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あなたに全てを捧げてきたけれど…これからは自分の為に生きます  作者: Karamimi


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第108話:幸せな時間

「お父様、風がとても気持ちいいですね。見て下さい、青バラがとても綺麗に咲いておりますわ。お母様も大好きだった青バラが」


「そうだね、マリアとサリーが好きな青バラが、沢山咲いているね。昔は青バラを見るのが辛かったが、今はこのバラを見るのが楽しみで仕方がないよ。きっとサリーが傍にいてくれるからだね」


 お父様の乗る車いすをゆっくり押しながら、中庭を散歩する。お父様がこのお屋敷で生活をする様になってから、早3ヶ月。ゆっくりではあるが、着実に体調が戻ってきている。少しなら歩けるようになったが、まだ散歩となると、こうやって車いすに乗る事も多い。


 この3ヶ月、毎日お父様のお世話をし、こうやって他愛もない話をしている。最初はお互いぎこちなく、ルーカス様が傍にいて下さることも多かった。


 それでも毎日一緒に過ごすうちに、少しずつ打ち解けて来て、今では2人で過ごす時間も増えてきている。


 昔は怖くてたまらなかったお父様、今は別人のように穏やかになった。こんな他愛もない時間も、私たちにとっては貴重な時間なのだ。


「サリー、今日もありがとう。君と過ごす時間は、私にとってかけがえのない大切な時間だ。君がこうやって笑顔でいてくれるだけで、私は元気がみなぎるよ。さあ、ルーカス殿が待っているよ、そろそろ彼の元に戻った方がいい」


 お父様がある方向に、視線を向けた。そこには、木陰に隠れてこっそりこちらを見つめているルーカス様の姿が。


 あの事件以降、すっかり過保護になってしまったルーカス様。もうすっかり体調がよくなったのだが、未だに私が屋敷の外に出る事を嫌がっている。


 一度友人たちが私の様子を見に来てくださったのだが、その時も物々しい警備の中での面会となってしまった。


 それでも3ヶ月後には、私とルーカス様の婚約披露パーティが開催される予定だ。その時には、沢山の貴族たちが来てくれる予定になっているのだが、万が一襲撃されると大変だという事で、今から護衛を増やし、万全の体制を整えると張り切っているルーカス様。さすがの叔父様や叔母様も、苦笑いをしていた。


 とはいえ、それだけ私の事を大切にしてくれているという事なのだろう。現にルーカス様は、お忙しい中でもずっと私の傍にいてくれていた。メリンダ様の事件でも、かなり積極的に動いてくれていた様だ。


 本当に彼には感謝しかない。


「ルーカス様、お待たせいたしました」


 木陰に隠れていたルーカス様に近づき、話し掛ける。


「いや…その、僕は別に待っていた訳では…義父上との時間は、もう大丈夫なのかい?」


「はい、大丈夫ですわ。ルーカス様、いつも父との時間を尊重して下さり、ありがとうございます」


「そんな事は気にしなくてもいいよ。サリーと義父上の関係が改善された事、とても嬉しいんだ。サリーにはいつも幸せでいて欲しいからね」


 そう言って笑ったルーカス様。そんな彼の手を握る。この温もりを、ずっと感じていたい、そう願っている。



 ~3ヶ月後~

「サリー、準備は出来ているかい?」


「はい、できておりますわ」


 オレンジ色のドレスに身を包み、今日の会場でもある中庭にルーカス様と一緒にやって来た。


 そう、今日は私とルーカス様の婚約披露パーティだ。


「サリー、久しぶりだね。父上も元気そうでよかった」


 笑顔で私の元にやって来たのは、お兄様だ。今日の日の為に、わざわざ来てくださった。ちなみにすっかり元気になったお父様は、今日のパーティが終わったらお兄様と一緒に、ミレンズ王国に帰国する事になっている。


 正直お父様とお別れするのは寂しいが、それでもこの半年、一緒に過ごせたことは、私にとってかけがえのない宝物だ。


「お兄様、来てくださったのですね。嬉しいですわ」


 すっかり穏やかになったお兄様。今はもう、普通に話すことが出来るようになった。


「サリー、実はね、君宛に手紙を預かっているのだよ。見てくれるかい?」


 お兄様がある手紙を開いた。そこにはかつて私と同じ、ジョージ殿下の婚約者候補として集められていた公爵・侯爵令嬢たちの姿が。


 “サリー様、ご婚約おめでとうございます。あなた様に辛い思いをさせてしまった事、そしてあなた様の辛さを知っていながら何もできなかった事、ずっと心残りでした。


 だからこそ、サリー様がミレンズ王国で素敵な殿方を見つけられ、今日という日を迎えられた事を心よりお祝い申し上げます。


 どうかこれからは、ご自身の幸せだけを考えて生きて行ってください。ミレンズ王国で、あなた様の幸せを祈っておりますわ“


「皆様…」


「彼女たちはずっと、君の事を気にかけてくれていたのだよ。俺がサリーの婚約披露パーティの為、マレリス王国に向かう事を知って、手紙を託されたんだ。それから、彼女たちからプレゼントも預かっているよ。後で見てみるといい」


 まさか彼女たちが、ここまでして下さるだなんて。嬉しくて涙が込み上げてきた。


「サリー、よかったね。君がミレンズ王国で必死に頑張る姿を、皆見てくれていたのだね。彼女たちの為にも、必ず幸せになろうね」


「はい、もちろんですわ」


 ずっと孤独だと思っていたミレンズ王国の生活、でも実は、陰でたくさんの人に支えられてきたのだろう。ジョージ殿下に婚約者には出来ないと言われたときは、絶望した。生きる事すら諦めかけたこともあった。


 でも今は、沢山の人に支えられて、毎日幸せな時間を送っている。


 それもこれもきっと…


 お母様、見て下さっていますか?今私は、とても幸せです。あなた様が命を懸けて守ってくれたこの命。お母様から与えられた沢山の愛情を胸に、これからルーカス様と共に、幸せな時間を過ごして参ります。


「サリー、そろそろお客様が来る頃だ。お出迎えに行こう」


「はい、参りましょう」


 ルーカス様から差し出された手を強く握り、ゆっくりと歩き出した。

 きっとこれからは、幸せな時間がずっと続く。


 そう信じて…



 おしまい

これにて本編完結です。

前回告知した通り、ジョージ殿下とサリーの番外編を引き続き投稿して行こうと思っております。


もしご興味がおありの方は、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございましたm(__)m

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