ジョージ殿下とサリーのIFストーリー~ジョージ視点~【1】
「義父上、こちらにいらしたのですね。また青バラを眺めていらっしゃるのですか?最近お体の調子が良くないと聞いております。随分冷えてきましたので、宮殿に戻りましょう」
「…ダニエルか…この青バラを見ていると、心が安らぐのだよ。もう少し私はここにいるから、どうか…ゴホゴホ…」
「義父上!だから言ったでしょう。すぐに医者を手配してくれ」
義理の息子、ダニエルが私に駆け寄って来る。
サリーと最後に別れてから、50年。あの日からサリーには、一度も会っていない。それでも私は、サリーを今でも愛している。サリーと過ごした思い出の場所、この青バラ園だけが、私の心を癒してくれる場所なのだ。
「ダニエル…私はこの場所で…人生の幕を…」
「何をおっしゃっているのですか!とにかく医者に診てもらいましょう」
ダニエルに連れられ、部屋へと戻ってきた。そのままベッドに寝かされる。この50年、サリーが残してくれた“ミレンズ王国をより良い国にして下さい”その言葉を胸に、必死に生きてきた。
この国で暮す全ての人たちが、幸せに暮らせるように尽力してきた。孤児院の改善にも力を入れた。仕事や家のない者には、仕事と家を与えた。貿易にも力を入れ、マレリス王国との繋がりも強くなった。
そして…
「お爺様、しっかりしてください。お爺様が開発して下さった薬のお陰で、僕の発作も落ち着き、レーナに負担をかける事はありませんでした。
全てお爺様のお陰です。これからお爺様に、恩返しをしたいと思っていたのです。ですから、どうか長生きしてください」
「そうか…ダルクも無事魔力が安定したか…よかった…」
そう、私は王族が長年悩んでいた、魔力が欠乏する病気を改善するため、薬の開発に力を注いだ。さらに魔力を欠乏している本人にも、早い段階からその事実を伝える事にしたのだ。
もう二度と、私の様な愚か者が現れない様に…もう二度と、サリーの様な被害者が現れない様に…
とはいえ、薬の開発は難航を極めた。自らの魔力を実験台に使った事もあった。何度も何度も失敗を重ね、やっと成功したのだ。
残念ながら義理の息子、ダニエルの時は間に合わなかったが、孫のダルクの時は間に合った様で、婚約者候補のレーナ嬢は、一度も魔力を提供することなく、ダルクは16歳を迎え、魔力が安定した様だ。
これでもう、サリーのように魔力提供で苦しむ女性はいなくなる。
「この薬は…ぜひ世界に広めてくれ…他国にも、魔力が欠乏して苦しんでいる人たちが…いるだろうから…」
かつてのルーカス殿のように、きっと他国にも魔力が欠乏して苦しんでいる人もいるだろう。その人達の力になれたら…
「ゴホゴホゴホ」
何だか息苦しいと思ったら、吐血してしまった。すぐに医者が飛んできた。
「義父上!しっかりしてください」
「お爺様」
ダニエルとダルクが、心配そうにこちらを見つめていた。その後ろには、ダニエルの妻やその子供たちの姿も。皆心配そうに、私を見つめている。
「陛下はもう…」
ゆっくりと首を振る医者。
「そんな…義父上」
「「「お爺様」」」
私の為に、皆が涙を流してくれている…私は本当の家族を作る事が出来なかった…ずっとそう思っていた。だが、こうやって私の為に涙を流してくれる子たちがいるのだな…
「皆、私の為にありがとう…だが、私はもう十分生きた。この国も随分豊かになったし、人々の生活も改善された。私の意思を、今はダニエルが継いでくれている。魔力欠乏の薬も出来、今後は令嬢に負担をかける事もないだろう…
私がやりたかったことは、全てで来た。もう後悔はない…」
いいや…後悔があるとすれば、やはりサリーの事だ。
サリー、私はこの50年、君の言葉を胸に必死にこの国をよくしてきたよ。もう二度と、君のように苦しむ人が現れない様に…
もし天国でサリーに会う事があったら、その時は胸を張ってミレンズ王国をあの頃よりずっと良い国に出来たよと、報告できるかな?
会いたい…
どんなかたちであれ、もう一度サリーに…
次の瞬間、一気に胸が苦しくなる。
「どうやらもう、お別れの様だ…ダニエル…後は頼んだよ…」
その言葉を最後に、人生の幕を下ろしたのだった。
~あとがき~
ジョージとサリーのIFストーリーです。
あれもこれもと思って書いていたら、少し長いお話になってしまいました汗
全25話あります。
1日1~2話づつ投稿予定です。
どうぞよろしくお願いいたしますm(__)m




