき。
大丈夫だ、きっとうまくいく。
もう僕は、絶対に失敗しない。今度こそ、サリーを僕の手で幸せにしてみせる。明日はいよいよ運命の時だ。
何度も何度も夢見た、僕の誕生日兼婚約者発表の日。まさかもう一度、その日を迎える事が出来るだなんて…
そっと部屋を抜け出し、サリーの部屋の前までやって来た。ドアを開け、そっとベッドの近くまで向かう。スヤスヤと眠るサリー。そんな彼女の髪を1房とり、口づけをする。随分と痛んでしまった髪。
すぐに元通りにするからね。愛しのサリー、もう二度と離れないから。
心の中でそっと呟き、部屋を後にしたのだった。




