第102話:帰ってきました
温かい、それにゆらゆらと心地の良い揺れを感じる。この揺れは一体何だろう。
ゆっくり瞼をあげる。
「ここは?」
「サリー、目が覚めたのだね。良かった、今屋敷についたところだよ。疲れただろう?今すぐ部屋に連れていくからね。すぐに医者に診察をしてもらおう」
どうやら私は眠ってしまった様で、ルーカス様がお部屋に運んでくれている様だ。
「ルーカス様、ありがとうございます」
運んでくれているルーカス様にお礼を言った。本来なら自分で歩くべきなのだろうが、ルーカス様の腕の中が気持ち良すぎて、下ろしてくださいなんて言えない。
もう少しだけ、ルーカス様の温もりを感じていたい。そっとルーカス様の首に手を回した。
「サリー、甘えているのかい?可愛いね」
ルーカス様が強く抱きしめてくれた。
「ルーカスもサリーも、気持ちは分かるがまずは診察をしないとな」
隣で叔父様が呟いた。診察を受けるほどではもうないのだが。それよりも、お父様が心配だ。
「私はもう大丈夫ですので、お父様の診察を行ってください。もしかしたら容態が急変するかもしれませんし」
一度は命を落としかけたのだ。もしまた容態が急変したら、そう考えると不安で胸が締め付けられる。
「義兄上は今、客間で医者が診察をしているよ。サリーも自分の診察が終わったら、会いに行くといい。とにかくサリーも一度診察をしないとな」
そう言われてしまった。
部屋につくと、すぐにベッドに降ろされた。そしてお医者様が来て、診察を行った。
「お嬢様、随分と魔力が減っておられますね。頭痛やめまいなどの症状はありませんか?立っているのも辛いくらいだったでしょう。とにかく、2~3日は絶対安静です。薬を飲んで、極力動かない様にお過ごしください」
お医者様ったら、大げさね。確かに頭がボーっとしたり軽い頭痛はあるが、大したことはないはず。
そう思っていたのだが…
「なんて事だ!サリー、また無理をしていたのだね。気が付かなくて、すまなかった。すぐに着替えをさせてやってくれ。それから、サリーの世話は僕がするよ。着替えが終わったら、すぐに呼んでくれるかい?」
「承知いたしました。お嬢様、ドレスは苦しいでしょう。すぐにお着替えをいたしますね」
ルーカス様たちが出て行ってすぐ、近くに控えていた使用人たちが、テキパキと着替えさせてくれたのだ。
「皆、ありがとう。でも、意外と平気なのよ。お父様が心配だから、ちょっと様子を見に行ってくるわね」
そう伝えて立ち上がろうとしたのだが、頭がくらくらしてその場に座り込んでしまった。
「お嬢様、ご無理はいけません。とにかくベッドでお休みください」
すかさず使用人たちに、ベッドに寝かされてしまった。さらに…
「サリー、さっき立ち上がろうとして倒れたのだって?君は絶対安静なんだ。君の父上の様子を見てきたが、元気そうだったよ。魔力がずいぶん減っているとの事だが、薬を飲んで安静にしていれば、よくなるとの事だ。
意識もしっかりしているし、問題はない。公爵殿にはサリーの容態を伝えておいたから、すぐにお見舞いに行かなくても大丈夫だ。さあ、ゆっくり休んで。君はただでさえ頻繁に体を酷使しているのだから。
とにかく今は、魔力を回復させる事だけに集中してくれ」
戻ってきたルーカス様にも、そう言われてしまったのだ。
「ルーカス様、お父様は大丈夫でしたか?私の為に無理をしたから、心配で…」
正直未だにお父様が、私の為に命を懸けて助けてくれたことが、信じられない。けれども、血を流して倒れるお父様の姿を見たら、胸が痛くてたまらないのだ。
「きちんと会話もできるから、大丈夫だったよ。逆に、サリーの事を心配していたくらいだ。けれど公爵殿はちょっと無理をしてしまったから、動けるようになるまで少し時間がかかる様なんだ。病気もまだ完治していなかったから、その分治りも遅い様でね。
もちろん、元気になるまでは我が家で面倒を見るつもりだから、安心してほしい」
そうだったわ、お父様はご病気だったのだった。お兄様が帰国してから、まだほとんど期間が経っていない。もちろん、病気も治っていなかっただろう。そんな中、私の為に…
「時間がかかるとは、どれくらいなのですか?」
「半年くらいかな」
「半年もですか?私のせいで、お父様が半年も動けないだなんて…それに、お兄様もお父様不在が半年も続いたら、きっと大変だわ」
どうしよう、私のせいで家族に迷惑を…




