第103話:ルーカス様の気持ち
「公爵殿もサレオ殿も、きっと何も思っていないよ。叔母上から話しを聞いていたせいか、君の父上はどんな恐ろしい人なのかと思っていたけれど、穏やかで優しい人だね。
きっと公爵殿は、サリーの傍に少しでもいられて嬉しいのではないかな?サリーの話をしている時の公爵殿、とても幸せそうだったし。それにサレオ殿も、そんなに軟ではないでしょう。
サレオ殿の事だ“父上とサリーの時間が出来てよかった。ゆっくりしてこればいい。こっちは何とかするから”そう言って笑いそうな気がするよ。
サリーの性格上、厳しいかもしれないが、もっと父上と兄上の事を信じてあげてもよいのではないかい?サリーがまた2人の事で申し訳なく思っていると知ったら、きっと2人も悲しいと思うよ」
ルーカス様の言葉が、胸に突き刺さる。ルーカス様の言う通りだ、つい私は、自分のせいで2人に迷惑が…と考えてしまう。それに、起きてしまった事は仕方がない。
前向きにとらえないと。
「ルーカス様の言う通りですね。私はついネガティブな感情が出てしまって。悪い癖ですわ。お父様もしばらくこのお屋敷にいらっしゃるのでしたら、早く元気になってお父様の看病をしないといけませんね。
その為にも、まずは体力と魔力を回復させないと」
「そうだよ、早く元気になってもらわないと。まずは食事にしよう。君たち、食事を持ってきてくれ」
「承知いたしました」
すぐに料理が運ばれてきた。そういえば王宮では色々とあって、まだ昼食を食べていなかった。
「サリー、沢山食べて。魔力の回復には、お肉がいいらしいよ」
ステーキを食べやすい大きさに切ってくれたルーカス様が、私の口に入れてくれた。
「とても美味しいですわ。ルーカス様も、お腹が空いていますよね。私の事はいいので、どうかルーカス様も召し上がってください」
ルーカス様もきっと、お腹が空いているだろう。そう思ったのだが…
「僕の事はいいから、まずはサリーが食べて。今はあまり食欲がなくてね。ほら、口を開いて」
次々と私に食事を食べさせてくれるルーカス様。結局私が全て食べ終わるまで、ルーカス様は食事に手を付けなかった。
食後、再びベッドに寝かされた。お腹いっぱいになったら、なんだか眠くなってきた。きっと今私の傷ついた体は、必死に再生しようとしているのだろう。
ジョージ殿下に魔力を提供していた時も、いつも眠気と戦っていた。しっかり睡眠をとる事が、体力回復の近道なのだ。
そんな事を考えながら、瞼を閉じたのだった。
次に目を覚ました時は、既に夜になっていた。
「ルーカス様、ずっと手を握っていて下さったのですか?」
私の手を握りながら、頭を手にくっ付けていたルーカス様に声をかけた。ゆっくりと顔をあげるルーカス様。
「サリー、目覚めたのだね。良かった」
ベッドに腰を下ろすと、そのまま強く抱きしめられた。なんだか震えている様だ。それに目も赤かった。もしかして、泣いていた?
「ルーカス様、急にどうされたのですか?私はこの通り、元気ですわ。今体が一生懸命魔力を作り出そうとしている為、よく眠りますが、それは魔力が少しずつ回復している証拠ですし…」
そんなに心配される様なことは、何一つないのだが…
「すまない、あの女がサリーの体を貫ぬき、大量の血を流し倒れたサリーの姿が、脳裏に焼き付いて離れないのだよ。その上、治癒魔法が全く効かなくて…このままサリーを失ったら…あの時の恐怖と絶望が、今も鮮明に残っていて。
その少し前まで、幸せの絶頂にいたのに…サリーが僕を受け入れてくれた、これからサリーの傍にずっといられる、そう思っていた矢先の出来事で。
サリー、僕はもう君無しでは生きていけない程、君を愛している。だからどうかもう、僕から離れないでくれ。もし君がいなくなったら、僕は…」
ポロポロと涙を流すルーカス様の姿を見たら、胸が張り裂けそうになる。
「ごめんなさい、ルーカス様。いつも私は、あなたに心配をかけてばかりですね。ですがもう二度と、ルーカス様を悲しませたりしませんわ。きっとこれからは、幸せな日々が続くはずです」




